187 / 198
第二十二章:それは ”最初” から
1
しおりを挟む
菊池先輩が出て行ってからの部屋は、気まずいくらい静かだった。だけど、『西くん僕の事好きだったんだ』と思うと、どうしても不思議で、おかしくて、でも嬉しくてくすぐったくて、思わずニヤけてしまう口元を必死に隠しながら、僕に背中を向けている西くんにそっと体を寄せた。
一瞬ビクっとした西くんだけど、すぐに僕の両手を取ると、自分の腹の前に持ってきて、僕は西くんにしがみつく形になった。
そっと天井を仰ぐ西くん。その頭にコツンと頭をぶつけて西くんを呼ぶと、「ん?」と気の抜けたような返事を寄越した。
僕の事好きなんだ?って揶揄うような言葉が喉元まで出て来たけど、言うのをやめた。
今この瞬間が、とても穏やかで幸せだな、と思ったから。
「……好きだよ」
そう言うと、僕の両手を握る西くんの手がどこか照れ臭そうに動いたけど、ふぅっとため息のような息を吐きだした西くんは、「あっそ」っていつもみたいに返事した。素直じゃない。だから、思い切って聞いてみた。
「西くんは?」
すると、僕の手を撫でるように動いていた手はぴたりと止まって、くっついていた頭をそっと持ち上げた。そして、めちゃくちゃ小さな声で言ったんだ。
「まぁ……そこそこ」
そこそこ。
なんだかその返事があまりに可笑しくて、たまらず吹き出すと、西くんは僕の手をそっと離し、真面目な顔でこちらを振り返った。そして──。
「今夜、本当は終わらせるつもりだった」
それはつまり、恋人解消の、別れ話ってことだろう。
何故今それを言われるのか。
こちとら幸せ絶頂ってくらい逆上せているのに、突然そんなことを言われ、一気に血の気が引いてゆく。
まさか、菊池先輩を追い返すために一芝居打ったということだろうか?
さっき握ってもらった手に、思わず視線が落ちる。
まさか今からフラられるの? そう思ったら、内臓がひっくり返るような恐怖がざぁっと足の先から頭のてっぺんまで駆け上った。
だけど、西くんはふわりと僕の抱き寄せると、そのままあの力強い腕の中に収めてくれた。
「菊池のお節介も……、たまには役に立つんだな」
そんなことを言う。
……それは、つまり……。
「西……くん」
ぎゅうって息苦しいほどの腕の中。苦しいのに、心地よくて、安心できて、それでいてめちゃくちゃドキドキして、大丈夫だ振られるわけじゃないって思ったら、僕も自然とその腕を西くんの背中に回していた。
「西くん」
ぎゅっと抱き寄せ、西くんに負けないくらいきつくきつく抱きしめる。大好きだよって、離れたくないよって、ちゃんと伝わるように、思い切り強く強く。
一瞬ビクっとした西くんだけど、すぐに僕の両手を取ると、自分の腹の前に持ってきて、僕は西くんにしがみつく形になった。
そっと天井を仰ぐ西くん。その頭にコツンと頭をぶつけて西くんを呼ぶと、「ん?」と気の抜けたような返事を寄越した。
僕の事好きなんだ?って揶揄うような言葉が喉元まで出て来たけど、言うのをやめた。
今この瞬間が、とても穏やかで幸せだな、と思ったから。
「……好きだよ」
そう言うと、僕の両手を握る西くんの手がどこか照れ臭そうに動いたけど、ふぅっとため息のような息を吐きだした西くんは、「あっそ」っていつもみたいに返事した。素直じゃない。だから、思い切って聞いてみた。
「西くんは?」
すると、僕の手を撫でるように動いていた手はぴたりと止まって、くっついていた頭をそっと持ち上げた。そして、めちゃくちゃ小さな声で言ったんだ。
「まぁ……そこそこ」
そこそこ。
なんだかその返事があまりに可笑しくて、たまらず吹き出すと、西くんは僕の手をそっと離し、真面目な顔でこちらを振り返った。そして──。
「今夜、本当は終わらせるつもりだった」
それはつまり、恋人解消の、別れ話ってことだろう。
何故今それを言われるのか。
こちとら幸せ絶頂ってくらい逆上せているのに、突然そんなことを言われ、一気に血の気が引いてゆく。
まさか、菊池先輩を追い返すために一芝居打ったということだろうか?
さっき握ってもらった手に、思わず視線が落ちる。
まさか今からフラられるの? そう思ったら、内臓がひっくり返るような恐怖がざぁっと足の先から頭のてっぺんまで駆け上った。
だけど、西くんはふわりと僕の抱き寄せると、そのままあの力強い腕の中に収めてくれた。
「菊池のお節介も……、たまには役に立つんだな」
そんなことを言う。
……それは、つまり……。
「西……くん」
ぎゅうって息苦しいほどの腕の中。苦しいのに、心地よくて、安心できて、それでいてめちゃくちゃドキドキして、大丈夫だ振られるわけじゃないって思ったら、僕も自然とその腕を西くんの背中に回していた。
「西くん」
ぎゅっと抱き寄せ、西くんに負けないくらいきつくきつく抱きしめる。大好きだよって、離れたくないよって、ちゃんと伝わるように、思い切り強く強く。
10
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説




いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる