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第二章

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「園山、ちょっと一回やってみろよ」

「え、俺やったことないし」

「だからだよ。ゲーセン来て何もしないなんて勿体ないだろ」


 園山をゲーム機の前に来るよう促し、ゲームをスタートさせる。


「ほんとにいいの? 失敗したらその二百円無駄になる……」

「何言ってんだ。こんくらいのぬいぐるみフツーに買ったら三千円はするぜ。もう少しで取れそうなんだから、どっちにしろ安上がりだ」


 弱気になっている園山を少しでも元気付けなければ。そう思って祥は思ったことをそのまま口にした。


「……井瀬塚って、優しいね」

「そ、そうか……?」

(何で俺褒められたんだ? っていうか――――)

「今、初めて俺の名前呼んだな!」

(なんか、スゲー嬉しい!)


 今までの仲が良くなかったせいか、名前を呼ばれてもそれが園山というだけで特別な感じがする。


「じゃあ、始めるよ」

「お、おう。足のところを持ち上げると取れると思う」

「分かった」


 園山は何事も無かったかのように振る舞うが、その頬は少し赤くなっていた。それを見てこちらまで照れてしまい、思わず顔を逸らす。

 機械の操作音だけが、二人の耳に届いていた。


「あっ」


 小さな呟きが聞こえてきたのと、何かが落ちる音がしたのはほぼ同時だった。

 園山の方に向き直ると、その腕にはウサギのぬいぐるみが抱えられていた。


「おおー! 一発で取れるなんてすごいな!」

「い、井瀬塚が取りやすくしてくれたから……はい、これ」


 そう言ってぬいぐるみを手渡される。祥はそれを受け取り抱きしめた。


「ありがとう! これ、絶対大事にするな!」


 祥は満面の笑みで園山を見上げる。

 するとそこには――――


「あ、今笑った! 初めてじゃね!?」


 園山の照れくさそうな笑顔があった。


「俺だって笑うよ。大げさだな」

「お前もっと笑ったほうがいいって。かっこいいし」


 普段は無表情のため近づき難い雰囲気を醸し出しているが、もとのパーツは整っているのだ。笑う時にふわっと踊る黒髪も、優しさをたたえた瞳も、園山の笑顔に良く似合っている。


「ほ、褒めたって何も出ないから……。次はどこに行くの?」

「えっとー、腹減ってきたから何か食いに行くか」


 祥の提案で、二人はゲームセンターを出た。ぬいぐるみはそこで袋に入れてもらったので持ち運びが楽になる。
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