二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

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第十五章:復讐のキスマーク!?

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「しょ、章くん……」
『うわぁ! 可愛い! もっと呼んでよ』

 なんだこの会話は。バカップルみたいだな。

「章くん」
『わぁわぁ! いいよ、いいね! 俺恋人にそう呼んでもらうのが夢だったんだ!』

 あのクールで几帳面そうな菊池先輩の夢。思いのほかしょうもない。
 だけど、これが一般的に “可愛い” なんだろう。これが “ギャップ萌え” ってやつなのかもしれない。
 だけど僕には、あまりに現実味のない “嘘の会話” をしているようだ。

『ありがとう、三木。ずっとそう呼んでね。好きだよ、颯太』

 三木って呼んだり、颯太って呼んだり、まだ菊池先輩も呼び方が安定してない。でもとても穏やかで優しい声だった。
 きっとこの人に愛されて不幸になることはないだろう。思ってるよりお喋りだし、面白いし、頭もいいし、頼れるし、何よりとても優しい。

「ありがとうございます。僕も……好きです」

 きっと好きになれる。こんなの慣れだ。今までがだったから、この甘さになかなか慣れないだけ。仕方ないよ。だって僕は、十三の頃から成人するまでずっと永井くんに縛られて、やっと心から大事だと思えた人が、あの西くんなんだから。

 ……バカだよね。この幸せな甘さが嘘に見えてしまうんだから。最低だと思うよ。僕はどこまでもクズだ。

 好きだよ、菊池先輩の事。好きになれる。彼の腕の中も、声も言葉も、彼の笑顔も優しさも、心の大きさだって、きっといつか好きになれるから。

「愛しています、菊池せんぱ……、っ!」

 突然、ぱっと僕の手の中から携帯電話が奪われた。

 はっとして隣を見上げると、そこには仏頂面をした西くんが立っていた。
 そして僕から奪った携帯をそのまま耳に当てると、不機嫌な声で唸った。

「颯太に手ぇ出してんじゃねぇ。殺すぞ」

 そのまま西くんの手の中で切られた通話。

 サラサラの直毛。すらっとした細身の体。切れ長の……鋭い瞳。

「に……し、く……」

 いつから居た? いつから聞いてた? いつの間に……っ!?

 僕を見下ろす冷たい瞳。無言の圧力。
 そして僕の携帯は、西くんの手の中からするりと落とされ、その落下音は、廊下に甲高く響いた。


「嫌っ! やめて西くん!」

 落とされた携帯は廊下に置き去りにされたまま、事務所内にある小さなレコーディングブースに無理やり押し込まれた。
 分厚い扉。完全防音。おまけにここは窓一つない。何故今日に限って誰もここを使用していないんだと、この不運を呪った。

 ガチャンと鍵がかけられる。そうすると廊下には「使用中」の案内で出るようになっている。用事がない限り、誰もこの部屋の開けることはない。

 最悪……っ!
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