二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

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第十章:地獄の時間

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 入れ替わり立ち代わり回され続けた。おかしな薬を盛られ意識が朦朧とする中、尚、決して屈していけないと自分に言い聞かせる。
 上手く回らない頭の中でただひたすらに「雪村さんが助けに来てくれる」とリピートし続け、彼さえ来てくれたらこの地獄から解放されるのだと疑わなかった。根拠なんて一つもない。ただ、雪村さんさえ来てくれれば、何もかもが綺麗に解決して終わる気がしていた。

 そんな雪村さんがやってきたのは、永井くん達が部屋に押し入って来てから約三時間後のことだった。

 一度鳴った玄関チャイム。だけど、インターホンには誰の姿もなかったらしく、確認しに行った木村くんが首を傾げて戻ってきた。

「誰も居ませんよ?」

 雪村さんだ! 
 僕だけはそれを理解した。これでようやく助かるのだと。

 だけど、このチャイムの主が雪村さんだということに気付いているのは、どうやら僕だけではないようだった。

「ほっとけ」

 永井くんがそう返事する。飲みかけのビールを一気に飲み干し、彼はまるで精神統一でもするかのようにゆっくりと瞼を閉じた。その様子は、明らかにこれからやってくるであろう雪村さんとの全面対決に備えるような態度に見て取れて、僕の血の気は一気に引いた。

 助けを呼んだことが、バレている。

 元々薬のせいで碌に回っていなかった思考がぷつりと一度断線したが、とんでもないスピードで繋がり猛烈に動き出した。

 まずい。この部屋こ こに雪村さんを呼んだのは、人生最大のミスだ──!

 パーティーの規約規約違反どころの話じゃない。絶対に関わらせてはいけない雪村さんタブーをこの場に呼んだとなれば、例え雪村さんがパーティーの存在を知らなかったとしても、極刑に値する行為だ!!

 やばい……、永井くんじゃなく、佐久間さんに殺される!

 完全に狼狽え、このまま玄関の扉が開けられないまま朝になってくれと祈った。だけどその願い虚しく、チャイムから五分、十分過ぎた頃、いつかに渡しておいた合鍵で施錠を外した雪村さんが、靴も脱がずに部屋へと駆けこんできた。

「三木!」

 終わ……った。
 助けを求めたのは、僕で間違いない。だけど、西くん以上に今、この場に居てはいけない人が来てしまった。

 雪村さんの登場に、永井くん以外のメンバーは驚き、慄き、大慌てで脱ぎ散らかしていた自分の服を手に取ると、それで体を簡単に隠して窓際へと逃げた。

 確かに雪村さんはこの場に居てはいけない人だけど、姿を現しただけでこの状態だ。僕を抱いていた飯尾くんも、僕にしゃぶらせていた赤松くんも、アルコールを飲んでいたエッグ達も、全員背筋を正して整列している。

 さすがすぎる。もしかして……、本当に助かるかもしれない。
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