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第十九章:西くんの恋人
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「すごいなぁ! ほんとすごいっすよ、颯太先輩! 俺、雪村さんなんて10メートル以内に近づけたこともないっすよ!」
「……まぁ、僕もエッグの時はそうだったよ」
嘘が重なっていく。
雪村さんは恋人じゃない。彼は彼で好きな人が居て、僕らは……お互いの恋路を応援し合っているだけの……関係なのに。
「でも雪村さんって元ノンケですよね? どうやって落としたんすか?」
思いもよらない質問だった。
そればっかりは、僕も知らないんだ。どうして雪村さんは僕を家に上げ、酒に酔わせ、近づき、キスを迫って来たんだろう。
いや……、確か殴って欲しかっただけ、って言ってたかもしれない。
殴ってほしかった……、だけ?
いや、その割には僕に興奮してた。ちゃんと勃ったし、最後まで迷うこともなくやり通した。僕が初めてだなんて言いながら、恋人と既にそういう関係だったに違いない。もしかすると、彼氏と喧嘩してたのかもしれない。だから、殴って欲しかった? 冷静さを取り戻したかった、ということか?
本当に……うまく利用されたと思うよ。……お互いに。
こんなに傷つく未来があるなんて、予想もせずにさ。
「それは、雪村さんに聞かなきゃ分からない。僕は……何もしてないよ」
菓子折りを持って、挨拶しに行っただけだもの。あわよくば、可愛がってもらえればいいって、ただそれだけを願って。
「さっすが、颯太先輩! ディッシュナンバーワンは伊達じゃないっすね!」
無邪気に笑って、雷哉は通りかかった店員を呼び止めると、アイスココアを注文する。可愛いオーダーだと思った。
そういうのを狙って注文出来れば良かったのかもしれない。そしたら西くんは、僕の事をもっと可愛いって思ってくれたのかな。
僕になくて雷哉にあるものは、そういう無邪気さなのかな。僕は、あんまり可愛げがないよね。何かある度二人で喧嘩してさ、言っちゃいけないような言葉も、考え無しに言っちゃうようなバカだもんな。
泣きそうになる。でもそれを必死に抑え込み、クッキーの載っている皿を、雷哉へ差し出した。
「一枚あげるよ。食べるでしょ?」
聞くと、雷哉は目をキラキラさせ、「いいんですか!?」と顔いっぱいに笑った。
「ありがとうございます! 颯太先輩、大好き!」
真似できないくらい……可愛いよ。
心が、ポキって折れた気がした。
勝てっこない。こんな可愛い子に、勝てるわけないじゃんか……っ。
「……まぁ、僕もエッグの時はそうだったよ」
嘘が重なっていく。
雪村さんは恋人じゃない。彼は彼で好きな人が居て、僕らは……お互いの恋路を応援し合っているだけの……関係なのに。
「でも雪村さんって元ノンケですよね? どうやって落としたんすか?」
思いもよらない質問だった。
そればっかりは、僕も知らないんだ。どうして雪村さんは僕を家に上げ、酒に酔わせ、近づき、キスを迫って来たんだろう。
いや……、確か殴って欲しかっただけ、って言ってたかもしれない。
殴ってほしかった……、だけ?
いや、その割には僕に興奮してた。ちゃんと勃ったし、最後まで迷うこともなくやり通した。僕が初めてだなんて言いながら、恋人と既にそういう関係だったに違いない。もしかすると、彼氏と喧嘩してたのかもしれない。だから、殴って欲しかった? 冷静さを取り戻したかった、ということか?
本当に……うまく利用されたと思うよ。……お互いに。
こんなに傷つく未来があるなんて、予想もせずにさ。
「それは、雪村さんに聞かなきゃ分からない。僕は……何もしてないよ」
菓子折りを持って、挨拶しに行っただけだもの。あわよくば、可愛がってもらえればいいって、ただそれだけを願って。
「さっすが、颯太先輩! ディッシュナンバーワンは伊達じゃないっすね!」
無邪気に笑って、雷哉は通りかかった店員を呼び止めると、アイスココアを注文する。可愛いオーダーだと思った。
そういうのを狙って注文出来れば良かったのかもしれない。そしたら西くんは、僕の事をもっと可愛いって思ってくれたのかな。
僕になくて雷哉にあるものは、そういう無邪気さなのかな。僕は、あんまり可愛げがないよね。何かある度二人で喧嘩してさ、言っちゃいけないような言葉も、考え無しに言っちゃうようなバカだもんな。
泣きそうになる。でもそれを必死に抑え込み、クッキーの載っている皿を、雷哉へ差し出した。
「一枚あげるよ。食べるでしょ?」
聞くと、雷哉は目をキラキラさせ、「いいんですか!?」と顔いっぱいに笑った。
「ありがとうございます! 颯太先輩、大好き!」
真似できないくらい……可愛いよ。
心が、ポキって折れた気がした。
勝てっこない。こんな可愛い子に、勝てるわけないじゃんか……っ。
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