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第八章
8-1-1
しおりを挟む翌朝、優梨は祥の家に来ておらず、学校でも口を閉ざしたままだった。視線すら合わそうとしない。
そして、祥の答えは未だ出ていなかった。
「はぁ~~」
「祥、今朝から溜息ばかりついてるね。心ここにあらずっていう感じ」
今日は雨が酷いため、塔屋の中で昼食をとっている。
「……なあ永緒、俺のこと好き?」
「? うん、好きだよ」
「そっか。俺も好き」
普段ならここで顔を真っ赤にしているところだ。
突然の事に首を傾げる永緒のことは、祥の視界には入っていなかった。
なぜ優梨には友情で、永緒には愛情が湧くのか。いくら考えても答えは出てこず、むしろこんな事を考えている方が二人に失礼ではないかと思えてきた。
午後の授業にも身が入らず、先生の言葉は頭の中を右から左へと流れていくだけ。
永緒の気持ちを確かめてみたが分からない。辞書を引いてみたりもしたが分からない。
(さっぱり分からん)
いっそのこと時間が止まってくれたらいいのに、と考えたりもしたが、そんな望みが叶うはずもなく。
終礼が終わり、クラスの中が騒がしくなった頃、優梨に第四選択室に来るよう告げられた。
第四選択室は校舎の一番奥にあり、放課後に人が来ることはあまり無い所だ。
永緒に先に帰ってもらうよう伝え、覚悟を決めて教室を出る。
素直に、答えは出なかったと言うつもりだった。
大きく深呼吸をしてから第四選択室のドアを開ける。
優梨はすでに来ており、こちらに背を向けて窓の外を眺めていた。
「祥、答えは出たか?」
優梨は窓の向こうを見たまま言う。
「うん……やっぱり俺、分かんなかった」
「分かんない?」
優梨がこちらを振り返る。
「ああ。優梨も永緒も好きだけど、好きの種類が違う。何でなのかは分かんない。でも、好きってそういう事だと思うんだ。いちいち理由つけてたらきりが無いっていうか、そういうのは感覚的なことだと思うんだ」
このような説明で納得してくれるだろうかと、優梨の顔色を伺った。
「なるほどね。じゃあ、俺と園山だったらどっちが好き?」
「だからっ、優梨と永緒の好きはベクトルが違うんだ。比べるなんてできねーよ」
どこか様子がおかしい。答えを焦っているような。優梨にしては珍しく余裕が無いように見えた。
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