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第七章:触れてはいけない聖域

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 この細かいメール報告が義務付けられたのは、佐久間さんがパーティーを抜けてからだ。僕は誰宛かも分からないメールアドレス宛に、今まで何百という報告メールを送った。だけどそれが本当に佐久間さんのメールアドレスなのかどうかは確かめようがない。返事は一切送られてこないし、ドメインも見たことのないものだ。一体誰が、どこでこの膨大な情報を管理しているのかさっぱり分からない。ただ、きっと佐久間さんなのだろう、と予想することしかできない。

 パーティーの人間も、そして利用者も、口を揃えて言うんだ。

『佐久間さんには逆らうな』 と。

 現在、パーティーは三つある。一つのパーティーに六~七人が所属していて、それぞれが各自で利用報告を送っている。となると、それはとんでもない情報量になる。それを佐久間さんがたった一人で管理しているとは考えにくい。つまり仲間がいるのだ。
 けど、それを特定することができない。永井くんたちはたまに僕抜きで小難しい話をしているけど、その時によく出て来る言葉は「初期パーティー」というワード。それはきっと佐久間さんが居たパーティーのことなのだろうけど、その全容は永井くんですら良く分かっていないようだった。交わされていた話の詳しい内容までは分からないけど、「辻褄が合わない」とか「絶対に何かを隠している」とか、そんな話をしていたのを、ベッドの上でぼんやり聞いていた記憶だ。

 初期パーティーとはなんなのか……、僕は何も知らない。ただ、刷り込むように教えられているのは、「佐久間さんには絶対に逆らうな」ということと、「雪村涼には手を出すな」ということ。手を出してはいけないその理由は「佐久間さんのお気に入りだから」ということだ。
 つまり、パーティーはやっぱり佐久間さんを中心に動いている。

 すべて、佐久間さん。

 佐久間さんを怒らせたら、パーティーどころか事務所から追い出される可能性がある。永井くんは「まさかそんなことはあり得ない」と言うけど、この噂は実しやかにパーティー関係者達に広まっていた。

 そう……。
 だから今、冷静になって感じるのは “恐怖” だ。

『雪村涼に手を出したらどうなると思う?』

 冗談で赤松くんが聞いた。飯尾くんが「殴られて終わりだろ」と笑ったけど、赤松くんは「どうせならレイプして、あのエベレストのプライドをめちゃくちゃに潰してやりたい」と笑った。
 悪趣味な話をしていると思ったけど、飯尾くんも永井くんもそれに笑った。笑って、雪村さんを組み敷けるつわものが居たら、金を積んででもそのショーを見てみたいと言った。

 僕は今……、決して雪村さんを組み敷いたわけではないんだけど、禁断の関係を持ってしまった。

『けどいいか。冗談でも雪村には手を出すなよ? まだ尻尾を掴んでないんだ』

 なんの尻尾かは分からない。だけど、永井くんはそう言って赤松くんを止めていたんだ。

 僕は今……。僕は……、どうなってしまうんだ?
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