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第十一章:春フェス
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不安な事、分からない事、知りたいこと、いっぱいある。雪村さんが今どうしているのか、永井くん達がどうやって僕をまた追い込みにくるのか、初期パーティーがどうやって雪村さんを守るのか。もう僕のことはいい。守ってくれなくていい。
だから……雪村さんを……っ!
「颯太? おい、具合悪いのか?」
蹲る僕の背中をさすってくれるリーダーは、特設ステージの前でまだ騒いでいる三人を振り返った。
「加藤!」
リーダーが呼んだのは、西くんじゃなくてカトゥンだった。
ようやく僕らがステージの前から離れていることに気付いた三人は蹲る僕を見て慌てて駆け寄って来た。
「具合が悪いらしい。医務室に連れてやってくれ」
リーダーの指示で、カトゥンが「大丈夫か?」と僕を覗き込み、背中を僕に向けてしゃがみ込んだ。
「おぶってやる。動けるか? 颯太」
そっと顔をあげ、カトゥンの背中に手を伸ばしたが、その手はカトゥンに触れる前に西くんに掴まれた。
「俺が連れて行く」
そう言ってぐっと無理やり引っ張りあげられたが、それを止めたのはリーダーだった。
「西。お前ケツがあるだろ。先に俺達と下見を終わらせるぞ」
西くんは今夜、クイズ番組の収録が入っている。それでも引き下がるつもりのない西くんは、リーダーと睨み合いみたいに見つめ合う。けどそのリーダーの目が少し、いつもより厳しい気がして、僕は慌ててカトゥンに手を伸ばした。
「あ、ありがとう、西くん。でも、カトゥンに連れてってもらうよ。ごめんね、ありがとう」
掴まれている手を強引に振り解いてカトゥンの背中にしがみつくと、ちょいっと軽々持ち上げられた。
「軽っ! お前食ってるか? 女子みてぇだな」
驚くカトゥンに「身長差のせいだろうがよ」と冷静な小形くんのツッコミが入る。そりゃ二〇センチ違ったら、体重も違う。でも女子のつもりは全くないんだけど。
案の定、チラっと見た西くんはめちゃくちゃ不機嫌顔だ。けど、西くんじゃなくて良かった。
今、西くんと二人きりになったら絶対に泣いてしまう。この後、まともに仕事に戻れる気がしない。カトゥンで良かったと心の底からそう思う。
リーダーが西くんのスケジュールをちゃんと把握してくれていて、本当に良かった。
だから……雪村さんを……っ!
「颯太? おい、具合悪いのか?」
蹲る僕の背中をさすってくれるリーダーは、特設ステージの前でまだ騒いでいる三人を振り返った。
「加藤!」
リーダーが呼んだのは、西くんじゃなくてカトゥンだった。
ようやく僕らがステージの前から離れていることに気付いた三人は蹲る僕を見て慌てて駆け寄って来た。
「具合が悪いらしい。医務室に連れてやってくれ」
リーダーの指示で、カトゥンが「大丈夫か?」と僕を覗き込み、背中を僕に向けてしゃがみ込んだ。
「おぶってやる。動けるか? 颯太」
そっと顔をあげ、カトゥンの背中に手を伸ばしたが、その手はカトゥンに触れる前に西くんに掴まれた。
「俺が連れて行く」
そう言ってぐっと無理やり引っ張りあげられたが、それを止めたのはリーダーだった。
「西。お前ケツがあるだろ。先に俺達と下見を終わらせるぞ」
西くんは今夜、クイズ番組の収録が入っている。それでも引き下がるつもりのない西くんは、リーダーと睨み合いみたいに見つめ合う。けどそのリーダーの目が少し、いつもより厳しい気がして、僕は慌ててカトゥンに手を伸ばした。
「あ、ありがとう、西くん。でも、カトゥンに連れてってもらうよ。ごめんね、ありがとう」
掴まれている手を強引に振り解いてカトゥンの背中にしがみつくと、ちょいっと軽々持ち上げられた。
「軽っ! お前食ってるか? 女子みてぇだな」
驚くカトゥンに「身長差のせいだろうがよ」と冷静な小形くんのツッコミが入る。そりゃ二〇センチ違ったら、体重も違う。でも女子のつもりは全くないんだけど。
案の定、チラっと見た西くんはめちゃくちゃ不機嫌顔だ。けど、西くんじゃなくて良かった。
今、西くんと二人きりになったら絶対に泣いてしまう。この後、まともに仕事に戻れる気がしない。カトゥンで良かったと心の底からそう思う。
リーダーが西くんのスケジュールをちゃんと把握してくれていて、本当に良かった。
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