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第九章:葛藤と加護と脅威
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でも西くんが心配するような関係にはどうしたってなれない。いくら小形くんがイケメンだろうが、西くんより優しかろうが、小形くんとはほぼ仕事の話しかしてない。そりゃもちろんそれ以外の話もするし、女の子の話もするんだけど、小形くんのノンケ具合が半端なさ過ぎて、わずかな綻びさえも見つけ出せない。カトゥンと同じ。小形くんは完全なるノンケだ。「お前彼女いんの?」と何回聞かれただろうか。それに何度「いないよ」と答えたか分からない。だけど、どうやら物凄く疑っている。
つまり、バレていると言えばバレているということだ。僕には西くんがいる。決して本命の恋人ではないけど、僕からしてみれば西くんが大本命で、その西くんとキスもエッチも、デートもお泊りもしているのだから。
この西くんのために、僕は今必死に逃げている。いや……西くんのためじゃない。自分のためだ。胸張って、西くんを好きだって言える自分になりたいから。傍に置いてって言える自分になりたいから。
「なぁ、お前いつエッチした?」
個室で焼き肉を焼きながら、小形くんが聞いてくる。一緒にご飯を食べる時、仕事の話がひと通り終わると大体この話だ。欲求不満が爆発寸前と見える。
「ん~……、先週?」
大体僕の返事もこんな感じだ。
「くそぉぉ! でもお前それ彼女じゃないんだろ?」
「違うね」
「なんでだよ! どうなってんだよ! 俺にも回せよ!」
「どうしようかな~」
とりとめもない会話だと思う。盗聴器仕込まれてたら、週刊誌が面白がってすっぱ抜くやつだ。
「なぁなぁ、一体どこでそんな女引っ掛けてくんだよ? クラブ? 何? どこ? どこに行けばいいの?」
「相当溜まってるよね、小形くん」
「うっせぇな! いいから教えろよ」
でも教えられるわけがない。まさかその相手が雪村涼だなんて。西克己だなんて。言えるわけないじゃん。
「だ~め。うちのエースをその辺のアバズレに渡すわけにはいかないから」
「お~めぇ、独り占めしたいだけだろうが!」
「あははは!」
今はこの二人だけ。パーティーの依頼を断り続けて、約三か月。西くんが好きで、西くんしか頭にないのに、雪村さんとするエッチのせいで、僕は今、潰れそうなほどの罪悪感を背負っている。
西くんと体を重ねるたびに、雪村さんとのエッチを思い出し、辛くなる。僕には西くんだけなのに……その為に依頼を断り続けているのに、結果、雪村さんとエッチしてる。彼だけは、切っちゃいけないから……、どうしても。
雪村さんがどういうつもりで僕の部屋にやってくるのかは分からない。もちろん、相談に乗ってくれとお願いした僕のためなんだろうけど、ホントはエッチしたいからなのかな?と思ってしまうのは仕方のないことで、月に二~三度の逢瀬……、僕はちゃんとその準備を整えておく。「今日はやらせてくんねぇのかよ」ってつまんないことで不機嫌になられても困るから。僕は人の機嫌の取り方を知らない。快楽に溺れさせて満足させる方法しか知らないから。だから、雪村さんが僕を可愛がってくれる間は、僕はどんなことだってする。この体が壊れるまで、雪村さんの好きにさせる。その覚悟はある。
だけど、その覚悟に反して、西くんとエッチをする時の罪悪感は、押しつぶされそうなほど重いんだ。泣いてしまいそうなくらい、辛い。
つまり、バレていると言えばバレているということだ。僕には西くんがいる。決して本命の恋人ではないけど、僕からしてみれば西くんが大本命で、その西くんとキスもエッチも、デートもお泊りもしているのだから。
この西くんのために、僕は今必死に逃げている。いや……西くんのためじゃない。自分のためだ。胸張って、西くんを好きだって言える自分になりたいから。傍に置いてって言える自分になりたいから。
「なぁ、お前いつエッチした?」
個室で焼き肉を焼きながら、小形くんが聞いてくる。一緒にご飯を食べる時、仕事の話がひと通り終わると大体この話だ。欲求不満が爆発寸前と見える。
「ん~……、先週?」
大体僕の返事もこんな感じだ。
「くそぉぉ! でもお前それ彼女じゃないんだろ?」
「違うね」
「なんでだよ! どうなってんだよ! 俺にも回せよ!」
「どうしようかな~」
とりとめもない会話だと思う。盗聴器仕込まれてたら、週刊誌が面白がってすっぱ抜くやつだ。
「なぁなぁ、一体どこでそんな女引っ掛けてくんだよ? クラブ? 何? どこ? どこに行けばいいの?」
「相当溜まってるよね、小形くん」
「うっせぇな! いいから教えろよ」
でも教えられるわけがない。まさかその相手が雪村涼だなんて。西克己だなんて。言えるわけないじゃん。
「だ~め。うちのエースをその辺のアバズレに渡すわけにはいかないから」
「お~めぇ、独り占めしたいだけだろうが!」
「あははは!」
今はこの二人だけ。パーティーの依頼を断り続けて、約三か月。西くんが好きで、西くんしか頭にないのに、雪村さんとするエッチのせいで、僕は今、潰れそうなほどの罪悪感を背負っている。
西くんと体を重ねるたびに、雪村さんとのエッチを思い出し、辛くなる。僕には西くんだけなのに……その為に依頼を断り続けているのに、結果、雪村さんとエッチしてる。彼だけは、切っちゃいけないから……、どうしても。
雪村さんがどういうつもりで僕の部屋にやってくるのかは分からない。もちろん、相談に乗ってくれとお願いした僕のためなんだろうけど、ホントはエッチしたいからなのかな?と思ってしまうのは仕方のないことで、月に二~三度の逢瀬……、僕はちゃんとその準備を整えておく。「今日はやらせてくんねぇのかよ」ってつまんないことで不機嫌になられても困るから。僕は人の機嫌の取り方を知らない。快楽に溺れさせて満足させる方法しか知らないから。だから、雪村さんが僕を可愛がってくれる間は、僕はどんなことだってする。この体が壊れるまで、雪村さんの好きにさせる。その覚悟はある。
だけど、その覚悟に反して、西くんとエッチをする時の罪悪感は、押しつぶされそうなほど重いんだ。泣いてしまいそうなくらい、辛い。
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