二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

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第十章:地獄の時間

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 雪村さんは、レイプされてしまった。僕のように無理やりその体を開かされたのだ。

 こんな仕打ちはない。これがパーティーを抜けるために必ず通らなければいけない道だったのならば、僕は……抜けるなんて言い出したりしなかったのに。こんなことになるなら、僕一人死ぬまで永井くんの家畜で良かった……っ!

 雪村さんは力の限りの抵抗を図り、嫌だ、やめろと叫んだ。だけど、身ぐるみを剥がされた彼の際どい秘部には、隠すようにキスマークつけられていたんだ。

 彼には恋人がいた──。

 僕じゃない誰かを想っていることくらい気付いていた。それが誰なのかも、正直勘付いている。夜を重ねるたびに、少しずつそれを理解して、今……確信に変わった。

 お前が付けたのかと永井くんに問われ、思わず首を振ってしまったけど、慌てて自分が付けたのだと言い直した。だけど、永井くんは僕の嘘をすぐに見抜き、このキスマークの相手は僕以外だと笑った。

 レイプされる雪村さんは、何度もその口から愛する人の名前を叫んでしまいそうになりながら、歯を食いしばり耐えた。
 僕も助けようと必死になっていたけど、羽交い絞めにされ、暴れれば暴れるだけ何度も殴られた。

 恐怖に震え、嫌悪に叫び、痛みに耐え、そして屈辱と絶望に涙する先輩。

 こんな雪村さんを見ることになるなんて……僕は、本当に軽率な判断をしてしまった。絶対に助けを求めてはいけない相手だったのに。

 僕だけが分かる、叫びそうになる恋人の名前。雪村さんはそれを何度も何度も噛み殺し、そして次第に、抵抗するのを……諦めた。止まらない涙を幾重も幾重も流し、譫言のように「痛い」「やめろ」「汚い」「触るな」と訴える。パーティーメンバー達から浴びせられる侮辱的な言葉の数々を、唇を噛み締めて耐える。

 その横で、僕は指一本先輩に触れられないままいいように弄ばれた。先輩に触れるなって、もうやめてくれって、何度も……声が掠れるくらい何度も頼んだけど、殴られ、蹴られ、あまつさえ犯され、調教されている体は先輩の体なんかよりよほど感度良く反応を返してしまう。
 感じたくなんかないのに。声なんか出したくないのに。イキたくなんか……ないのに。

 先輩は声を押し殺し、僕から顔を背け、そして小さく「ごめん」と謝る。こんな時ですら優しい先輩に涙が止まらなくて、ここにいる全員、殺してやるって思った。

 ソファにふんぞり返り、犯される雪村さんを楽しそうに見下ろす永井くんは、相変わらず自ら手を下すことはなく、他人に指示して好き放題やらせている。することと言えば、暴れる雪村さんを足蹴にし、大人しくさせることくらいだ。

 永井くんは誰にも触れない。僕にも、雪村さんにも。
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