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第2堡塁の衝撃
第90話 賛 辞
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「敵攻撃機、再び我が軍上空に入ります!、対空警報「レッド」各員は退避せよ!」
そんな無線が入ったところで、退避などする場所など皆無だ。
第1堡塁に引き返すか、いや、多分間に合わない。
「おい、どうするんだ三枝!、徒歩兵まで見殺しか?」
「落ち着いて城島君!、今は三枝君を信じようよ」
混乱と怒号、そして、無線から入って来る損害報告。
これが戦場なのか、と一同は感じた。
この混乱や怒りの中で、指揮官は指揮をするのである、不安と不快の中で、味方がやられてゆくその様を見ながら。
昨日の第1師団は、さぞ怖い思いを皆していたんだろうと、優は茫漠と感じていた。
花岡静香と橋立真理の二人は、もう家に帰りたい衝動に駆られていた。
二人はまるで死を待つ死刑囚の気分で、ただ恐怖しながら上空を見上げるしかなかった。
「くっそー、これじゃあやられっ放しじゃない!、こんなの我慢できないよ」
花岡静香が小銃を手に取ると、轟音を響かせながら迫って来る敵攻撃機に対して激しく射撃を始めた。
同じやられるなら、手持ちの弾薬を、ずべて撃ち尽くしてやる、そんな気持ちで静香は必死で上空に向かって乱射した、その時だった。
『そんなデタラメな射撃じゃ、当たらないわよ!」
美しい女性の声が、携帯端末から響いてきたのである。
「え、?、どこ?、今女性の声が聞こえたよね、貴女は誰ですか?、どこにいるんですか?」
『フフフ、ここよ、ここ!」
声の主がそう言うと、第1堡塁から真っすぐに伸びる一本道に、超低空で飛行する一機の航空機が突然急上昇するように彼女ら二人の横をかすめた、それは熱波が感じられるような距離で。
二人は一瞬、悲鳴をあげるが、静香が再び空を見上げると、小型の戦闘機が、先ほど爆撃をしてきた敵の航空機の後方に付くと、次々にロックオン判定で敵機を撃墜してゆくではないか。
「凄い、凄いよ真理ちゃん!、あの小さい飛行機、なんか凄い!」
それは冬の青空によく映える光景だった。
まるで美しい鳥が、怪鳥を懲らしめるように、それはどこまでも高く上昇していった。
花岡静香は、これまでの人生で、一番美しいと感じるものを見た気がした。
よく見ると、その飛行機は一機だけではなく、複数機飛来していた。
『こちらは戦闘艦「しなの」艦載機航空戦隊、これより第2堡塁を攻撃する」
それは全軍に響く周波数帯で発せられた。
この美しい小型の戦闘機部隊は、あの「しなの」艦載機編隊であったのだ。
地上を這うように空からの脅威に怯えていた徒歩兵部隊は、一斉に空に向かって大歓声を挙げた。
その歓声を、まるでバックミュージックにしたかの如く、敵の航空機は次々と撃墜判定を受けて行く。
そして、一部の航空機が爆撃体制に入った時、龍二から、目標を第2堡塁から第3堡塁へ変更してほしいとの無線が入った。
小型の戦闘機隊は、もう一度旋回し、小型機の特徴を生かし、小さな旋回半径で速やかに回って来ると、攻撃を第3堡塁陣前に切り替え、一斉に襲いかかった。
実はこの時、第2堡塁には、空爆の最中も前進を続けていた機甲部隊の前半分が、第2堡塁に取り付くまさに直前であった。
この混乱の最中であったため、またもや十分な反撃が出来なかった師団側は、既に第3堡塁に向け後退を開始していた時であった。
龍二は、その一瞬の隙を見逃さなかった。
この航空攻撃によって、第2堡塁守備隊は激しく損耗を受け、もはや抵抗の術を失いつつあった。
『さっき上空に向かって銃を撃ってた、あんた、骨のある子だね、その気があるなら、空軍に来なさい、歓迎するわ」
再び美しい女性の声が、花岡静香に対して賛辞を贈った。
静香は、この日の衝撃を、きっと忘れないだろう、と思った。
そして、今感じている感動とも興奮とも取れる、初めて感じる高揚感を、どうにも抑えることが出来ないでいた。
空軍に入ろう、そして、彼女のようなパイロットになろう。
戦闘機隊が帰って行く東の空を、静香はいつまでも見ていた。
そんな無線が入ったところで、退避などする場所など皆無だ。
第1堡塁に引き返すか、いや、多分間に合わない。
「おい、どうするんだ三枝!、徒歩兵まで見殺しか?」
「落ち着いて城島君!、今は三枝君を信じようよ」
混乱と怒号、そして、無線から入って来る損害報告。
これが戦場なのか、と一同は感じた。
この混乱や怒りの中で、指揮官は指揮をするのである、不安と不快の中で、味方がやられてゆくその様を見ながら。
昨日の第1師団は、さぞ怖い思いを皆していたんだろうと、優は茫漠と感じていた。
花岡静香と橋立真理の二人は、もう家に帰りたい衝動に駆られていた。
二人はまるで死を待つ死刑囚の気分で、ただ恐怖しながら上空を見上げるしかなかった。
「くっそー、これじゃあやられっ放しじゃない!、こんなの我慢できないよ」
花岡静香が小銃を手に取ると、轟音を響かせながら迫って来る敵攻撃機に対して激しく射撃を始めた。
同じやられるなら、手持ちの弾薬を、ずべて撃ち尽くしてやる、そんな気持ちで静香は必死で上空に向かって乱射した、その時だった。
『そんなデタラメな射撃じゃ、当たらないわよ!」
美しい女性の声が、携帯端末から響いてきたのである。
「え、?、どこ?、今女性の声が聞こえたよね、貴女は誰ですか?、どこにいるんですか?」
『フフフ、ここよ、ここ!」
声の主がそう言うと、第1堡塁から真っすぐに伸びる一本道に、超低空で飛行する一機の航空機が突然急上昇するように彼女ら二人の横をかすめた、それは熱波が感じられるような距離で。
二人は一瞬、悲鳴をあげるが、静香が再び空を見上げると、小型の戦闘機が、先ほど爆撃をしてきた敵の航空機の後方に付くと、次々にロックオン判定で敵機を撃墜してゆくではないか。
「凄い、凄いよ真理ちゃん!、あの小さい飛行機、なんか凄い!」
それは冬の青空によく映える光景だった。
まるで美しい鳥が、怪鳥を懲らしめるように、それはどこまでも高く上昇していった。
花岡静香は、これまでの人生で、一番美しいと感じるものを見た気がした。
よく見ると、その飛行機は一機だけではなく、複数機飛来していた。
『こちらは戦闘艦「しなの」艦載機航空戦隊、これより第2堡塁を攻撃する」
それは全軍に響く周波数帯で発せられた。
この美しい小型の戦闘機部隊は、あの「しなの」艦載機編隊であったのだ。
地上を這うように空からの脅威に怯えていた徒歩兵部隊は、一斉に空に向かって大歓声を挙げた。
その歓声を、まるでバックミュージックにしたかの如く、敵の航空機は次々と撃墜判定を受けて行く。
そして、一部の航空機が爆撃体制に入った時、龍二から、目標を第2堡塁から第3堡塁へ変更してほしいとの無線が入った。
小型の戦闘機隊は、もう一度旋回し、小型機の特徴を生かし、小さな旋回半径で速やかに回って来ると、攻撃を第3堡塁陣前に切り替え、一斉に襲いかかった。
実はこの時、第2堡塁には、空爆の最中も前進を続けていた機甲部隊の前半分が、第2堡塁に取り付くまさに直前であった。
この混乱の最中であったため、またもや十分な反撃が出来なかった師団側は、既に第3堡塁に向け後退を開始していた時であった。
龍二は、その一瞬の隙を見逃さなかった。
この航空攻撃によって、第2堡塁守備隊は激しく損耗を受け、もはや抵抗の術を失いつつあった。
『さっき上空に向かって銃を撃ってた、あんた、骨のある子だね、その気があるなら、空軍に来なさい、歓迎するわ」
再び美しい女性の声が、花岡静香に対して賛辞を贈った。
静香は、この日の衝撃を、きっと忘れないだろう、と思った。
そして、今感じている感動とも興奮とも取れる、初めて感じる高揚感を、どうにも抑えることが出来ないでいた。
空軍に入ろう、そして、彼女のようなパイロットになろう。
戦闘機隊が帰って行く東の空を、静香はいつまでも見ていた。
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