二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

2wei

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第十八章:幸せはどこにある?

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 隣に並んで雪村さんの元恋人を同じように見つめる。

 ふわふわの黒髪。
 どうやら自分たちのツアーTシャツを着ているみたいで、バックプリントには彼らを意味する数字が背番号のように刻まれていた。
 ステップを踏み間違えて、素直に「間違った」とか言っちゃうもんだから、みんなからチョップを喰らったりなんかしていて、スタジオの隅から見る彼は、どこか遠くの国にでも居るような気さえした。

 でもそれは雪村さんも一緒だったみたい。

「恋って……辛いな」

 ぽつり、消えてしまいそうな声でそう言った。

 恋は……辛い。

「そう……ですね」

 雪村さんからそんな言葉を聞く日が来るとは思わなかった。だけど、そんな弱気な言葉すら、今はなんだか雪村さんらしく感じてしまう自分がいる。そうだ、と、すごく辛いよなって。雪村さんのその言葉に痛く共感して……、きっとお互い、なんで “その人” を好きになってしまったのだろうって思った。
 僕は西くんを、雪村さんは彼を。

 “雪村涼” のスイッチが切れたその瞳は、とても儚げで、とても頼りない。 “雪村涼” は、たまにこうやって息継ぎをする。ふとした瞬間に、華奢で繊細な雪村さんになるんだ。

 でもこの瞬間は、いつだって見落としてしまいそうなくらい “一瞬” だ。

「で。お前、西の事諦めんのか?」

 ほらね。もう、いつもの雪村さんだ。

 この切り替えは、本当に見事だと思う。けどきっと、雪村さんはこうやって自分を守って来たんだろう。きっと、虚勢で生きてる。

 支えは本当に必要ないの? 一人で立っていられるの? どうして別れの道しかなかったの……、先輩?

「……わから……ないです」

 雪村さんは別れの選択を選んだ。いや、振られたと言っていたから、そうするしかなかったのだろうけど。じゃあ、僕はどうする? どうするべきだろうか。
 永遠に二番目のまま、西くんの隣に居続けるのか、それとも。

 噂はどこまで巡り巡るだろう。例えば僕が、事務所外に別の恋人を作った場合、どこまで自分の経歴を誤魔化し続けることが出来るのだろうか。色んな男に抱かれ続けたこと、ずっと秘密にし続けることは可能なのだろうか。

 そういう不安が僕にはこれから付きまとう。この不安と向き合わなくていいのは、今のところ西くんだけだ。こんな僕でも、ちゃんと一人前に愛してくれるから。

 ただ……ずっと二番目だ。こんな僕が贅沢を望んじゃいけないって分かってはいるけど、キスマークを断られたのは…やっぱり今一番のショックだ。

「気持ちは伝えてあるんだろう?」

 雪村さんが確認するように尋ねて来る。

「はい」

 伝えたよ。雪村さんでも、神谷くんでも、もちろん菊池さんでもなく、西くんだけが好きなんだと。
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