50 / 198
第七章:触れてはいけない聖域
4
しおりを挟む
「いえ……、まだ、です」
訝しげに答えてしまった。失礼な態度だったかもしれない。だけど雪村さんは少しも気にした様子を見せないまま、にこりとも笑わずに言った。
「一緒にどうだ? どうせまだ部屋散らかったままだろ?」
まさかのお誘いだった。
神様はきっといる。そして僕をちゃんと見てくれている。
そう思った。
部屋に転がり込み、雪村さんのご好意で手作りハンバーグを頂いた。絶品すぎる仕上がりに目も舌も疑った。料理をするとは聞いていたけど、まさかここまでとは思っていなかった。神谷くんが言うように ”完璧” すぎる。この人、人間じゃない。一つや二つ欠点があったっていいのに、まさか生活力まであるなんてスペック高すぎるだろ!
部屋も綺麗に整頓されているし、何故一分ほど極寒の廊下で待たされたのか分からないほどだ。ここまで綺麗なら、すぐ玄関開けられただろうに。あぁ、だけどもしかして着替えていたのかもしれないな。雪村さんほどにもなると家ではバスローブで過ごしているかもしれない。……考えすぎか?
部屋を見渡すと、数年前に亡くなったお母様の仏壇がリビングの棚の上にこじんまりと置かれている。いつか神谷くんが言っていたな。一緒にお母様のお花を選んだって。供えられているお花は生き生きとしていてとても綺麗だ。キッチンの中も無駄なものがなくてきちんと整頓されている。意外なことと言えば、コタツがあること。僕は今、そのコタツに座らされている。
ダイニングテーブルはなくコタツ。かなり庶民的だ。小さな正方形のコタツで、向かい合わせに座る。絶品のハンバーグとバターロール。今日はご飯を炊いてなくて、と謝る雪村さんがとても新鮮だった。
噂に聞く雪村涼がいる。
”彼はオフスタイルが緩い”
エッグ時代から実しやかに噂されていた。棘のない丸い雪村涼。力を抜き、良く笑い、決して怒らない雪村涼。そんな彼が、今目の前にいる。
ハンバーグを食べる僕を眠そうな瞳で見つめ、目が合うと優しい微笑を大盤振る舞いしてくれる。
ヤバイ……、かっこよすぎて、死ぬ。
こんなに笑顔を振りまく特大サービス、仕事の現場では絶っっ対にあり得ない。雪村さんに見惚れてぼやっとしていようものなら、「真面目に仕事しろ」と本気で怒られそうなのに、今僕がどれだけ見惚れていようとも、「ん?」と可愛らしく首を傾げてくるだけだ。
今まで仕事の現場でしか会ったことのない雪村さんだったけど、オフ時……、どんだけ緩いんだよっ! こんなの反則だ!
しかも一番意外だったのが、未成年の僕にアルコールを勧めてきたことだった。
「ビール飲む?」と尋ねられ、未成年だと断った僕に、「一本だけ付き合えよ」と言ってきた。意外過ぎて驚いた。
だって彼は正義の塊みたいな人だ。ルール違反なんてもっての他で、秩序を乱す者が居ようものなら本気で現場からつまみ出してしまう人。そんな人が未成年の僕にアルコールを勧めるなんて俄かに信じられない。彼のオフが如何に緩く、如何に自由なのかを思い知らされた瞬間だった。
訝しげに答えてしまった。失礼な態度だったかもしれない。だけど雪村さんは少しも気にした様子を見せないまま、にこりとも笑わずに言った。
「一緒にどうだ? どうせまだ部屋散らかったままだろ?」
まさかのお誘いだった。
神様はきっといる。そして僕をちゃんと見てくれている。
そう思った。
部屋に転がり込み、雪村さんのご好意で手作りハンバーグを頂いた。絶品すぎる仕上がりに目も舌も疑った。料理をするとは聞いていたけど、まさかここまでとは思っていなかった。神谷くんが言うように ”完璧” すぎる。この人、人間じゃない。一つや二つ欠点があったっていいのに、まさか生活力まであるなんてスペック高すぎるだろ!
部屋も綺麗に整頓されているし、何故一分ほど極寒の廊下で待たされたのか分からないほどだ。ここまで綺麗なら、すぐ玄関開けられただろうに。あぁ、だけどもしかして着替えていたのかもしれないな。雪村さんほどにもなると家ではバスローブで過ごしているかもしれない。……考えすぎか?
部屋を見渡すと、数年前に亡くなったお母様の仏壇がリビングの棚の上にこじんまりと置かれている。いつか神谷くんが言っていたな。一緒にお母様のお花を選んだって。供えられているお花は生き生きとしていてとても綺麗だ。キッチンの中も無駄なものがなくてきちんと整頓されている。意外なことと言えば、コタツがあること。僕は今、そのコタツに座らされている。
ダイニングテーブルはなくコタツ。かなり庶民的だ。小さな正方形のコタツで、向かい合わせに座る。絶品のハンバーグとバターロール。今日はご飯を炊いてなくて、と謝る雪村さんがとても新鮮だった。
噂に聞く雪村涼がいる。
”彼はオフスタイルが緩い”
エッグ時代から実しやかに噂されていた。棘のない丸い雪村涼。力を抜き、良く笑い、決して怒らない雪村涼。そんな彼が、今目の前にいる。
ハンバーグを食べる僕を眠そうな瞳で見つめ、目が合うと優しい微笑を大盤振る舞いしてくれる。
ヤバイ……、かっこよすぎて、死ぬ。
こんなに笑顔を振りまく特大サービス、仕事の現場では絶っっ対にあり得ない。雪村さんに見惚れてぼやっとしていようものなら、「真面目に仕事しろ」と本気で怒られそうなのに、今僕がどれだけ見惚れていようとも、「ん?」と可愛らしく首を傾げてくるだけだ。
今まで仕事の現場でしか会ったことのない雪村さんだったけど、オフ時……、どんだけ緩いんだよっ! こんなの反則だ!
しかも一番意外だったのが、未成年の僕にアルコールを勧めてきたことだった。
「ビール飲む?」と尋ねられ、未成年だと断った僕に、「一本だけ付き合えよ」と言ってきた。意外過ぎて驚いた。
だって彼は正義の塊みたいな人だ。ルール違反なんてもっての他で、秩序を乱す者が居ようものなら本気で現場からつまみ出してしまう人。そんな人が未成年の僕にアルコールを勧めるなんて俄かに信じられない。彼のオフが如何に緩く、如何に自由なのかを思い知らされた瞬間だった。
10
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説




いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる