二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

2wei

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第二十二章:それは ”最初” から

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「……西くん」
「颯太」

 “呼んだだけ” とは思えない雰囲気で名を呼んだ西くんに、「何?」と聞き返すと、僕の耳元でそっと小さく、小さく……とても小さく囁いた。


 好きだ、って。
 誰にも渡しくないんだ、って。


 この部屋には僕らしかいないのに、誰にも聞こえないように、僕にしか聞こえない声でそんなことを言う西くんに、愛しさが込み上がる。この先、もしかして「好き」なんて一生言って貰えないかもしれない。そんな風に思ってしまうくらい、恥ずかしそうにそう言ってくれた西くん。

 なんて可愛い人なんだろう。

 誰にも聞かせてあげられないのが残念なくらい、照れている西くんは可愛い。でもそれを独占できることを嬉しく思うんだ。

「僕もだよ、僕も同じ。とっても大好きだよ」

 自然と重なり合う唇。何度も何度もキスをして、それはまるで、互いの気持ちを確かめ合うようだって思った。そう思ったら、ふとあの夏にしたキスを思い出して、胸がいっぱいになった。
 あの時、今と同じように何度もキスをしたけど、お互い全然何も伝えられなくて、ただただ苦しいだけだった。

 だけど今は違う。全部分かる。西くんの思ってること、全部分かるよ。

 嘘みたいだけど、いまいち信じられないけど、西くんは僕のこと好きなんだ。

「に……しく」

 終わらないキスを繰り返しながら、西くんはトレンチコートを脱ぎ、僕のブルゾンも脱がせた。

 新調している革張りのソファ。
 そこで、西くんとエッチした。

 西くんの膝に正面から座り込み、彼のそれをお尻にあてがうと、僕の尻たぶは引っ張られるように持ち上げられ、無理やり拡げられたそこに彼を深く埋め込んだ。

 至福の瞬間。

 少しずつ奥に奥に突き刺さっていく感覚は、例えようのない快感だ。
 それをまたギリギリまで抜き、また奥へと沈めていく。トロトロのローションはその都度淫猥な音を立て、このピストン運動が激しさを増すにつれてそのボリュームを容赦なく上げていく。

 じゅぱじゅぱと部屋に響く粘着質な水音。
 もう何度も。何度となく繰り返してきたこの行為。

 いい時も悪い時も、この淫らな行為だけが僕自身の存在を証明し、価値になってくれた。僕にはこれしかなくて、これだけが唯一評価され続けてきたものだった。

 だから僕からこの行為を取ってしまったら、あとは何も残らない。
 それでも、この行為が嫌だと思ったことは数え切れなくて、どれだけの嫌悪感を抱いてここまで来ただろう。

 嫌だも、やめても、死にたいも……、全部この行為に乗っかっている。

 だけど体は悦ぶし、抱き合うその相手が『大好きな人』なら、この行為は何度でも幸福に姿を変えてくれる。
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