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第二章:約束
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春の陽気な気候。
笑顔の華頂さんからは、まるで花の匂いが香りそうだと思った。それくらい、太陽の下の笑顔が似合う人だったんだ。
「お待たせしました! どうされましたか?」
「いや、ごめんなさい。走らせちゃって。いや、近くだなぁと思ったので思わず会いに来ちゃいました」
「お、俺にですか!?」
びっくりして尋ねると、持っていたビニール袋を手渡してきた。
「前回、助けて貰っちゃったんで、お礼を、と思いましてね」
袋を開けると、ブリキのバケツに、かわいらしい花が色とりどりに植えられている。
「え、あ……、お花……っ!」
「迷惑だったらごめんなさい。余った株で、今さっき作ってきたんです。急遽だったので、こんなものしか用意出来なかったんですけど」
「いえっ、とんでもない! こんな立派なもの! いいんですか!? ありがとうございます!」
華頂さんはにっこり微笑み、「お水は土が乾いてからあげるようにして下さい」と付け加えた。
「分かりました! 枯れさせないように育てます!」
「はは。良かった。そう言って貰えて」
安心したように息を吐き、華頂さんは俺の手の中の花に優しく触れた。
「ペチュニアという花です。成長が早いんですけど、比較的育てやすいと思います。花がらはこまめに摘み取ってもらえるといいんですけど、面倒だったら枝ごと切ってしまってください。葉も大きくなりすぎるとだめなので、切り取って風通しを良くしてもらえると長持ちしますよ」
華頂さんは花の育て方を丁寧に教えてくれて、俺ににっこりと微笑んだ。一か月前と違っていたのは、髪が少し伸びていたことと、髭が生えていたこと。ダンディさが増している気がする。
「分かりました。大事にしますね! すごく可愛い! 嬉しいな!」
言った僕に、彼はニコニコと微笑み、しばらく可笑しな間が空いた気がした。けど、その間の末に、まるで思い出したように「あ、じゃあこれで失礼します」と俺に頭を下げた。
「えっ、も、もう行かれるんですか?」
「いや、だって、土田さんもお仕事があるでしょう?」
そう言って困り顔で尋ねてくるから、俺はぶんぶんと首を振った。
「俺、今から休憩なんですよ! 華頂さんはお昼もう済まされましたか?」
「え、いや……、まだ、です」
尋ねる俺に少し困惑したように首を振る。だけど迷惑かもしれないなんて、この時の俺には考えが及ばず、気付いたら「良かったら一緒にどうですか」と誘っていた。
笑顔の華頂さんからは、まるで花の匂いが香りそうだと思った。それくらい、太陽の下の笑顔が似合う人だったんだ。
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「お、俺にですか!?」
びっくりして尋ねると、持っていたビニール袋を手渡してきた。
「前回、助けて貰っちゃったんで、お礼を、と思いましてね」
袋を開けると、ブリキのバケツに、かわいらしい花が色とりどりに植えられている。
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安心したように息を吐き、華頂さんは俺の手の中の花に優しく触れた。
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華頂さんは花の育て方を丁寧に教えてくれて、俺ににっこりと微笑んだ。一か月前と違っていたのは、髪が少し伸びていたことと、髭が生えていたこと。ダンディさが増している気がする。
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言った僕に、彼はニコニコと微笑み、しばらく可笑しな間が空いた気がした。けど、その間の末に、まるで思い出したように「あ、じゃあこれで失礼します」と俺に頭を下げた。
「えっ、も、もう行かれるんですか?」
「いや、だって、土田さんもお仕事があるでしょう?」
そう言って困り顔で尋ねてくるから、俺はぶんぶんと首を振った。
「俺、今から休憩なんですよ! 華頂さんはお昼もう済まされましたか?」
「え、いや……、まだ、です」
尋ねる俺に少し困惑したように首を振る。だけど迷惑かもしれないなんて、この時の俺には考えが及ばず、気付いたら「良かったら一緒にどうですか」と誘っていた。
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