二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

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第十章:地獄の時間

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 けど永井くんはきっとこのあと僕に触れるんだろう。僕を抱くはずだ。彼の気が済み、思い通りになった時、先輩の目の前で僕を抱くんだ。見ろと強要し、僕がを見せつける。

 きっとそうだ。

 もう分かってる。だから、早くそれをすればいい。いち早く先輩から離れて欲しい。僕は永井くんのものだと認めるから。もう……、夢なんか見たりしないから。

 僕を縛り付けて、それで永井くんが満足するなら……、それで先輩を解放してくれるなら、僕がこの地獄の続きを見続けるよ。

 そう覚悟を決めた。


 だけど──、実際は違っていた。


 僕はこの期に及んでまだ永井くんのもので居続けたかったのかもしれない。

 これは……彼が僕にかけた呪縛だ。

 赤松くんと飯尾くんに無理やりこじ開けられた雪村さんだったが、三番目に名乗りを上げたのは、こともあろうか……永井くんだったんだ。

 雪村さんがこの部屋に突入してきてからこっち、永井くんが何を考えているのか、どう思っているのか、恐ろしいほどにはっきりと、手に取るように分かった。永井くんは元々あまり感情をむき出しにしないし、何を考えているのか分からない事も多いけど、でも……今ははっきりと彼の感情が見えていた。

 なのに……、永井くんは僕じゃなくて……雪村さんに欲情した?

 ベルトを外し、ズボンのチャックを下ろすと、そこから反り立った自身を取り出した。

 信じられなかった。信じたくなかった。なんで僕じゃないんだって、どうして雪村さんなんだって……っ!
 認めたくなくて、永井くんは僕のだって思った。でもこの想いが可笑しいことも分かっている。永井くんは絶対手に入らないし、第一僕は……西くんと幸せになりたいんだろって。

 だけど……永井くんが寂しそうなんだ。永井くんがずっと、ずっと泣きそうだから。それを抱きしめてあげられるのは、僕……だけだって、


 僕……だけ……だって……。

「あ……ぁ、あぁ……」

 自分でも、抑えきれない声が漏れた。
 ショックで、悲しくて、信じたくなくて……。もう随分前に抱いてもらった永井くんとの夜が、こんな時になって一気に思い出された。

 初めて抱かれた夜の、優しい永井くんの声と手と、温かいその体温。

 可愛いねって笑って、何度もキスをくれた。ぎゅって手を握り合って、一緒に眠ったじゃないか……! ……なのに……、どうして……僕じゃ……ないの? どうして最後の最後まで、僕を愛してくれないんだよ。


 雪村さんの中に永井くんが入っていく。


 認めたくなかった。嫌だ、嫌だ、嫌だ……、って。僕を抱いて永井くんって、気が狂ったような叫び声が漏れ出た。

 何を叫んだのか自分でも分からなかった。


 だけど──。


 この絶望を切り裂く機械音が、突如けたたましく部屋に響き渡った。
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