二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

2wei

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第二十二章:それは ”最初” から

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 菊池先輩が出て行ってからの部屋は、気まずいくらい静かだった。だけど、『西くんこの人僕の事好きだったんだ』と思うと、どうしても不思議で、おかしくて、でも嬉しくてくすぐったくて、思わずニヤけてしまう口元を必死に隠しながら、僕に背中を向けている西くんにそっと体を寄せた。

 一瞬ビクっとした西くんだけど、すぐに僕の両手を取ると、自分の腹の前に持ってきて、僕は西くんにしがみつく形になった。

 そっと天井を仰ぐ西くん。その頭にコツンと頭をぶつけて西くんを呼ぶと、「ん?」と気の抜けたような返事を寄越した。

 僕の事好きなんだ?って揶揄うような言葉が喉元まで出て来たけど、言うのをやめた。
 今この瞬間が、とても穏やかで幸せだな、と思ったから。

「……好きだよ」

 そう言うと、僕の両手を握る西くんの手がどこか照れ臭そうに動いたけど、ふぅっとため息のような息を吐きだした西くんは、「あっそ」っていつもみたいに返事した。素直じゃない。だから、思い切って聞いてみた。

「西くんは?」

 すると、僕の手を撫でるように動いていた手はぴたりと止まって、くっついていた頭をそっと持ち上げた。そして、めちゃくちゃ小さな声で言ったんだ。

「まぁ……そこそこ」

 そこそこ。

 なんだかその返事があまりに可笑しくて、たまらず吹き出すと、西くんは僕の手をそっと離し、真面目な顔でこちらを振り返った。そして──。

「今夜、本当は終わらせるつもりだった」

 それはつまり、恋人解消の、別れ話ってことだろう。

 何故今それを言われるのか。
 こちとら幸せ絶頂ってくらい逆上せているのに、突然そんなことを言われ、一気に血の気が引いてゆく。

 まさか、菊池先輩を追い返すために一芝居打ったということだろうか?

 さっき握ってもらった手に、思わず視線が落ちる。
 まさか今からフラられるの? そう思ったら、内臓がひっくり返るような恐怖がざぁっと足の先から頭のてっぺんまで駆け上った。

 だけど、西くんはふわりと僕の抱き寄せると、そのままあの力強い腕の中に収めてくれた。

「菊池のお節介も……、たまには役に立つんだな」

 そんなことを言う。
 ……それは、つまり……。

「西……くん」

 ぎゅうって息苦しいほどの腕の中。苦しいのに、心地よくて、安心できて、それでいてめちゃくちゃドキドキして、大丈夫だ振られるわけじゃないって思ったら、僕も自然とその腕を西くんの背中に回していた。

「西くん」

 ぎゅっと抱き寄せ、西くんに負けないくらいきつくきつく抱きしめる。大好きだよって、離れたくないよって、ちゃんと伝わるように、思い切り強く強く。
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