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運命の番
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才川君との交際が始まった。
こんな普通のおっさんでごめん、と何度思っただろうか。才川君はおしゃれで若くて、出会った頃と変わらず見た目はチャラい。だけど、見た目だけが真面目な俺と違って、彼は根の真面目な男だ。家で黙ってパソコンに向き合う姿はとてもじゃないが近づけない。その集中力はさすがプロといったところだ。
才川君と交際をはじめ、彼の家に通うようになって、仕事をしている彼のために俺は料理を作るようになりだした。もちろん作ったことなどない。料理本を買ってきて、書かれている通りに作るのが関の山だ。だけど、自分ならそれくらい出来る気がしたんだ。案の定、うまく出来た。月日が流れるたびに俺のレシピも増え、本を広げずとも作れるようになりだした。買い出しも今では楽しい。
「ルイ、今日は何が食べたい?」
俺の隣を歩きながら、ん~と考え、コロッケ、と答える。
「コロッケ? 難しいこと言うなぁ。あれはヘッドで揚げるからうまいんじゃないのか?」
「そうなの? でも大丈夫だよ。タケさんお料理上手だから、サラダ油でもおいしく揚げられるって」
「今までのコロッケ、美味かったか?」
「……え? うん。まずいなんて思ったこと、一度もないよ?」
どうだったかな?と思い出そうとしたようだが、途中でやめたのがよく分かった。
「ほんとかよ」
「ほんとだって~」
そう言って俺の腕に絡みついてくる。
こんなおじさんに、才川君はいつだって無邪気だ。
「あー、でもピザも食べたいなぁ」
「いきなり贅沢品だな」
あははっと声を上げ、才川君は食品売り場に駆け出すと、俺を振り返り言った。
「今日は俺も手伝う。タケさんの好きなシチューにしよっか」
そのキラキラした子供のような笑顔はまぶしくて、俺はたまらず目を細めた。
「あぁ、いいな。じゃあ、コロッケとシチューにしよう」
やった、と歯を見せ笑った才川君は「ジャガイモいっぱい買おう」って俺の持つ籠にたくさんのジャガイモを詰め込んだ。こんなに要らないだろと思ったけど、楽しそうに買い物を手伝ってくれる彼に、まぁいいかと諦めることにした。腐る前に使い切ればいいだけの話だ。今はただ、笑う彼を見つめていられることが、幸せで仕方なかった。
こんな普通のおっさんでごめん、と何度思っただろうか。才川君はおしゃれで若くて、出会った頃と変わらず見た目はチャラい。だけど、見た目だけが真面目な俺と違って、彼は根の真面目な男だ。家で黙ってパソコンに向き合う姿はとてもじゃないが近づけない。その集中力はさすがプロといったところだ。
才川君と交際をはじめ、彼の家に通うようになって、仕事をしている彼のために俺は料理を作るようになりだした。もちろん作ったことなどない。料理本を買ってきて、書かれている通りに作るのが関の山だ。だけど、自分ならそれくらい出来る気がしたんだ。案の定、うまく出来た。月日が流れるたびに俺のレシピも増え、本を広げずとも作れるようになりだした。買い出しも今では楽しい。
「ルイ、今日は何が食べたい?」
俺の隣を歩きながら、ん~と考え、コロッケ、と答える。
「コロッケ? 難しいこと言うなぁ。あれはヘッドで揚げるからうまいんじゃないのか?」
「そうなの? でも大丈夫だよ。タケさんお料理上手だから、サラダ油でもおいしく揚げられるって」
「今までのコロッケ、美味かったか?」
「……え? うん。まずいなんて思ったこと、一度もないよ?」
どうだったかな?と思い出そうとしたようだが、途中でやめたのがよく分かった。
「ほんとかよ」
「ほんとだって~」
そう言って俺の腕に絡みついてくる。
こんなおじさんに、才川君はいつだって無邪気だ。
「あー、でもピザも食べたいなぁ」
「いきなり贅沢品だな」
あははっと声を上げ、才川君は食品売り場に駆け出すと、俺を振り返り言った。
「今日は俺も手伝う。タケさんの好きなシチューにしよっか」
そのキラキラした子供のような笑顔はまぶしくて、俺はたまらず目を細めた。
「あぁ、いいな。じゃあ、コロッケとシチューにしよう」
やった、と歯を見せ笑った才川君は「ジャガイモいっぱい買おう」って俺の持つ籠にたくさんのジャガイモを詰め込んだ。こんなに要らないだろと思ったけど、楽しそうに買い物を手伝ってくれる彼に、まぁいいかと諦めることにした。腐る前に使い切ればいいだけの話だ。今はただ、笑う彼を見つめていられることが、幸せで仕方なかった。
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