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第2堡塁の衝撃
第85話 正攻法
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早朝5時から開始された砲兵部隊、迫撃砲部隊による「攻撃準備射撃」は、約90分間にわたり行われた。
これは東京第1師団側も、慣用戦法として、よく理解している攻撃要領故に、それが逆に不気味にすら感じられた。
、、、、あの三枝軍が、慣用戦法ど、使うのだろうか?
昨晩の、あれだけ準備した夜間戦闘への反撃作戦は、まるで夜襲を仕掛けてこない三枝軍の意表を突く沈黙により、完全な空振りとなってしまった。
そこへ来て、春木沢支隊による、散発的な攻撃が防御に徹する師団側の兵員に、加重な精神的疲労を齎せていたのである。
徹夜で警戒し、第2堡塁攻防戦の朝を迎えた第1師団は、明らかに不利な状況に陥っていた。
徹夜はしてはならない。
これは意外に感じるかもしれないが、国防軍が自衛隊であった時代より、通説となっていた。
それは、一度徹夜をしてしまうと、復旧に何倍もの時間がかかるため、少しでも睡眠を取るよう教育は変更されていた。
もし、兵士が徹夜で戦う場合、それは、最終決戦の場面だけであると。
その禁を犯して、師団守備隊は徹夜で戦い続けた。
これにより、師団側が正常な戦いを実施できるリミットは、あと24時間が限界と言えるのである。
「三枝軍は、本朝正攻法で来ましたね」
第2部長が、上条師団長に呟いた。
「ああ、まるで学校教育だな、それも少し懐かしいようなレベルに正攻法だ」
当然、上条師団長も、龍二が正攻法で来るはずが無いと確信していた。
それ故に、待っていたのである
龍二が次の一手を撃って出る、そのタイミングを。
「三枝君、指示通りに機甲部隊が第1堡塁を抜けたよ、本当にこれでいいの?」
優は、これもまた、龍二にしては珍しいと感じた。
あれだけ意表を突いてここまで来ているのに、今朝の龍二と来たら、まるで真面目な正攻法を展開してくるのである。
逆に、この戦い方であれば、優や幸、城島達にも理解の範囲で作戦が動いていた。
それでも、味方の砲撃中に、自軍の戦車や装甲車を一列に第2堡塁側に向け前進させる作戦は、正攻法とは言い難いものであった。
ただ、今回の攻撃準備射撃には、砲兵部隊だけではなく、迫撃砲部隊も加わって、協同作戦をとっていた。
これは、砲兵の威力が大きすぎるため、威力のやや落ちる迫撃砲を同時に運用することで、自軍の戦車部隊の前進している直上には迫撃砲を、敵の第2堡塁には砲兵を、このように使い分けることで、敵に悟られることなく自軍の砲撃の中に戦車部隊を前進させることに成功していたのである。
本来、この自軍の砲撃中に、自軍の車両や人員が前進することはない。
これをした場合、自軍の砲撃により、人員や車両が撃破される可能性があるからだった。
しかし、この状況を龍二は利用し、まさか自軍の砲撃の中を前進してくるだろうとは予想していない第1師団の意表を突く作戦でもあった。
しかし、実戦慣れしていた上条師団長と第2部長には、予想の範囲の行動だったのである。
当然、上条師団長は、龍二がそれを狙って、機甲戦力をジワジワと進撃させてくることは予想していた。
それまで龍二が行ってきた戦い方が、あまりにも真っ当な軍人のそれを逸脱したものであったため、自分の予想の範囲に龍二の思考が入ってきたことに、少なからぬ快楽を感じていた。
「ようやく師団の土俵で戦ってくれるようだな、三枝軍は」
上条師団長は呟いた。
それを聞いた、第2部長も体の芯が熱くなるのを感じていた。
それは、師団側の反撃の狼煙と言えた。
当然、上条師団長も、龍二の撃って来るこの一手を待っていたのである。
これは東京第1師団側も、慣用戦法として、よく理解している攻撃要領故に、それが逆に不気味にすら感じられた。
、、、、あの三枝軍が、慣用戦法ど、使うのだろうか?
昨晩の、あれだけ準備した夜間戦闘への反撃作戦は、まるで夜襲を仕掛けてこない三枝軍の意表を突く沈黙により、完全な空振りとなってしまった。
そこへ来て、春木沢支隊による、散発的な攻撃が防御に徹する師団側の兵員に、加重な精神的疲労を齎せていたのである。
徹夜で警戒し、第2堡塁攻防戦の朝を迎えた第1師団は、明らかに不利な状況に陥っていた。
徹夜はしてはならない。
これは意外に感じるかもしれないが、国防軍が自衛隊であった時代より、通説となっていた。
それは、一度徹夜をしてしまうと、復旧に何倍もの時間がかかるため、少しでも睡眠を取るよう教育は変更されていた。
もし、兵士が徹夜で戦う場合、それは、最終決戦の場面だけであると。
その禁を犯して、師団守備隊は徹夜で戦い続けた。
これにより、師団側が正常な戦いを実施できるリミットは、あと24時間が限界と言えるのである。
「三枝軍は、本朝正攻法で来ましたね」
第2部長が、上条師団長に呟いた。
「ああ、まるで学校教育だな、それも少し懐かしいようなレベルに正攻法だ」
当然、上条師団長も、龍二が正攻法で来るはずが無いと確信していた。
それ故に、待っていたのである
龍二が次の一手を撃って出る、そのタイミングを。
「三枝君、指示通りに機甲部隊が第1堡塁を抜けたよ、本当にこれでいいの?」
優は、これもまた、龍二にしては珍しいと感じた。
あれだけ意表を突いてここまで来ているのに、今朝の龍二と来たら、まるで真面目な正攻法を展開してくるのである。
逆に、この戦い方であれば、優や幸、城島達にも理解の範囲で作戦が動いていた。
それでも、味方の砲撃中に、自軍の戦車や装甲車を一列に第2堡塁側に向け前進させる作戦は、正攻法とは言い難いものであった。
ただ、今回の攻撃準備射撃には、砲兵部隊だけではなく、迫撃砲部隊も加わって、協同作戦をとっていた。
これは、砲兵の威力が大きすぎるため、威力のやや落ちる迫撃砲を同時に運用することで、自軍の戦車部隊の前進している直上には迫撃砲を、敵の第2堡塁には砲兵を、このように使い分けることで、敵に悟られることなく自軍の砲撃の中に戦車部隊を前進させることに成功していたのである。
本来、この自軍の砲撃中に、自軍の車両や人員が前進することはない。
これをした場合、自軍の砲撃により、人員や車両が撃破される可能性があるからだった。
しかし、この状況を龍二は利用し、まさか自軍の砲撃の中を前進してくるだろうとは予想していない第1師団の意表を突く作戦でもあった。
しかし、実戦慣れしていた上条師団長と第2部長には、予想の範囲の行動だったのである。
当然、上条師団長は、龍二がそれを狙って、機甲戦力をジワジワと進撃させてくることは予想していた。
それまで龍二が行ってきた戦い方が、あまりにも真っ当な軍人のそれを逸脱したものであったため、自分の予想の範囲に龍二の思考が入ってきたことに、少なからぬ快楽を感じていた。
「ようやく師団の土俵で戦ってくれるようだな、三枝軍は」
上条師団長は呟いた。
それを聞いた、第2部長も体の芯が熱くなるのを感じていた。
それは、師団側の反撃の狼煙と言えた。
当然、上条師団長も、龍二の撃って来るこの一手を待っていたのである。
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