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第二十一章:ヒカリ
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だけど、その答えはあまりに突拍子もなかった。
「そしたら素直になるだろ!? そしたら思ってること全部喋んだろ!?」
想像の斜め上を行く発想とは、このことかもしれない。
嘘でしょ? 本音引き出すために泣かせてるっていうの?。
「こいつはすぐ何でも我慢するんだよ! 思ってること簡単に口にしねぇんだよ! 吟味して、慎重に慎重に言葉選ぶんだよ!」
そう言って西くんは、まるでやけくそのように言葉を続けた。
「だから泣かせてんだよ! 腹ん中の言葉引き摺り出してんだよ! それが例え俺の傷になっても、颯太が我慢し続けて来た言葉なら俺は全部受け止めてやる! 文句あるかよ!」
こればっかりは、僕も菊池先輩も言葉が出なかった。
呆気? 感動? いや呆気だろ。
だってそんなまどろっこしいことしなくても、「どう思ってるんだ」って聞いてくれたら、僕だって素直に答えるよ。なんでそんな方法しか思い浮かばないんだよ。意味分かんないよ。
──最初はそう思った。
だけど、実際はどうだろうって思い直した時、確かに僕は本音を隠すかもしれないと思った。だって、ここまでずっと「一番になりたい」っていう本音を隠してきたという事実があるから。
それを実感してしまうと、 ”もしかして” っていう期待が生まれた。
もしかして西くんは、僕から「一番になりたい」という言葉を引き出そうとしてたのかな……って。
「泣かせることも二番目にすることも、俺だけの特権だ。俺はこいつに殺されたって、こいつを許す覚悟を持ってる。誰にも颯太は譲らない! こいつが泣いて別れてくれって言わない限り、俺は一生手放すつもりはない!」
い……
一生……?
「優しい男に靡くことはあっても、颯太は手の届かない男を好きになる。永井も、神谷も雪村さんも……、全部手の届かない男だ。絶対に振り向いてくれない。一緒に夜景を見てみたいと言っていた加藤でさえ、絶対手には入んねぇんだよ。それに比べてあんたはどうだ? あっさり手に入るだろ。惚れたら負けなんだよ。颯太を攻略するには、惚れさせないとダメなんだよ!」
もともと流暢に喋る男だけど、西くんの考えている事がこんなにはっきり言葉にされたことは、かつて一度もなかったように思う。
僕は……だから二番目なの? 二番目って、そういう意味なの?
でもそれって……、それってつまり……
菊池先輩は細めた瞳で西くんを見据え、僕の心の声をまるで代弁するように言った。
「……つまり、三木が一番好きってことか」
先輩の問いに、西くんは簡単に頷いたりはしなかった。頷けば、それはもう「手の届く男」になってしまうから。
「黙秘か? 今更だぞ。素直に言えよ」
「そしたら素直になるだろ!? そしたら思ってること全部喋んだろ!?」
想像の斜め上を行く発想とは、このことかもしれない。
嘘でしょ? 本音引き出すために泣かせてるっていうの?。
「こいつはすぐ何でも我慢するんだよ! 思ってること簡単に口にしねぇんだよ! 吟味して、慎重に慎重に言葉選ぶんだよ!」
そう言って西くんは、まるでやけくそのように言葉を続けた。
「だから泣かせてんだよ! 腹ん中の言葉引き摺り出してんだよ! それが例え俺の傷になっても、颯太が我慢し続けて来た言葉なら俺は全部受け止めてやる! 文句あるかよ!」
こればっかりは、僕も菊池先輩も言葉が出なかった。
呆気? 感動? いや呆気だろ。
だってそんなまどろっこしいことしなくても、「どう思ってるんだ」って聞いてくれたら、僕だって素直に答えるよ。なんでそんな方法しか思い浮かばないんだよ。意味分かんないよ。
──最初はそう思った。
だけど、実際はどうだろうって思い直した時、確かに僕は本音を隠すかもしれないと思った。だって、ここまでずっと「一番になりたい」っていう本音を隠してきたという事実があるから。
それを実感してしまうと、 ”もしかして” っていう期待が生まれた。
もしかして西くんは、僕から「一番になりたい」という言葉を引き出そうとしてたのかな……って。
「泣かせることも二番目にすることも、俺だけの特権だ。俺はこいつに殺されたって、こいつを許す覚悟を持ってる。誰にも颯太は譲らない! こいつが泣いて別れてくれって言わない限り、俺は一生手放すつもりはない!」
い……
一生……?
「優しい男に靡くことはあっても、颯太は手の届かない男を好きになる。永井も、神谷も雪村さんも……、全部手の届かない男だ。絶対に振り向いてくれない。一緒に夜景を見てみたいと言っていた加藤でさえ、絶対手には入んねぇんだよ。それに比べてあんたはどうだ? あっさり手に入るだろ。惚れたら負けなんだよ。颯太を攻略するには、惚れさせないとダメなんだよ!」
もともと流暢に喋る男だけど、西くんの考えている事がこんなにはっきり言葉にされたことは、かつて一度もなかったように思う。
僕は……だから二番目なの? 二番目って、そういう意味なの?
でもそれって……、それってつまり……
菊池先輩は細めた瞳で西くんを見据え、僕の心の声をまるで代弁するように言った。
「……つまり、三木が一番好きってことか」
先輩の問いに、西くんは簡単に頷いたりはしなかった。頷けば、それはもう「手の届く男」になってしまうから。
「黙秘か? 今更だぞ。素直に言えよ」
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