26 / 73
第四章
4ー4ー2
しおりを挟む
(あ、意外とまつげ長い)
閉じられたまぶたを縁取るそれがこんなに長いとは、至近距離でないと気付かなかっただろう。
(うわ、髪さらっさらだなー)
小学生の頃から水泳をやっている祥からすれば、園山の真っ黒で滑らかな髪は少し羨ましかった。
(ちょっとだけなら、触ってもいいかな)
柔らかそうな髪に、手を触れたくなってしまう。震える指を伸ばし、そっと撫でてみた。
(おぉー! なんだこれ、すっごく良い触り心地)
自分のものと比べてみるが、自分が水泳をやっていなかったとしても、こんなにさらさらした髪にはならなかっただろう。
(肌も白いなー、こいつ絶対にインドアだもんなぁ)
学校のプールは屋内にあるためほとんど日焼けすることはなく、祥もどちらかというと色白の方だ。だが園山は黒い髪のお陰で、白い肌が余計に目立って見える。
髪の毛をいじっても起きないため、今度は顔を触ってみたくなってしまった。頬をつつこうとして、音を立てないように手を近づけていく。
(ちょっとだけ。ちょっとだけだから――)
もう少しで指先が触れる。その瞬間、園山の目がうっすらと開いた。
「んん……うる、さい」
「――ッ!」
急な出来事に、口から心臓が飛び出るかと思うほど驚いたが、なんとか大声は出さずに済んだ。
一言も言葉を発していないのに『うるさい』と言われる理由が分からなかったが、焦りと動揺でそんなことを考える余裕は無かった。
寝返りを打とうとした園山は、ヘッドホンが無いことに気付いたのだろう。耳のあたりを探っている。
(ど、どうしよう、この状況……)
心の中で呟いた途端、園山がはっとしたようにこちらを向いた。
「……どこ」
「――えっ?」
「俺のヘッドホンはどこッ!? 井瀬塚!」
そう叫ぶ園山は、耳を塞いでうずくまっている。こんなに大声を出しているのは見たことが無い。
柄にもなく取り乱す姿を見て、祥もこれはただ事ではないと察する。
「こ、ここにあるけど」
ちゃぶ台の上に置いたヘッドホンを差し出すと、園山は起き上がり、祥の手から奪うようにして取り上げる。
それを耳につけた園山は、ようやく平常心を取り戻したように見えた。
閉じられたまぶたを縁取るそれがこんなに長いとは、至近距離でないと気付かなかっただろう。
(うわ、髪さらっさらだなー)
小学生の頃から水泳をやっている祥からすれば、園山の真っ黒で滑らかな髪は少し羨ましかった。
(ちょっとだけなら、触ってもいいかな)
柔らかそうな髪に、手を触れたくなってしまう。震える指を伸ばし、そっと撫でてみた。
(おぉー! なんだこれ、すっごく良い触り心地)
自分のものと比べてみるが、自分が水泳をやっていなかったとしても、こんなにさらさらした髪にはならなかっただろう。
(肌も白いなー、こいつ絶対にインドアだもんなぁ)
学校のプールは屋内にあるためほとんど日焼けすることはなく、祥もどちらかというと色白の方だ。だが園山は黒い髪のお陰で、白い肌が余計に目立って見える。
髪の毛をいじっても起きないため、今度は顔を触ってみたくなってしまった。頬をつつこうとして、音を立てないように手を近づけていく。
(ちょっとだけ。ちょっとだけだから――)
もう少しで指先が触れる。その瞬間、園山の目がうっすらと開いた。
「んん……うる、さい」
「――ッ!」
急な出来事に、口から心臓が飛び出るかと思うほど驚いたが、なんとか大声は出さずに済んだ。
一言も言葉を発していないのに『うるさい』と言われる理由が分からなかったが、焦りと動揺でそんなことを考える余裕は無かった。
寝返りを打とうとした園山は、ヘッドホンが無いことに気付いたのだろう。耳のあたりを探っている。
(ど、どうしよう、この状況……)
心の中で呟いた途端、園山がはっとしたようにこちらを向いた。
「……どこ」
「――えっ?」
「俺のヘッドホンはどこッ!? 井瀬塚!」
そう叫ぶ園山は、耳を塞いでうずくまっている。こんなに大声を出しているのは見たことが無い。
柄にもなく取り乱す姿を見て、祥もこれはただ事ではないと察する。
「こ、ここにあるけど」
ちゃぶ台の上に置いたヘッドホンを差し出すと、園山は起き上がり、祥の手から奪うようにして取り上げる。
それを耳につけた園山は、ようやく平常心を取り戻したように見えた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
クソザコ乳首くんの出張アクメ
掌
BL
おさわりOK♡の家事代行サービスで働くようになった、ベロキス大好きむっつりヤンキー系ツン男子のクソザコ乳首くんが、出張先のどすけべおぢさんの家で乳首穴開き体操着でセクハラ責めされ、とことんクソザコアクメさせられる話。他腋嗅ぎ、マイクロビキニなど。フィクションとしてライトにお楽しみください。
ネタの一部はお友達からご提供いただきました。ありがとうございました!
pixiv/ムーンライトノベルズにも同作品を投稿しています。
なにかありましたら(web拍手)
http://bit.ly/38kXFb0
Twitter垢・拍手返信はこちらから
https://twitter.com/show1write
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる