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第十七章:大凶くじ
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……分かるよ、想像できないのは。でも、西くんは本当に優しいんだよ!
「何でもない日に 、似合うと思ってってプレゼントを用意してくれたり、可愛いって飽きるほど頭撫でてくれたり、夜景を見たいって言ったら、面倒がらずに連れて行ってくれたりするんです! 優しいんです! 西くん!」
「分かった、分かった。分かってるって、三木。そうムキになるなよ」
「ムキになんてなってないです! ただ西くんは……っ」
「“優しい”……んだろ?」
僕の言葉を奪った雪村さんは、もう笑うのをやめて優しく微笑むと、ポンポンと僕の頭を叩いた。
「悪かった、笑ったりして。西がお前にそういう顔を見せてるのは意外だけど、でも頼れる男だと思うぞ。あれで結構、正義感強そうだから」
ニシシと歯を見せて笑った雪村さんは、「良かったな。西が傍にいてくれて」と言ってくれた。
涙は堰を切って溢れ出し、「はい」と返事をすることにも時間がかかった。
「泣くなよ。俺が泣かせたみたいだろ?」
先輩に泣かされたんだよ、と思ったけど、口には出来なかった。
困ったように微笑みながら、先輩は「ハンカチねぇな」とか言いながらズボンのポケットをパンパン叩いた。
「すみませ……、大丈夫です」
ぐいっと涙を拭くと、先輩は優しく僕の頭を撫でてくれた。
「あれから全然会えなかったから、今日喋れて良かったよ。今どこに住んでるんだ?」
事件からしばらくは浅野さんと一緒にいたけど今は。
「実家に戻ってたんですけど、また独り暮らしを始めてます」
「そうか」
「先輩は?」
「俺も引っ越してる」
そう言うから、思わず尋ねてしまった。
「彼の家……ですか?」
雪村さんの恋人。
だけど雪村さんは可笑しそうに笑うと、「まさか」と答えた。そして続けてこう言ったのだ。
「それは無理だ」
その瞳はどこか遠くを見ているようで、一瞬心臓が縮んだ気がした。
何故……無理なのか。
聞くのが怖いと思った。あの事件がきっかけで、二人は破局したのだろうかと想像してしまったからだ。
「せ、んぱ……」
「大丈夫だよ。仲良くはやってる。週に一回は会ってるかな?」
僕の不安が何かを見抜いたのであろう答えがすんなり帰ってきて、心底心の中を覗かれているんじゃないだろうかと思った。
「ただ、付き合ってはいない」
「……え?」
耳を疑う言葉だった。だけど、嘘じゃないんだと訴えかけるような瞳で僕を見た雪村さんは、控えめに僕に聞いて来た。
「お前は、ずっと二番目でいいのか?」
「付き合ってないって、どういうことですか!? 別れたんですか!?」
今はそんな事よりも、そっちの方が気になった。
急かすように聞いた僕に、雪村さんは苦笑いを零し、小さく頷いた。
「でも、それでいいんだよ。あのままじゃ、雪村涼が壊れるから。俺を守るために、あいつは俺を振ったんだよ」
壊……れる。
「何でもない日に 、似合うと思ってってプレゼントを用意してくれたり、可愛いって飽きるほど頭撫でてくれたり、夜景を見たいって言ったら、面倒がらずに連れて行ってくれたりするんです! 優しいんです! 西くん!」
「分かった、分かった。分かってるって、三木。そうムキになるなよ」
「ムキになんてなってないです! ただ西くんは……っ」
「“優しい”……んだろ?」
僕の言葉を奪った雪村さんは、もう笑うのをやめて優しく微笑むと、ポンポンと僕の頭を叩いた。
「悪かった、笑ったりして。西がお前にそういう顔を見せてるのは意外だけど、でも頼れる男だと思うぞ。あれで結構、正義感強そうだから」
ニシシと歯を見せて笑った雪村さんは、「良かったな。西が傍にいてくれて」と言ってくれた。
涙は堰を切って溢れ出し、「はい」と返事をすることにも時間がかかった。
「泣くなよ。俺が泣かせたみたいだろ?」
先輩に泣かされたんだよ、と思ったけど、口には出来なかった。
困ったように微笑みながら、先輩は「ハンカチねぇな」とか言いながらズボンのポケットをパンパン叩いた。
「すみませ……、大丈夫です」
ぐいっと涙を拭くと、先輩は優しく僕の頭を撫でてくれた。
「あれから全然会えなかったから、今日喋れて良かったよ。今どこに住んでるんだ?」
事件からしばらくは浅野さんと一緒にいたけど今は。
「実家に戻ってたんですけど、また独り暮らしを始めてます」
「そうか」
「先輩は?」
「俺も引っ越してる」
そう言うから、思わず尋ねてしまった。
「彼の家……ですか?」
雪村さんの恋人。
だけど雪村さんは可笑しそうに笑うと、「まさか」と答えた。そして続けてこう言ったのだ。
「それは無理だ」
その瞳はどこか遠くを見ているようで、一瞬心臓が縮んだ気がした。
何故……無理なのか。
聞くのが怖いと思った。あの事件がきっかけで、二人は破局したのだろうかと想像してしまったからだ。
「せ、んぱ……」
「大丈夫だよ。仲良くはやってる。週に一回は会ってるかな?」
僕の不安が何かを見抜いたのであろう答えがすんなり帰ってきて、心底心の中を覗かれているんじゃないだろうかと思った。
「ただ、付き合ってはいない」
「……え?」
耳を疑う言葉だった。だけど、嘘じゃないんだと訴えかけるような瞳で僕を見た雪村さんは、控えめに僕に聞いて来た。
「お前は、ずっと二番目でいいのか?」
「付き合ってないって、どういうことですか!? 別れたんですか!?」
今はそんな事よりも、そっちの方が気になった。
急かすように聞いた僕に、雪村さんは苦笑いを零し、小さく頷いた。
「でも、それでいいんだよ。あのままじゃ、雪村涼が壊れるから。俺を守るために、あいつは俺を振ったんだよ」
壊……れる。
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