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第六章:パーティーを抜けたい
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* * * * *
「颯太」
ツアー。大阪初日。
「今夜、飯。どうする?」
小形くんのソロリハを客席から皆で見てる最中、西くんから聞かれた。
「ん~、どうしようかな。ホテルで適当にルームサービス取ろうかな」
「あっそ。リーダーは?」
「そうだな。串カツでも食いに行こうかな」
「いいな。じゃ、それ俺も行く」
勝手にどうぞ、という態度でリーダーが頷く。その更に奥で、カトゥンが「俺には聞かねぇのかよ」とボヤいていたけど、西くんにはその声、届いてないみたい。端同士にいる僕にはカトゥンの声がちゃんと届いているんだけど、どうやら西くんのところで一旦、音波が途切れているっぽい。仕方ないか、西くんだもんね。
「二人で行こうぜ、リーダー」
「あぁ。よく道に迷うから、一緒に来てくれると助かる」
リーダーが案外方向音痴だということをさらっと知ったところで、カトゥンがまた割り込んでくる。
「ぶはっ。西のやつ、ただのナビ扱い。リーダー、一緒に飯は食わない方がいいぜ。不味くなるから」
「なんだ、お前も来たいのか? 一緒にどうだ、カトゥン」
鈍感なわけではない。リーダーなりの冗談だ。
「ごめんなさーーーい! Nさんがいるんで~ぇ、遠慮しときま~す」
「そもそもお呼びでねぇわ。一人でホテル戻ってクソして寝てろ」
「優しさ~。お前の部屋にクソだけ残しといてやらぁ。颯太。一緒にホテルの最上階レストランで夜景でも見ながら高級フレンチ食おうぜ」
誘われたけど、苦笑いだけ返しておいた。すると、ぐっと西くんに肩を引き寄せられる。
「颯太も串カツ食え。あんな奴と夜景を見る価値はない」
ん?と、きっと僕以外も思ったに違いない。
夜景? ディナーじゃなくて、夜景の方なの?
けどすぐに思い出した。僕……、夜景を見るならカトゥンと見たいって言ったことがある。
「……そう、だね」
「ぅおぉい! バッサリかよ、颯太! ひでぇ! 俺傷ついちゃった~! ちょ、リーダー。リーダーはそんな事言わねぇよな!?」
「……どうかな。別段、お前と夜景を見たいとは思わないが」
「見て! 一緒に見て! なんで皆そんな冷てぇのよ! あいつなら絶対俺と一緒に夜景見てくれんのに!」
そう言ってステージに立つ親友の小形くんを指さした。それに気付いた小形くんが、こちらの会話など何も知らないのに、「うんうん!」と何故か楽しそうに頷くものだから、「そらみろーー!!」とカトゥンは一人で発狂していた。
元気いっぱいだ。僕は今、全然そんな陽気な気分にはなれないんだけど。
「颯太」
ツアー。大阪初日。
「今夜、飯。どうする?」
小形くんのソロリハを客席から皆で見てる最中、西くんから聞かれた。
「ん~、どうしようかな。ホテルで適当にルームサービス取ろうかな」
「あっそ。リーダーは?」
「そうだな。串カツでも食いに行こうかな」
「いいな。じゃ、それ俺も行く」
勝手にどうぞ、という態度でリーダーが頷く。その更に奥で、カトゥンが「俺には聞かねぇのかよ」とボヤいていたけど、西くんにはその声、届いてないみたい。端同士にいる僕にはカトゥンの声がちゃんと届いているんだけど、どうやら西くんのところで一旦、音波が途切れているっぽい。仕方ないか、西くんだもんね。
「二人で行こうぜ、リーダー」
「あぁ。よく道に迷うから、一緒に来てくれると助かる」
リーダーが案外方向音痴だということをさらっと知ったところで、カトゥンがまた割り込んでくる。
「ぶはっ。西のやつ、ただのナビ扱い。リーダー、一緒に飯は食わない方がいいぜ。不味くなるから」
「なんだ、お前も来たいのか? 一緒にどうだ、カトゥン」
鈍感なわけではない。リーダーなりの冗談だ。
「ごめんなさーーーい! Nさんがいるんで~ぇ、遠慮しときま~す」
「そもそもお呼びでねぇわ。一人でホテル戻ってクソして寝てろ」
「優しさ~。お前の部屋にクソだけ残しといてやらぁ。颯太。一緒にホテルの最上階レストランで夜景でも見ながら高級フレンチ食おうぜ」
誘われたけど、苦笑いだけ返しておいた。すると、ぐっと西くんに肩を引き寄せられる。
「颯太も串カツ食え。あんな奴と夜景を見る価値はない」
ん?と、きっと僕以外も思ったに違いない。
夜景? ディナーじゃなくて、夜景の方なの?
けどすぐに思い出した。僕……、夜景を見るならカトゥンと見たいって言ったことがある。
「……そう、だね」
「ぅおぉい! バッサリかよ、颯太! ひでぇ! 俺傷ついちゃった~! ちょ、リーダー。リーダーはそんな事言わねぇよな!?」
「……どうかな。別段、お前と夜景を見たいとは思わないが」
「見て! 一緒に見て! なんで皆そんな冷てぇのよ! あいつなら絶対俺と一緒に夜景見てくれんのに!」
そう言ってステージに立つ親友の小形くんを指さした。それに気付いた小形くんが、こちらの会話など何も知らないのに、「うんうん!」と何故か楽しそうに頷くものだから、「そらみろーー!!」とカトゥンは一人で発狂していた。
元気いっぱいだ。僕は今、全然そんな陽気な気分にはなれないんだけど。
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