二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

2wei

文字の大きさ
上 下
67 / 198
第九章:葛藤と加護と脅威

しおりを挟む
 永井くんが疑いの眼差しで僕を見る。しかし、返答する前に、僕を捕獲したパーティーメンバーが先に答えた。

「トイレです。たぶん腹でも壊してんじゃないですか? こいつだけさっさと出てきましたし」

 ナイスだ。僕の味方でもないくせにナイスなフォローを入れてくれるじゃないか。
 僕はそれに便乗するようにコクコク頷く。

「そう、気分が悪いって言うから」

 けど、永井くんはまだ納得いかなそうに首を傾げ、両隣に居るNIAのメンバーに目配せをした。

「悪いが信用は出来ない。大人しくパーティーに戻ってくるか、カップルを潰すかしろ。じゃなきゃお前の疑いは一生晴れない。逃げられると思うなよ?」

 ヒタヒタとグラスで頬を叩かれる。

 僕はやっぱりパーティーから……永井くんから逃げられないのか? 一生、このままなんだろうか。好きでもない男と体を重ねて、永井くんに怯えながら生きていかなきゃいけないのかな?

 誰か……助けて。

「さぁ、いい子だから俺のところに戻っておいで。今なら全部許してやる」

 そう言ってぐっと腕を掴まれた。

 それは僕の腕を潰すほどの力だった。痛みで眉が寄る。けど、逆らえばこんな痛みじゃ足りないほどの仕置きをされるだろう。

「そうだなぁ……どうだ、俺の部屋に住むか? 押し入れくらいなら一室用意してやるよ」

 冗談なのだろうけど、全然笑えない。けどパーティーメンバーはおかしそうに笑った。バカじゃないか?

「なぁ、そうしよう? 決めたよ。飯くらい食わせてやるから。な?」

 その飯だって、ろくなもんじゃないだろ、どうせ。僕は家畜以下にしか扱われないに決まってる。絶対にそうだ。

 痛いほどに掴まれている腕。出会った頃の永井くんはこんなんじゃなかったのに。もっと優しくて、もっと僕のこと優しく見つめてくれていたのに……! なんで……どうして。いつからこんな冷たい男になったんだよ。何が永井くんをこんな風にしちゃったんだよ!

 込み上げてくる涙は、恐怖や惨めさからじゃない。永井くんが変わってしまったから。それがとても……悲しいから。

「さぁ、返事をするんだ、颯……、っ!?」

 言葉の最中。永井くんの肩を誰かが引っ張り、現場はハッとしてその人物に視線を送った。

 注目の集まった永井くんの背後。そこに居たのは、鋭い瞳をした雪村さんだった。
 そっと解放された僕の腕。……やはり雪村さんはすごい。

「悪いな、永井。ちょっと三木と話があんだよ。貸してくんね?」

 雪村さんの申し出に、永井くんは逃げ切れると思うなよと釘をさすような瞳で僕を睨みつけた。その後で、僕の背中をぐっと雪村さんの方へと押しやる。

「どうぞ」

 その力の強さによろめいたが雪村さんが瞬時に受け止め、そっと僕を背中へと隠してくれた。

「どうも」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...