雪融

柊 奏

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第四雪【卒業】

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 卒業式の夜。

 彼女はあの公園にはこなかった。

 代わりに一通の手紙が公園のベンチに置かれていた。

『篠宮くんへ』

 見覚えのある彼女の文字だった。

 僕はそれを読むことは終わりを意味するようで、躊躇した。でも、これを読まなければ先には進めないと思い、自分の震える手を抑えながらゆっくりと封を開けた。

 三つ折りされた手紙を開くと、そこには小さく綺麗な文字が並んでいた。


『篠宮くんの言葉を信じられない弱い私でごめんね。』

 紡がれていた彼女の言葉はそれだけだった。

 今の彼女の精一杯の言葉。

 僕はその彼女の言葉で、胸が締め付けられた。

「っどうして!お願いだから独りにならないで。僕を頼ってよ!」

 ぼくの言葉は彼女には届かない。

 それが酷く悲しかった。

 その後、何度か彼女に連絡したが、番号を変えられたのか、一向に繋がらなかった。


「……赤月」

 

 僕はその場からしばらく動くことが出来なかった。
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