二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

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第十二章:菊池章太と初期パーティー

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 この大乱闘は多くのタレントを巻き込んだ。
 一番に加勢した神谷くんを始め、Mellowの菊池さん、One Dozenの西川さんと井上さん、Dazzling Darlingの天道さんと二ノ宮さん、ダンスマニアの藤本さんに、エッグからも数名。もう一つ存在しているパーティーリーダーである小松くんも止めに入ったと聞いている。

 多くのタレントがこの乱闘で怪我を負った。心も体も傷ついて、この事件は……僕の……パーティーを抜けたいというたった一つの我儘から、こんなにも大層な事態を招くことになった。
 そしてこの乱闘の原因は、すぐに事務所内に広まった。

 ノンケのタレントは、いつまで経っても原因を見つけ出すことができないようだったけど、パーティー利用者から見ると、事務所から追放されていない僕だけが浮いて見えていた。

 そう、事務所から追放されたのはNIAだけじゃない。同じパーティーに所属していたエッグたちも全員揃って解雇させられているんだ。唯一、何のペナルティもなく事務所にいることを許されたのは、……僕だけ。

 もう一人、supernovaの木村くんも事務所に残ることを許されたが、グループ活動は無期限謹慎とされ、事実上のエッグ降格となった。

 たぶん、木村くんは誰より先に怖気づき、佐久間さんに全面的に協力したのではないかと噂されている。だけど実際のところは誰も真相を知らないようだった。

 どちらにせよ、彼もまた僕と同じように後ろ指を指され、居心地の悪い生活を強いられることになったのだ。それならば、解雇させられていた方が楽だっただろうと思う。

 テレビのリモコンを持ったままぼんやりしてしまう僕の前に、そっと冷たい珈琲が出された。

「飲む?」

 珈琲を出し、僕を覗き込むように見下ろしてたのは、Mellowの菊池先輩だ。

 春フェスで、彼は僕をずっと気にかけてくれていた。浅野先輩の家でお世話になっている僕を、かなり気の毒がったりもした。

 「健吾、インドアだから外に出してもらえないだろ?」とか、「あいつピアノ始めるとテレビ一つ見させてくれないだろ?」とか、「席立つことも嫌がるだろ?」とか、「トイレとかどうしてんの?」とか、「飯はまともに食わせてもらってんのか?」とか、「自分で買って食ってるならいいけど、下手に手料理食べない方がいいぜ。法外な食費請求されるからな」とか。

 今のところ、法外な食費は請求されていないし、演奏の途中でトイレに立っても怒られない。最初これが菊池先輩なりの冗談だとは思っていなかった。浅野先輩って本当はそういう人なんだと素直に驚いたけど、「健吾、一日一回はオナしないと気の済まない男だから一人の時間作ってやれよ」と言われた時、あぁ、これ全部冗談なんだなってようやく気付いた。

 だから、菊池先輩が言う浅野先輩の弄りの冗談が段々面白くなってきて、「健吾のご機嫌を取りたい時は、TENGAの一つ買ってやれ」と極めつけの冗談を頂くと、たまらず笑ってしまった。
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