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第2堡塁の衝撃
第95話 お手並み拝見
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40分と示された休憩時間に、すっかり油断していたのは、横須賀学生同盟のメンバーばかりではない、現役の軍人である54連隊のメンバーも、今日の戦いは終了したものと気を抜いていた。
そこへ来て、本日日没までに第3堡塁を攻略するとの無線が入り、さすがの54連隊のメンバーも、その人使いの荒さに憤慨したのである。
「指揮所、これは一体どういうことか。常識は無いのか、ここまでほとんど休みなく戦い続けているんだぞ」
第一線の小隊長級からも、不満が噴出していた。
「困ったね三枝君、、、」
優が優しく諭すが、龍二の表情は硬く厳しいものであった。
この時、城島は、珍しく龍二が困っているのではと感じた。
そして、ようやく自分にもできる事が出来た気がしていた。
「ちょっと外すぞ」
そう言い残して、城島は指揮所を出て行ってしまった。
優は、不思議そうな顔をしていたが、どうやら龍二は何か気付いている様子だった。
城島は、指揮所に付いていた若い伍長に運転をお願いすると、自身は戦闘服に身を包み、小銃を借用してそのまま前線に赴いた。
「いいのか?、指揮所を無視して飛び出してしまって」
若い伍長は、城島のスタンドプレーを心配したが、大丈夫、三枝なら多分理解している、とだけ返答すると、もうそれ以上は語らなかった。
「指揮所、こちら機甲大隊本部、先ほどの電源車だが、全ての戦車に充電できるだけの電源が確保できない、優先順位を教えてほしい 送れ」
それは、悲痛な叫びでもあった。この時代の戦車は、完全電化のため、充電が不完全だと十分なパフォーマンスを発揮できない。
むしろ、昨晩までの戦いで第1堡塁の電源が生きていたことが奇跡に近く、本朝の戦闘段階で戦車の充電は、要塞の電源をフルに使用出来たため、まだ電力に幾分かの余裕をもっていた。
しかし、戦車の電源は異様に消費が激しいため、電源車一台では、到底1個大隊分など賄えるはずは無かった。
「ケーブルを分派させ、出来るだけ多くの戦車に、充電を同時に実施してほしい、可能か? 送れ」
現場は一瞬怪訝な顔で満たされた。
それは、電気工学的に誤った判断と考えられたからだ。
その方式では、一度に電源車に負荷がかかり、本来充電可能な台数より少ない台数しか充電出来ない。
機甲大隊も、それは不思議に感じていた。
「指揮所に提案、台数を限定して充電した方が、効率が良いと思われる、送れ」
「問題ない、出来るだけ全ての戦車に電源を振り分けてほしい、その充電量で、十分に戦える作戦計画で挑む 以上終わり」
龍二は、ここでも自信に満ちた表情で無線を切った。
機甲大隊も、これが本当に19歳の采配なのか、と感じるものの、この機甲大隊もまた、第3次世界大戦を戦い抜いた猛者達の群れである、歴戦の勘で言えば、この指示の出し方は落第点だ。
機甲の専門的考えで行くならば、充電量の少ない戦車を後方の射撃支援に回し、その援護下で、充電が十分に出来ている戦車を突撃させた方が効率が良いはずだ。
何しろ、突入した先に、何が待っているかなど、未だ誰も知らない、、、、第3堡塁は、これまで落ちた経験が無いのだから。
「そこまで言うなら、お手並み拝見と行こうじゃないか」
機甲隊の隊長は、天才と呼ばれる龍二の戦いが、見てみたいと思うようになっていた。
そこへ来て、本日日没までに第3堡塁を攻略するとの無線が入り、さすがの54連隊のメンバーも、その人使いの荒さに憤慨したのである。
「指揮所、これは一体どういうことか。常識は無いのか、ここまでほとんど休みなく戦い続けているんだぞ」
第一線の小隊長級からも、不満が噴出していた。
「困ったね三枝君、、、」
優が優しく諭すが、龍二の表情は硬く厳しいものであった。
この時、城島は、珍しく龍二が困っているのではと感じた。
そして、ようやく自分にもできる事が出来た気がしていた。
「ちょっと外すぞ」
そう言い残して、城島は指揮所を出て行ってしまった。
優は、不思議そうな顔をしていたが、どうやら龍二は何か気付いている様子だった。
城島は、指揮所に付いていた若い伍長に運転をお願いすると、自身は戦闘服に身を包み、小銃を借用してそのまま前線に赴いた。
「いいのか?、指揮所を無視して飛び出してしまって」
若い伍長は、城島のスタンドプレーを心配したが、大丈夫、三枝なら多分理解している、とだけ返答すると、もうそれ以上は語らなかった。
「指揮所、こちら機甲大隊本部、先ほどの電源車だが、全ての戦車に充電できるだけの電源が確保できない、優先順位を教えてほしい 送れ」
それは、悲痛な叫びでもあった。この時代の戦車は、完全電化のため、充電が不完全だと十分なパフォーマンスを発揮できない。
むしろ、昨晩までの戦いで第1堡塁の電源が生きていたことが奇跡に近く、本朝の戦闘段階で戦車の充電は、要塞の電源をフルに使用出来たため、まだ電力に幾分かの余裕をもっていた。
しかし、戦車の電源は異様に消費が激しいため、電源車一台では、到底1個大隊分など賄えるはずは無かった。
「ケーブルを分派させ、出来るだけ多くの戦車に、充電を同時に実施してほしい、可能か? 送れ」
現場は一瞬怪訝な顔で満たされた。
それは、電気工学的に誤った判断と考えられたからだ。
その方式では、一度に電源車に負荷がかかり、本来充電可能な台数より少ない台数しか充電出来ない。
機甲大隊も、それは不思議に感じていた。
「指揮所に提案、台数を限定して充電した方が、効率が良いと思われる、送れ」
「問題ない、出来るだけ全ての戦車に電源を振り分けてほしい、その充電量で、十分に戦える作戦計画で挑む 以上終わり」
龍二は、ここでも自信に満ちた表情で無線を切った。
機甲大隊も、これが本当に19歳の采配なのか、と感じるものの、この機甲大隊もまた、第3次世界大戦を戦い抜いた猛者達の群れである、歴戦の勘で言えば、この指示の出し方は落第点だ。
機甲の専門的考えで行くならば、充電量の少ない戦車を後方の射撃支援に回し、その援護下で、充電が十分に出来ている戦車を突撃させた方が効率が良いはずだ。
何しろ、突入した先に、何が待っているかなど、未だ誰も知らない、、、、第3堡塁は、これまで落ちた経験が無いのだから。
「そこまで言うなら、お手並み拝見と行こうじゃないか」
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