122 / 198
第十五章:復讐のキスマーク!?
6
しおりを挟む
「しょ、章くん……」
『うわぁ! 可愛い! もっと呼んでよ』
なんだこの会話は。バカップルみたいだな。
「章くん」
『わぁわぁ! いいよ、いいね! 俺恋人にそう呼んでもらうのが夢だったんだ!』
あのクールで几帳面そうな菊池先輩の夢。思いのほかしょうもない。
だけど、これが一般的に “可愛い” なんだろう。これが “ギャップ萌え” ってやつなのかもしれない。
だけど僕には、あまりに現実味のない “嘘の会話” をしているようだ。
『ありがとう、三木。ずっとそう呼んでね。好きだよ、颯太』
三木って呼んだり、颯太って呼んだり、まだ菊池先輩も呼び方が安定してない。でもとても穏やかで優しい声だった。
きっとこの人に愛されて不幸になることはないだろう。思ってるよりお喋りだし、面白いし、頭もいいし、頼れるし、何よりとても優しい。
「ありがとうございます。僕も……好きです」
きっと好きになれる。こんなの慣れだ。今までがだったから、この甘さになかなか慣れないだけ。仕方ないよ。だって僕は、十三の頃から成人するまでずっと永井くんに縛られて、やっと心から大事だと思えた人が、あの西くんなんだから。
……バカだよね。この幸せな甘さが嘘に見えてしまうんだから。最低だと思うよ。僕はどこまでもクズだ。
好きだよ、菊池先輩の事。好きになれる。彼の腕の中も、声も言葉も、彼の笑顔も優しさも、心の大きさだって、きっといつか好きになれるから。
「愛しています、菊池せんぱ……、っ!」
突然、ぱっと僕の手の中から携帯電話が奪われた。
はっとして隣を見上げると、そこには仏頂面をした西くんが立っていた。
そして僕から奪った携帯をそのまま耳に当てると、不機嫌な声で唸った。
「颯太に手ぇ出してんじゃねぇ。殺すぞ」
そのまま西くんの手の中で切られた通話。
サラサラの直毛。すらっとした細身の体。切れ長の……鋭い瞳。
「に……し、く……」
いつから居た? いつから聞いてた? いつの間に……っ!?
僕を見下ろす冷たい瞳。無言の圧力。
そして僕の携帯は、西くんの手の中からするりと落とされ、その落下音は、廊下に甲高く響いた。
「嫌っ! やめて西くん!」
落とされた携帯は廊下に置き去りにされたまま、事務所内にある小さなレコーディングブースに無理やり押し込まれた。
分厚い扉。完全防音。おまけにここは窓一つない。何故今日に限って誰もここを使用していないんだと、この不運を呪った。
ガチャンと鍵がかけられる。そうすると廊下には「使用中」の案内で出るようになっている。用事がない限り、誰もこの部屋の開けることはない。
最悪……っ!
『うわぁ! 可愛い! もっと呼んでよ』
なんだこの会話は。バカップルみたいだな。
「章くん」
『わぁわぁ! いいよ、いいね! 俺恋人にそう呼んでもらうのが夢だったんだ!』
あのクールで几帳面そうな菊池先輩の夢。思いのほかしょうもない。
だけど、これが一般的に “可愛い” なんだろう。これが “ギャップ萌え” ってやつなのかもしれない。
だけど僕には、あまりに現実味のない “嘘の会話” をしているようだ。
『ありがとう、三木。ずっとそう呼んでね。好きだよ、颯太』
三木って呼んだり、颯太って呼んだり、まだ菊池先輩も呼び方が安定してない。でもとても穏やかで優しい声だった。
きっとこの人に愛されて不幸になることはないだろう。思ってるよりお喋りだし、面白いし、頭もいいし、頼れるし、何よりとても優しい。
「ありがとうございます。僕も……好きです」
きっと好きになれる。こんなの慣れだ。今までがだったから、この甘さになかなか慣れないだけ。仕方ないよ。だって僕は、十三の頃から成人するまでずっと永井くんに縛られて、やっと心から大事だと思えた人が、あの西くんなんだから。
……バカだよね。この幸せな甘さが嘘に見えてしまうんだから。最低だと思うよ。僕はどこまでもクズだ。
好きだよ、菊池先輩の事。好きになれる。彼の腕の中も、声も言葉も、彼の笑顔も優しさも、心の大きさだって、きっといつか好きになれるから。
「愛しています、菊池せんぱ……、っ!」
突然、ぱっと僕の手の中から携帯電話が奪われた。
はっとして隣を見上げると、そこには仏頂面をした西くんが立っていた。
そして僕から奪った携帯をそのまま耳に当てると、不機嫌な声で唸った。
「颯太に手ぇ出してんじゃねぇ。殺すぞ」
そのまま西くんの手の中で切られた通話。
サラサラの直毛。すらっとした細身の体。切れ長の……鋭い瞳。
「に……し、く……」
いつから居た? いつから聞いてた? いつの間に……っ!?
僕を見下ろす冷たい瞳。無言の圧力。
そして僕の携帯は、西くんの手の中からするりと落とされ、その落下音は、廊下に甲高く響いた。
「嫌っ! やめて西くん!」
落とされた携帯は廊下に置き去りにされたまま、事務所内にある小さなレコーディングブースに無理やり押し込まれた。
分厚い扉。完全防音。おまけにここは窓一つない。何故今日に限って誰もここを使用していないんだと、この不運を呪った。
ガチャンと鍵がかけられる。そうすると廊下には「使用中」の案内で出るようになっている。用事がない限り、誰もこの部屋の開けることはない。
最悪……っ!
10
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。



男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる