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お正月の僕ら
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美味そうな重箱の中を覗き、綺麗な伊達巻を一つ咀嚼すると、店へと続くアーチを潜った。
「外の掃除してきます。サービスの二人はこのまま休憩入ってくれていいよ。厨房の皆さんも順に回してくださいね」
全員の返事が綺麗に揃い、その後で寺島さんの声が小さく呟いた。
「出会った頃はまだまだガキだったのにな」
その言葉にクスクス笑う蘭真の声も聞こえたけど、俺はそのまま掃除用具を手に取った。
今年で俺も25歳だ。さすがにもう子供じゃないし、子供扱いされる年齢でもない。立派とは言えないだろうけど、年齢的には立派な大人だ。
俺は、蘭真にとってどれだけ頼もしい恋人になれているだろうか。寺島さんに会う度、そんなことを考えてしまう。
「あ、そうだ。嵐」
アーチの向こうから名前を呼ばれ、俺は掃除用具を手に後ろを振り返った。
ウールのコートを来た寺島さんが、そっと内ポケットに手を入れる。嫌な予感しかしない。案の定、おもむろに取り出されたのは仮面ライダーのポチ袋。俺は掃除用具をその場に置いてツカツカと厨房に戻った。
「おい! あんた、またか!」
「え? なになに? あけましておめでとう♡ お年玉だよ、嵐」
「いらねぇっつってんだろ!」
毎年毎年毎年毎年……っ、懲りもせずにお年玉! 俺をいつまでガキ扱いするつもりだ! 今しがたもう立派な大人だと自他共に認めたところじゃないのか!? というか大体にして袋から俺をバカにしてる! なんで毎年絶対に仮面ライダーなんだよ!
「なんだよ~。欲しいだろ? お年玉。貰えるものはもらっとけよ~」
「俺は今年で25歳だぞ!? 25歳! お年玉なんかいらねぇよ!」
「でもお前、俺より13歳も年下だし」
それが理由!? その理由が通用するなら、あんた死ぬまで俺にお年玉くれなきゃならないんだぞ!? それでいいのか!? 違うだろ!
「うっせぇ馬鹿! 13歳下でももうお年玉貰うような年齢じゃないんだよ!」
「え~、俺何か間違ってるかなぁ? めっちゃいいおじさんのつもりなんだけどぉ」
唇を尖らせて拗ねたって、愛嬌が通じる年齢じゃないからな……っ! おっさん!
「寺島。まずはその仮面ライダーをやめて、ス〇ーピーあたりに変えてみたらどうだ?」
「キャラクターの問題じゃないから、オーナー!」
蘭真まで乗っかって大ボケをかましてくる。否む俺に二人は同時に肩を竦め、「なんで?」みたいな顔をしやがる!
「アホか、あんたら!」
「きゃー、こわ~い。関本マネージャー」
そう冗談めきながら寺島さんが蘭真にしがみつくから、俺は大慌てで二人を引っペがした。
「離れろ! うちのオーナーにあんたの毒を回さないでくれ! アホが伝染るじゃないか!」
「現に伝染ってるけどな」
厨房スタッフが的確なツッコミをかますと、スタッフ達は楽しそうに笑い始め、お年玉貰えるなんて羨ましいと口々に言われた。
いやいやいやっ、これは羨ましいとか嬉しいとかの次元じゃなくて、寺島は俺を最大限バカにしたいだけなんだよ! その為なら金も惜しまないってことだ! なんて恐ろしい男だ!
結果、断ったにも関わらず、お年玉は事務所の机にそっと置かれてあった。
「外の掃除してきます。サービスの二人はこのまま休憩入ってくれていいよ。厨房の皆さんも順に回してくださいね」
全員の返事が綺麗に揃い、その後で寺島さんの声が小さく呟いた。
「出会った頃はまだまだガキだったのにな」
その言葉にクスクス笑う蘭真の声も聞こえたけど、俺はそのまま掃除用具を手に取った。
今年で俺も25歳だ。さすがにもう子供じゃないし、子供扱いされる年齢でもない。立派とは言えないだろうけど、年齢的には立派な大人だ。
俺は、蘭真にとってどれだけ頼もしい恋人になれているだろうか。寺島さんに会う度、そんなことを考えてしまう。
「あ、そうだ。嵐」
アーチの向こうから名前を呼ばれ、俺は掃除用具を手に後ろを振り返った。
ウールのコートを来た寺島さんが、そっと内ポケットに手を入れる。嫌な予感しかしない。案の定、おもむろに取り出されたのは仮面ライダーのポチ袋。俺は掃除用具をその場に置いてツカツカと厨房に戻った。
「おい! あんた、またか!」
「え? なになに? あけましておめでとう♡ お年玉だよ、嵐」
「いらねぇっつってんだろ!」
毎年毎年毎年毎年……っ、懲りもせずにお年玉! 俺をいつまでガキ扱いするつもりだ! 今しがたもう立派な大人だと自他共に認めたところじゃないのか!? というか大体にして袋から俺をバカにしてる! なんで毎年絶対に仮面ライダーなんだよ!
「なんだよ~。欲しいだろ? お年玉。貰えるものはもらっとけよ~」
「俺は今年で25歳だぞ!? 25歳! お年玉なんかいらねぇよ!」
「でもお前、俺より13歳も年下だし」
それが理由!? その理由が通用するなら、あんた死ぬまで俺にお年玉くれなきゃならないんだぞ!? それでいいのか!? 違うだろ!
「うっせぇ馬鹿! 13歳下でももうお年玉貰うような年齢じゃないんだよ!」
「え~、俺何か間違ってるかなぁ? めっちゃいいおじさんのつもりなんだけどぉ」
唇を尖らせて拗ねたって、愛嬌が通じる年齢じゃないからな……っ! おっさん!
「寺島。まずはその仮面ライダーをやめて、ス〇ーピーあたりに変えてみたらどうだ?」
「キャラクターの問題じゃないから、オーナー!」
蘭真まで乗っかって大ボケをかましてくる。否む俺に二人は同時に肩を竦め、「なんで?」みたいな顔をしやがる!
「アホか、あんたら!」
「きゃー、こわ~い。関本マネージャー」
そう冗談めきながら寺島さんが蘭真にしがみつくから、俺は大慌てで二人を引っペがした。
「離れろ! うちのオーナーにあんたの毒を回さないでくれ! アホが伝染るじゃないか!」
「現に伝染ってるけどな」
厨房スタッフが的確なツッコミをかますと、スタッフ達は楽しそうに笑い始め、お年玉貰えるなんて羨ましいと口々に言われた。
いやいやいやっ、これは羨ましいとか嬉しいとかの次元じゃなくて、寺島は俺を最大限バカにしたいだけなんだよ! その為なら金も惜しまないってことだ! なんて恐ろしい男だ!
結果、断ったにも関わらず、お年玉は事務所の机にそっと置かれてあった。
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