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第八章:カウントダウンコンサート
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けど、これだけ注目されれば、永井くん達も逆に手を出しにくいだろう。ただでさえ一緒にいるのは雪村さんだし。雪村さんは何故僕らが注目を集めているのかどこか不思議そうにしていたけど、執拗に聞かれたのは、こういう状況は “優越” なのかということ。
優越……がゼロとはとても言い難い。やっぱり一般的には優越だろうと思う。けど今の僕にそれは当てはまらない。優越というか素直に助けて欲しいだけだ。誰一人逆らえない雪村さんの、その存在を隣に置いておきたいだけ。一緒に会場を出てくれるだけでいい。その後はなんとか走って逃げるから。
どうにかして連れ出してくれと願う。祈る。だけどここで大っぴらに誘い出すような真似は出来ない。どうにか自然な流れで宴会場の外に出られないものか。
そう思っていたら、突然雪村さんが会話の途中で会場をふと見渡し、僕らの背後にいる永井くんでその視線を止めた。ドキっとしないわけはなくて、思っている以上に永井くんが僕らに近付いていた事をここで初めて知った。永井くんの隣には赤松くんと、supernovaの木村くんが居る。同じパーティーのメンバーだ。
雪村さんがこの大衆の中から永井くんにピンポイントで視線を合わせたのは、やっぱりパーティーを知っているが故だろう。じゃなかったら、まさか永井くんに気付くわけがない。こんなに大勢の人間が居るのだから。
僕が永井くんのパーティーメンバーだと、雪村さんは知っているんだ。知っていて僕に手を出してきた。半信半疑だったけどこれで確実になった。この人は、一体誰からパーティーのことを聞き出したんだろうか。
これは……佐久間さんが黙っていないぞ。ヤバイことになった。一緒に居るところをこれだけの人間に見られている。僕らの関係が疑われれば、永井くんどころの話じゃない。佐久間さんに目を付けられる。それは……本気でアイドル生命を脅かされることに直結する。
まずい……本当にまずい。
「三木」
突然名前を呼ばれ、「はいっ!」と咄嗟に返事した声はちょっと上ずった。
だけど、この後に言われた言葉は俄かに信じがたいものだったのだ。
「お前だけだよ、俺の体知ってる男は」
何を言ってるのか正直分からなくて、そんなわけないだろうって声を荒げてしまいそうになった。それくらい衝撃的な言葉だった。
困惑する僕に、雪村さんは「嬉しくないのか?」と聞き、「早くお前と二人きりになりたかった」と誘うような瞳を向けて来た。その強烈に整った顔に、思わず赤面してしまったけど、ちょ……っと待って? この人は嘘をついてる。明らかなる嘘だ。
だけどこの誘いに乗れば、会場を抜け出せる確率がぐっと上がる。ここは、この誘いに乗るという選択肢しかない。
「やめてください、先輩」
志雄らしい後輩ぶってもじもじ返事をすると、案の定先輩は「出ようか」と席を立った。
けどこれは、どちらも騙し合いだったんだ。
優越……がゼロとはとても言い難い。やっぱり一般的には優越だろうと思う。けど今の僕にそれは当てはまらない。優越というか素直に助けて欲しいだけだ。誰一人逆らえない雪村さんの、その存在を隣に置いておきたいだけ。一緒に会場を出てくれるだけでいい。その後はなんとか走って逃げるから。
どうにかして連れ出してくれと願う。祈る。だけどここで大っぴらに誘い出すような真似は出来ない。どうにか自然な流れで宴会場の外に出られないものか。
そう思っていたら、突然雪村さんが会話の途中で会場をふと見渡し、僕らの背後にいる永井くんでその視線を止めた。ドキっとしないわけはなくて、思っている以上に永井くんが僕らに近付いていた事をここで初めて知った。永井くんの隣には赤松くんと、supernovaの木村くんが居る。同じパーティーのメンバーだ。
雪村さんがこの大衆の中から永井くんにピンポイントで視線を合わせたのは、やっぱりパーティーを知っているが故だろう。じゃなかったら、まさか永井くんに気付くわけがない。こんなに大勢の人間が居るのだから。
僕が永井くんのパーティーメンバーだと、雪村さんは知っているんだ。知っていて僕に手を出してきた。半信半疑だったけどこれで確実になった。この人は、一体誰からパーティーのことを聞き出したんだろうか。
これは……佐久間さんが黙っていないぞ。ヤバイことになった。一緒に居るところをこれだけの人間に見られている。僕らの関係が疑われれば、永井くんどころの話じゃない。佐久間さんに目を付けられる。それは……本気でアイドル生命を脅かされることに直結する。
まずい……本当にまずい。
「三木」
突然名前を呼ばれ、「はいっ!」と咄嗟に返事した声はちょっと上ずった。
だけど、この後に言われた言葉は俄かに信じがたいものだったのだ。
「お前だけだよ、俺の体知ってる男は」
何を言ってるのか正直分からなくて、そんなわけないだろうって声を荒げてしまいそうになった。それくらい衝撃的な言葉だった。
困惑する僕に、雪村さんは「嬉しくないのか?」と聞き、「早くお前と二人きりになりたかった」と誘うような瞳を向けて来た。その強烈に整った顔に、思わず赤面してしまったけど、ちょ……っと待って? この人は嘘をついてる。明らかなる嘘だ。
だけどこの誘いに乗れば、会場を抜け出せる確率がぐっと上がる。ここは、この誘いに乗るという選択肢しかない。
「やめてください、先輩」
志雄らしい後輩ぶってもじもじ返事をすると、案の定先輩は「出ようか」と席を立った。
けどこれは、どちらも騙し合いだったんだ。
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