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東京第一師団 vs 横須賀学生同盟
第57話 秘 策
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そして、訓練期間の半分を過ぎた頃に龍二は各部隊、学校、学生の代表を国防大学校に招集させたのである。
龍二「みんな、今日は忙しい中集まってもらってありがとう。訓練期間は半分を過ぎ、もう後がない。ここで皆の意見を聞いてみたい。」
一同は少し驚いた表情を浮かべた。
と言うのも、今日この日に至るまで、龍二の口から、具体的な内容の一切は語られることが無かった。
いわゆる防大生徒会の独断、むしろ龍二のワンマンな印象を否めないでいた。
郡司「ならば早速ですが、やはりもう少し戦闘訓練としてテクニックの部分を伸ばさなければ流石に第3堡塁は厳しいと思います、我々現役の隊員でも恐らく厳しい攻略目標ですから、素人の集まりでは・・・。」
龍二「素人の集まりでは、何でしょう?具体的に現状をどう思いますか?」
郡司「では言わせて頂きます、焼け石に水です。」
龍二「・・つまり無意味と。」
郡司「流石にそこまで言いませんが、このまま突撃しても勝ち目が見えて来ません。」
龍二「でしょうね。それでは本日お集まり頂いた理由について話しましょう。」
話は明らかに途中であったが、ここで龍二は核心に触れようとしていた。
龍二「正直な感想で問題ない、特に軍以外の学校の皆は遠慮なく答えてほしい。今の訓練を厳しいと感じている者はどのくらいいる?」
会場は少しざわめいた。
それは誰もが感じている内容だからである。
そう、地味にして辛いのである。
特に一般高校から参加している生徒達は、工科学校や防大生と異なり、放課後や早朝に集まり、貴重な休みまで潰して訓練に明け暮れた。
一般の生徒は、武装や背嚢こそないものの、もう少し軍隊らしい、いわゆる格好いい訓練というものを期待していたのである。
ところが現実は、集まれば戦闘服に半長靴で、ひたすらゆっくり走るという訓練の繰り返しである。
それも一体何の意味があるのかすら伝えられないままである。
龍二の問いに、生徒の代表達は控えめながらも多数の手が挙げられた。
龍二「なるほど、無理もない。それではこれからここで語られることは、一切口外無用ということでお願いしたい。」
その部屋ですらリスクはあった。
この日集められた部屋は、国防大学校の地下に作られた模擬戦闘指揮所である。
この時代であっても、完全な盗聴と、その防護は完成していないのである。
結局、優れた盗聴機材が完成すれば、その防護も少し遅れて追いつくという鼬ごっこである。
この時代の情報戦は、通常戦力と同等クラスで扱われていた。
そのため龍二は、外部から完全遮断されたこの空間を会議場所に選んだのである。
しかしその真意は更に別の所にもあった。
龍二「本訓練は第一師団情報部を欺く囮訓練だ。流石に本訓練をそのまま日中に続けていれば、師団に作戦がバレてしまう。これからその具体的な訓練内容について話す。」
一同は息を飲んだ、あの三枝中尉から、いよいよ具体的な作戦内容が語られる。
それは軍事の素人である一般高校の生徒達ですら高揚を抑えきれないほどである。
龍二「明日の夜以降、毎晩指定された生徒は、54連隊の指導部の指示に従い、夜間訓練を実施する。この訓練は現役であっても非常に厳しい訓練だ。従って指定された者のみの訓練とする。」
郡司「具体的にどのような内容ですか?」」
龍二「隠密訓練です。敵に一切察知されずに目的地まで前進する要領の取得です」
北条「いや、流石に俺たちでもこの素人集団をそんなレベルまで、それもこの短期間に教え込むなんて無理だぞ、ねえ。」
会場はざわめいていた、54連隊のメンバーも些か不満な表情を浮かべるもの、もはや呆れて苦笑いをする者までいた。
郡司「我々はそんな話を今聞いたばかりです。中尉は若いからご存じないかもしれませんが、教育をするには、教育者の訓練、設備、資材の準備、レッスンプランの作成と、色々と段取りがあるんです。急に言われても。」
龍二は少し笑みを浮かべると堂々とした態度でこう語った。
龍二「実は私に策があります。この訓練は直接私の指揮下で行います、郡司曹長以下の指導部は私の指揮下に入り、隠密行動訓練の支援をお願いします。」
イタズラっぽい笑みを浮かべて郡司は了承した、また郡司は大変な興味があった、この天才肌の男が、一体どんな訓練を見せてくれるのだろうか。
そしてその答えは早速その日の夜に明らかになるのである。
龍二「みんな、今日は忙しい中集まってもらってありがとう。訓練期間は半分を過ぎ、もう後がない。ここで皆の意見を聞いてみたい。」
一同は少し驚いた表情を浮かべた。
と言うのも、今日この日に至るまで、龍二の口から、具体的な内容の一切は語られることが無かった。
いわゆる防大生徒会の独断、むしろ龍二のワンマンな印象を否めないでいた。
郡司「ならば早速ですが、やはりもう少し戦闘訓練としてテクニックの部分を伸ばさなければ流石に第3堡塁は厳しいと思います、我々現役の隊員でも恐らく厳しい攻略目標ですから、素人の集まりでは・・・。」
龍二「素人の集まりでは、何でしょう?具体的に現状をどう思いますか?」
郡司「では言わせて頂きます、焼け石に水です。」
龍二「・・つまり無意味と。」
郡司「流石にそこまで言いませんが、このまま突撃しても勝ち目が見えて来ません。」
龍二「でしょうね。それでは本日お集まり頂いた理由について話しましょう。」
話は明らかに途中であったが、ここで龍二は核心に触れようとしていた。
龍二「正直な感想で問題ない、特に軍以外の学校の皆は遠慮なく答えてほしい。今の訓練を厳しいと感じている者はどのくらいいる?」
会場は少しざわめいた。
それは誰もが感じている内容だからである。
そう、地味にして辛いのである。
特に一般高校から参加している生徒達は、工科学校や防大生と異なり、放課後や早朝に集まり、貴重な休みまで潰して訓練に明け暮れた。
一般の生徒は、武装や背嚢こそないものの、もう少し軍隊らしい、いわゆる格好いい訓練というものを期待していたのである。
ところが現実は、集まれば戦闘服に半長靴で、ひたすらゆっくり走るという訓練の繰り返しである。
それも一体何の意味があるのかすら伝えられないままである。
龍二の問いに、生徒の代表達は控えめながらも多数の手が挙げられた。
龍二「なるほど、無理もない。それではこれからここで語られることは、一切口外無用ということでお願いしたい。」
その部屋ですらリスクはあった。
この日集められた部屋は、国防大学校の地下に作られた模擬戦闘指揮所である。
この時代であっても、完全な盗聴と、その防護は完成していないのである。
結局、優れた盗聴機材が完成すれば、その防護も少し遅れて追いつくという鼬ごっこである。
この時代の情報戦は、通常戦力と同等クラスで扱われていた。
そのため龍二は、外部から完全遮断されたこの空間を会議場所に選んだのである。
しかしその真意は更に別の所にもあった。
龍二「本訓練は第一師団情報部を欺く囮訓練だ。流石に本訓練をそのまま日中に続けていれば、師団に作戦がバレてしまう。これからその具体的な訓練内容について話す。」
一同は息を飲んだ、あの三枝中尉から、いよいよ具体的な作戦内容が語られる。
それは軍事の素人である一般高校の生徒達ですら高揚を抑えきれないほどである。
龍二「明日の夜以降、毎晩指定された生徒は、54連隊の指導部の指示に従い、夜間訓練を実施する。この訓練は現役であっても非常に厳しい訓練だ。従って指定された者のみの訓練とする。」
郡司「具体的にどのような内容ですか?」」
龍二「隠密訓練です。敵に一切察知されずに目的地まで前進する要領の取得です」
北条「いや、流石に俺たちでもこの素人集団をそんなレベルまで、それもこの短期間に教え込むなんて無理だぞ、ねえ。」
会場はざわめいていた、54連隊のメンバーも些か不満な表情を浮かべるもの、もはや呆れて苦笑いをする者までいた。
郡司「我々はそんな話を今聞いたばかりです。中尉は若いからご存じないかもしれませんが、教育をするには、教育者の訓練、設備、資材の準備、レッスンプランの作成と、色々と段取りがあるんです。急に言われても。」
龍二は少し笑みを浮かべると堂々とした態度でこう語った。
龍二「実は私に策があります。この訓練は直接私の指揮下で行います、郡司曹長以下の指導部は私の指揮下に入り、隠密行動訓練の支援をお願いします。」
イタズラっぽい笑みを浮かべて郡司は了承した、また郡司は大変な興味があった、この天才肌の男が、一体どんな訓練を見せてくれるのだろうか。
そしてその答えは早速その日の夜に明らかになるのである。
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