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第一章:絶望の甘い檻

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 胸の真ん中にグーパン入れられたみたいな衝撃だった。だって名前を知られているなんて、正直期待していなかったんだ。さっさとトップスター達の仲間入りをした西くんがうだつの上がらない僕なんかの名前、普通に考えて知っているわけはない。

 だけど暫く、気付いた。
 あぁ、西くんはこっち側の人間なんだなって。

 事務所のタレントは大体どちらかに別れていて、パーティーをまったく知らないノンケと、どっぷりハマっている人間。だけど稀に知っているけど手を出して来ない人間というのもいるみたいだ。僕はそれがまだ誰かは特定できていないけど。

「へぇ……知ってるんですね、僕のこと」
「高級食材ですからね、今や」

 慣れていないだろう敬語で西くんは嫌味ったらしくそう言った。

「バカにしてんの?」

 西くんは乾いた笑いを小さく漏らして立ち上がると、僕の腕を痛いほど掴んだ。

「一五〇円分のご奉仕でもしてやろうか?」

 振りかざした平手打ち。でも直前で手首を取られた。

 そして一五〇円分のキスをされた――。

「永井に怒られるな」

 西くんはニヤニヤ笑いながら、僕の後ろ髪をぐっと引っ張って更に上を向くように促した.。
 切れ長のシャープな瞳はどこか嬉しそうに弧を描いていて、いたずらに成功した後みたいな顔をしている。

「俺、永井嫌いなんだよ。なぁ、あいつに内緒でやらせてくんねぇの?」

 バカな要求をされた。これはパーティーの規約違反になる。ディッシュもシルバーもリーダーの所有物に匹敵しているから。

「ねぇ、三木先輩?」

 ねっとりと嫌味っぽく名を呼ばれ、僕は咄嗟に顔を背けて彼の手から逃げようとするけど、それは叶わなかった。

「はな……! 永井くんに言うよ!?」
「ふ~ん。言えば? 色仕掛けられたのは俺の方だって言ってやる」
「ふざ…っけんなよ!」

 西くんはおかしそうに笑い、再び強引にキスを寄越すと、そのまま力づくでトランポカーが並ぶ駐車場に僕を引きずりおろし、無理やりこの体を開いた。

 いくら車の陰に隠れたって駐車場では嫌でも音が響く。だけどこの時間帯は駐車場に誰もいない。誰も助けちゃくれない。でも、正直……僕はもうこんなの慣れている。レイプされることに慣れているんじゃなくて、男とまぐわうことに慣れている。恐怖なんていう感情もコトが始まれば忘れてしまう。もう僕の体は完全に汚れてしまっているんだ。

 それでも驚いたのは、西くんが生で挿入したこと。汚い、危ない、と訴えたけど、だったら片時も離さずゴムを持ち歩けと意味のわからない説教をされた。
 なんで僕が西くんなんかのためにゴムを持ち歩かなきゃいけないんだと悪態をつくも、それだって長くは続けられなくて、本当に生で入れられると、そのまま中で出された。中出しが初めてってわけでもなかったけど、体の中に放たれた熱に僕はどこか酔いしれてしまった。

 あの奇人西克己をイかせたのだから。

「さっすが、高級食材」

 西くんは嫌味に笑い僕を跪かせると、綺麗にしろと自身のそれを突き出した。

 嫌なはずなんだ。けど調教されている僕はこんな最低な男の指示にすら従うしか出来ない。それがたまらなく情けなかった。

「たまんねぇ……、三木先輩」
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