二番目の恋人 ~僕の恋はいつだって一番になれない~

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第三章:新規依頼者

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 パーティーからは結果的にまた連絡が来た。依頼だ、という業務的な連絡。あのまま抜けられたのだとしたら、本当はそっちの方が良かったのだろうとは思う。けど、うちのパーティーにはディッシュが僕しかいない。だから切り捨てられなかったんだろう。僕はまたパーティーの依頼を受けるようになった。

 codeとしてデビューした僕に、パーティーメンバーはかなり冷ややかな眼差しを向けて来たが、仕事に支障をきたすような荒い真似は絶対にしなかった。それがありがたいような、逆に見捨てられたような……複雑な思いだった。

 デビューして一年。パーティーメンバーは一度も僕を抱かなかった。パーティーが ”パーティー” をしなかったのだ。
 僕はただただ依頼をこなすだけ。そんな毎日に、僕はそのうち永井くんに捨てられるんだろうと薄っすらぼんやり覚悟を決めていた。いつか新しいディッシュが入ってきて、あっさりぽい捨てされるんだ……って。

 永井くんの体を……僕はもう思い出せない。
 どんな顔をするんだったかな、どんな声を出すんだったかな、どんな風に抱いてくれていたっけ?

 それがもう、すっきりと思い出せないんだ。
 違う男と寝過ぎている。

 そんな中、僕にまた依頼が入った。

『新規 神谷悠』

 簡潔なメールだった。
 時間と場所。彼の連絡先が記載されている。

 神谷悠。code僕らより一年早くデビューしている彼は確か……ノンケリストに入っていた記憶。僕の記憶違いだったろうか。

 この時の僕は、そんな疑問を抱いた程度で、この出会いを特別意識なんかしていなかった。だけど――。

「あぁ、え、と……はじめ……まして?」

 首に手を添え、どういう挨拶をしていいのか分からない神谷くんが、決して初めましてじゃないのに、そんなおかしな挨拶を寄越してきた。

「はぁ」

 だから僕も良く分からず、顎だけで小さく会釈を返した。

 高校に入学してから僕は都内に一室部屋を借りた。パーティーの依頼を受ける為だけの部屋だ。もちろん神谷くんも例外なくその部屋に呼んでいる。

「え……っと」
「入ってください。シャワー先に浴びますか?」

 僕は既に準備万端だ。
 玄関のカギを締め直して問うと、彼は初々しく恥じらって、「どうしようかな」と小さく呟いた。そしてまるで話を逸らすように、手に持っていたショッピングバッグを僕に見せた。

「ごはん……食べる?」

 こいつは何をしにここまで来たんだ。
 意味が分からな過ぎて、僕は首を振った。

「いえ、いいです」

 断ると神谷くんは眉を垂れ、「そっか」としょんぼり俯き、廊下にあるキッチンへ買い物袋を置いた。

「じゃあ、テレビ見ようか。今日は雪村さんのドラマがある日だ」

 何を言ってるんだ?
 確かに、この神谷悠という男は自他共に認める雪村ファンで有名だ。雪村さんを好きな事務所のタレントは腐るほどいるけど、彼はその中でも特に熱狂的。世間ですらもそれを知っているくらいだから。

「どうせ自宅で録画してるんでしょう? いいから早くやりましょう」

 僕より早くデビューしているけど、彼は西くんと同期。つまり僕より後輩になる。本人もそれを知っているからか、あまり強気に攻めてこない。けどそういうのどうでもいいから。僕はさっさとやって、さっさと終わらせたいんだ。

「それで、シャワー浴びるんですか?」

 風呂場のドアの前で待機しながらキッチンに立つ神谷くんを見つめると、彼は困った様子で「はい…」と小さく返事した。
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