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バレンタイン
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「面白いな! ちなみに秋はウィスキーだった」
スイーツを前にすると、蘭真は本当に楽しそうだ。作ってる時よりも食べている時の方が幸せそうで、見ているこちらまで幸せになる。そんなことを言ったら、食い意地張ってるみたいに言うな!って怒られそうだけど、それでもやっぱり食べてる時の蘭真は幸せそう。
チョコを二人でペロッと平らげ、蘭真は幸せそうに「美味かった」と笑うと、スタッフ達に振る舞った生チョコのバットを引き寄せた。
「じゃあ、俺から嵐へのバレンタイン。今年はパフェにしようかな」
そう言ってグラス型のデザートカップを取り出すと、見ている間にポリューミーなチョコレートパフェを仕上げた。
「ちょっと待って。パフェってそんな簡単に出来るものなの?」
「え? パフェって三分もかからないけど?」
逆に驚かれた。
「レストランのパフェだって同じだよ? ぶっちゃけ、素人でも作れるし」
最後に生チョコを二粒載せた蘭真は「美味そうじゃん。俺の分も作ろうかな」と呟き、結局同じものをもう一つ作っていた。
蘭真の手際もいいのだろうけど、ボリュームの割にはあっさりと仕上がったパフェにちょっとびっくりした。
事務所で一緒にパフェを食べ、蘭真が聞いてくるから仕方なく昼間の寺島さんとのやり取りを話した。大笑いする蘭真は、「じゃあ藁人形に見立てたお菓子を作ろうか」と無駄な労力と時間を費やそうとするから、しっかり止めておいた。
「マジパンは得意だよ」と自慢げに言われたけど、そういう問題じゃないから。アイツにそんなマジなスイーツは勿体無いからって意味だ。もっとも向こうからはマジなチョコレートを頂いてはいるんだけど。
「まぁ、いいじゃん。寺島さんなんかの話は」
話を打ち切ろうとする俺に、蘭真はやっぱり楽しそうに笑うと、 こてんと俺の肩に頭を預けた。
「じゃあ、来年は嵐のスイーツ作るよ」
「えっ! なんか恥ずかしい!」
マジパンで俺の顔でも作るつもり? それともチョコを削って俺の顔にするとか!? 恥ずかしすぎるだろ、それ!
嫌がる俺に、蘭真はまた楽しそうにお腹を抱えた。
「あっはっはっは! だよな! そうだよな! 寺島は大喜びしたけど、やっぱり普通は恥ずかしいよな!」
ちょっと待て。聞き捨てならない。
「なに? 寺島さんには作ったの?」
「え? めちゃくちゃ前の話だよ? リクエストされてね」
「寺島さんに作ったのなら俺のも作って」
ついつい対抗心を燃やしてしまう。もうこれ、癖かなにかだと思う。死ななきゃ治らない系の可能性が高い。そんな俺にまた蘭真は笑った。
「言うと思った。可愛い嵐」
押し倒されて、キスされて、強請られた。
抱いてって。
「可愛いのはどっちだよ」
覆いかぶさる蘭真の頬を両手で挟み、キスを返し、逆に押し倒した。
「いいよ。抱いてあげる」
バレンタインだからといって特別何かが違うわけじゃないけど、いつもより少しだけチョコレートの匂いが染み付いている蘭真を、美味しく戴くことにしよう。
~ Happy Valentine ~
【完】
スイーツを前にすると、蘭真は本当に楽しそうだ。作ってる時よりも食べている時の方が幸せそうで、見ているこちらまで幸せになる。そんなことを言ったら、食い意地張ってるみたいに言うな!って怒られそうだけど、それでもやっぱり食べてる時の蘭真は幸せそう。
チョコを二人でペロッと平らげ、蘭真は幸せそうに「美味かった」と笑うと、スタッフ達に振る舞った生チョコのバットを引き寄せた。
「じゃあ、俺から嵐へのバレンタイン。今年はパフェにしようかな」
そう言ってグラス型のデザートカップを取り出すと、見ている間にポリューミーなチョコレートパフェを仕上げた。
「ちょっと待って。パフェってそんな簡単に出来るものなの?」
「え? パフェって三分もかからないけど?」
逆に驚かれた。
「レストランのパフェだって同じだよ? ぶっちゃけ、素人でも作れるし」
最後に生チョコを二粒載せた蘭真は「美味そうじゃん。俺の分も作ろうかな」と呟き、結局同じものをもう一つ作っていた。
蘭真の手際もいいのだろうけど、ボリュームの割にはあっさりと仕上がったパフェにちょっとびっくりした。
事務所で一緒にパフェを食べ、蘭真が聞いてくるから仕方なく昼間の寺島さんとのやり取りを話した。大笑いする蘭真は、「じゃあ藁人形に見立てたお菓子を作ろうか」と無駄な労力と時間を費やそうとするから、しっかり止めておいた。
「マジパンは得意だよ」と自慢げに言われたけど、そういう問題じゃないから。アイツにそんなマジなスイーツは勿体無いからって意味だ。もっとも向こうからはマジなチョコレートを頂いてはいるんだけど。
「まぁ、いいじゃん。寺島さんなんかの話は」
話を打ち切ろうとする俺に、蘭真はやっぱり楽しそうに笑うと、 こてんと俺の肩に頭を預けた。
「じゃあ、来年は嵐のスイーツ作るよ」
「えっ! なんか恥ずかしい!」
マジパンで俺の顔でも作るつもり? それともチョコを削って俺の顔にするとか!? 恥ずかしすぎるだろ、それ!
嫌がる俺に、蘭真はまた楽しそうにお腹を抱えた。
「あっはっはっは! だよな! そうだよな! 寺島は大喜びしたけど、やっぱり普通は恥ずかしいよな!」
ちょっと待て。聞き捨てならない。
「なに? 寺島さんには作ったの?」
「え? めちゃくちゃ前の話だよ? リクエストされてね」
「寺島さんに作ったのなら俺のも作って」
ついつい対抗心を燃やしてしまう。もうこれ、癖かなにかだと思う。死ななきゃ治らない系の可能性が高い。そんな俺にまた蘭真は笑った。
「言うと思った。可愛い嵐」
押し倒されて、キスされて、強請られた。
抱いてって。
「可愛いのはどっちだよ」
覆いかぶさる蘭真の頬を両手で挟み、キスを返し、逆に押し倒した。
「いいよ。抱いてあげる」
バレンタインだからといって特別何かが違うわけじゃないけど、いつもより少しだけチョコレートの匂いが染み付いている蘭真を、美味しく戴くことにしよう。
~ Happy Valentine ~
【完】
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