33 / 73
第五章
5-3-2
しおりを挟む
(よし、これ食べ終わったら言うぞ)
本当は食べている最中に、さりげなく会話の中でここに来た理由を打ち明けられれば良かったのかもしれない。だがお互い言葉数も少なく、話すタイミングを見失ってしまったのだ。
うどんの汁を飲み干し、息を吐いてからまた大きく吸う。
大事な話があるからここに来た。謝りたいこと。ヘッドホンのこと。おととい以降、学校に来なくなってしまったこと。
伝えたいことも聞きたいことも、たくさんあった。
腹をくくって、全て話してしまおうと口を開く。だが、園山の方が先に言葉を発してしまった。
「井瀬塚、今日はもう遅いからうちに泊まっていかない?」
「えっ」
時計を見ると、時刻は九時になろうとしていた。今帰ったら、家に着くのは十時を軽く回ってしまう。
「じゃあそうさせてもらうわ、ありがとう……。あの、それでさ――」
「俺これ片付けておくから、井瀬塚は風呂に行ってきなよ」
「いや、いいよ。何もかもしてもらっちゃ悪いし、片付けぐらい俺が……」
「大丈夫だから。俺がやるよ。あと、井瀬塚が寝てる間にコンビニで新しい下着買っておいたから、使っていいよ」
「あ、ありがと……」
至れり尽くせりの対応に逆に困惑してしまう。何より、祥に話すタイミングを与えてくれない。
「タオルと着替えは後で持っていくから。――あ、悪いんだけど今は俺のパジャマしかないんだ。いいかな?」
「はい、いいです……」
こいつ、すぐにでも嫁にいけるぞ。
そんなことを思いながら、今日は園山の厚意に甘えさせてもらうことにした。
(よしっ、フロから上がったら言うぞ)
今日はただ家に泊まりに来たのではない。大事な話があるから来たのだ。できるだけ早く言わなければ。
母に今晩は園山の家に泊めてもらう事をメールで伝えた後、園山に教えられた通りに風呂場へと向かう。
(そういや、この家やけに静かだな)
祥の家と同じ二階建てだが、上の階は真っ暗で、階段にすら電気が付いていない。
今日はたまたま園山の親が外出中なのかと思うことで自らを誤魔化し、脱衣所のドアを開けた。
シャワーを浴びている間に園山が脱衣所に入ってきて、着替えやタオルを置いていってくれる。
祥が着ていたシャツを洗うと言って洗濯機を回していったのだが、園山は相当の世話好きなのかもしれない。今日はもう祥の出る幕などないだろう。
本当は食べている最中に、さりげなく会話の中でここに来た理由を打ち明けられれば良かったのかもしれない。だがお互い言葉数も少なく、話すタイミングを見失ってしまったのだ。
うどんの汁を飲み干し、息を吐いてからまた大きく吸う。
大事な話があるからここに来た。謝りたいこと。ヘッドホンのこと。おととい以降、学校に来なくなってしまったこと。
伝えたいことも聞きたいことも、たくさんあった。
腹をくくって、全て話してしまおうと口を開く。だが、園山の方が先に言葉を発してしまった。
「井瀬塚、今日はもう遅いからうちに泊まっていかない?」
「えっ」
時計を見ると、時刻は九時になろうとしていた。今帰ったら、家に着くのは十時を軽く回ってしまう。
「じゃあそうさせてもらうわ、ありがとう……。あの、それでさ――」
「俺これ片付けておくから、井瀬塚は風呂に行ってきなよ」
「いや、いいよ。何もかもしてもらっちゃ悪いし、片付けぐらい俺が……」
「大丈夫だから。俺がやるよ。あと、井瀬塚が寝てる間にコンビニで新しい下着買っておいたから、使っていいよ」
「あ、ありがと……」
至れり尽くせりの対応に逆に困惑してしまう。何より、祥に話すタイミングを与えてくれない。
「タオルと着替えは後で持っていくから。――あ、悪いんだけど今は俺のパジャマしかないんだ。いいかな?」
「はい、いいです……」
こいつ、すぐにでも嫁にいけるぞ。
そんなことを思いながら、今日は園山の厚意に甘えさせてもらうことにした。
(よしっ、フロから上がったら言うぞ)
今日はただ家に泊まりに来たのではない。大事な話があるから来たのだ。できるだけ早く言わなければ。
母に今晩は園山の家に泊めてもらう事をメールで伝えた後、園山に教えられた通りに風呂場へと向かう。
(そういや、この家やけに静かだな)
祥の家と同じ二階建てだが、上の階は真っ暗で、階段にすら電気が付いていない。
今日はたまたま園山の親が外出中なのかと思うことで自らを誤魔化し、脱衣所のドアを開けた。
シャワーを浴びている間に園山が脱衣所に入ってきて、着替えやタオルを置いていってくれる。
祥が着ていたシャツを洗うと言って洗濯機を回していったのだが、園山は相当の世話好きなのかもしれない。今日はもう祥の出る幕などないだろう。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
待てって言われたから…
ふみ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
早く惚れてよ、怖がりナツ
ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。
このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。
そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。
一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて…
那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。
ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩
《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる