二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

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第十九章:西くんの恋人

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「二番目は……もう、必要ないのかな」

 今までの彼女と何が違うの? エッチに満足しちゃってる? それとも顔が好み? もしかして家の掃除とか、料理とか嫌がらずにしてくれる系の子なのかな? あぁ……わかった。めちゃくちゃ、賢い子なのかも。西くんの小難しい話を理解出来ちゃうくらい賢い子。
 僕にはそれ、まったく理解できないからなぁ。

 何度目かのため息。
 今でも西くんを好きだと思うけど、望む幸せに手を伸ばすべきか悩んでいる理由はそういうこと。絶望的なものに手を伸ばす必要はない。雪村さんへの恩返しは『僕の幸せ』だから、例えそれが当初の形と違っていても、僕がいつか幸せになれば、雪村さんはきっと文句なんて言わない。良かったなって笑ってくれるから。

 それでも、そう簡単に諦められるほど、軽い気持ちでもない。

 一ヶ月じっくり考えているけど、まだ二番目のままでもいいから傍に居たいって思ってる自分の方が強いもんな。

 馬鹿だと思う。でも会いたい。
 あの腕に抱きしめられて、キスをしたい。颯太って名前を呼ばれながらエッチをして、一緒に眠って、一緒に朝を迎えたい。

 そんなことを考えながら洋服を一着買い、映画を一本見た。

 その間、携帯にはDMが数件届いているだけで、誰からの連絡もなかった。僕って寂しいな、と思いながら鞄に携帯を仕舞い込み、夕方五時の街を当てもなく歩いた。

 少しだけでもいいから西くんに会いたい。だってさ、どうせ振られるのなら、それまでの間、西くんを困らせるくらい甘え倒して、幸せな思い出たくさん作っておきたいじゃん? codeとして会う時は、そんな事してられないんだから。それに、別れた後も僕らはずっとcodeだからさ、自分の中で未練は残したくないもん。
 まぁ……どうしたって、未練はゼロになんかならないだろうけどさ。

 夏の日の長さはいつの間にか少しずつ短くなってきていて、九月の五時はすでに少し薄暗い。カフェに入ろうか、それとも早めのディナーを食べに行くか、どうしようかなと思っていたら、鞄の中から携帯の着信音が鳴った。

 慌てて電話を取り出したけど間に合わなくて、だけど、着信相手を見て俄かにテンションが上がった。

「西くんだ!」

 急いで折り返す。だけどなかなか出て貰えなくて、仕方なく「どうしたの?」とLINEを送ると、しばらく後に返事が返って来た。

『夜空けられそう。飯はちょっと分かんねぇけど、また連絡する』

「やった!」

 たまらず声が出た。

『待ち合わせは?』

 問うと、『車出してやるから、好きなところで待っとけよ』と男前発言! やったやったやった!

 歓喜に震え、思わず公道でジタバタしちゃいそうになるのを堪えて目の前のカフェに入った。

 西くんが僕のために予定を早く切り上げてくれる! とんでもなく嬉しい。
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