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第十五章:復讐のキスマーク!?
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でも……こんな状況で、どうやって自分を大事になんかできるんだよ。誰も大事に出来ないのに、上手くそうする術を知らないのに、どうやって自分だけ大事になんかできるって言うんだ……っ!
「……無理だよ……っ。僕は……、僕は……」
「颯太」
そっと僕の肩に置かれた手。
「いくら後悔してももう時間は戻らない。けど、雪村くんに守ってもらったお前自身を、お前が粗末にしちゃいけない。大事にしなさい。誠実でありなさい。もう自分を犠牲にしちゃいけない」
それは……僕が一番よく分かってる。簡単に逃げ出しちゃダメで、簡単に死ぬのも無しだ。僕はこれから “簡単” を選ぶわけにはいかない。 “おしまい” を選ぶのも無しだ。でもそれを “自分を犠牲にしてる” と言われるのなら、正しい答えが何か、少し理解できない。
ただ……。
「僕にも……守りたいものがあります。自分を犠牲にしても、守りたいものがあります。この気持ちにだけは誠実でいたいと……そう思うことは、許されますか?」
千葉さんは黙り込み、しばし重苦しい沈黙が下りた。
でも、彼は眉を下げて情けなく笑った。
「……参ったな。男だなぁ、颯太」
そう言って大きなため息を吐くと、「つまり、今泣いてる理由は話さないってことでいいのかな?」と問われた。
その通りだよ。
頷くと、千葉さんはくっくっと肩を揺らし、ソファを立ちあがった。
そして僕の頭をポンポンと撫でると、「落ち着いたら会議室に戻ってきなさい」と告げ、応接間から姿を消した。
涙は止まっていた。気持ちが落ち着くのを待ちながら、心臓のあたりに付けられたキスマークを服の上からそっと隠すように触った。
「何度でも……付け直す……か」
だけど、この気持ちが落ち着くなんてことは永遠にないような気もした。
ガリっと服の上から爪を立てる。蒸し暑い梅雨。薄着の上から爪を立て、掻き毟って掻き毟って、どうにか消えてはくれないだろうかと願いを込めたけど、ただ、赤みが更にと増すだけだった。
そうだ。この印でさえ “簡単” には消えてくれない。
ねぇ……雪村さん。
僕は、貴方に守ってもらうだけの価値のある人間だったでしょうか? 初期パーティーに守られ続けるだけの価値が果たして本当にあるんでしょうか? 僕はその価値を……どうやって見出せばいいんでしょう? 教えてください……、先輩。
「……無理だよ……っ。僕は……、僕は……」
「颯太」
そっと僕の肩に置かれた手。
「いくら後悔してももう時間は戻らない。けど、雪村くんに守ってもらったお前自身を、お前が粗末にしちゃいけない。大事にしなさい。誠実でありなさい。もう自分を犠牲にしちゃいけない」
それは……僕が一番よく分かってる。簡単に逃げ出しちゃダメで、簡単に死ぬのも無しだ。僕はこれから “簡単” を選ぶわけにはいかない。 “おしまい” を選ぶのも無しだ。でもそれを “自分を犠牲にしてる” と言われるのなら、正しい答えが何か、少し理解できない。
ただ……。
「僕にも……守りたいものがあります。自分を犠牲にしても、守りたいものがあります。この気持ちにだけは誠実でいたいと……そう思うことは、許されますか?」
千葉さんは黙り込み、しばし重苦しい沈黙が下りた。
でも、彼は眉を下げて情けなく笑った。
「……参ったな。男だなぁ、颯太」
そう言って大きなため息を吐くと、「つまり、今泣いてる理由は話さないってことでいいのかな?」と問われた。
その通りだよ。
頷くと、千葉さんはくっくっと肩を揺らし、ソファを立ちあがった。
そして僕の頭をポンポンと撫でると、「落ち着いたら会議室に戻ってきなさい」と告げ、応接間から姿を消した。
涙は止まっていた。気持ちが落ち着くのを待ちながら、心臓のあたりに付けられたキスマークを服の上からそっと隠すように触った。
「何度でも……付け直す……か」
だけど、この気持ちが落ち着くなんてことは永遠にないような気もした。
ガリっと服の上から爪を立てる。蒸し暑い梅雨。薄着の上から爪を立て、掻き毟って掻き毟って、どうにか消えてはくれないだろうかと願いを込めたけど、ただ、赤みが更にと増すだけだった。
そうだ。この印でさえ “簡単” には消えてくれない。
ねぇ……雪村さん。
僕は、貴方に守ってもらうだけの価値のある人間だったでしょうか? 初期パーティーに守られ続けるだけの価値が果たして本当にあるんでしょうか? 僕はその価値を……どうやって見出せばいいんでしょう? 教えてください……、先輩。
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