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小原台の1期生
第15話 ご卒業後は陸軍ですか?海軍ですか?
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「お久しぶりですわ幸様、そちらの方々はご学友の方々ですか?」
涼子による、上品を絵に描いたような応対、もちろん東海林涼子の、あくまで自分たちは庶民とは異なる別世界の住人であることを表現している。
それは憧れの徳川幸と親しげに、同じ男装で訪問した、他の3名に対する宣戦布告ともとれるものであった。
「ああ、紹介する、同期生の三枝、如月、城島だ」
三枝、、、城島、、この時、涼子が宣戦布告した相手が、まさかあの三枝家真陰流宗家の三枝龍二であり、隣にいる日焼けした男性が城島ということは、あの新国立競技場での死闘を繰り広げた、北勢高校と佳一高校のサッカー部キャプテン同士であることを指す。
浮き世離れしている涼子ですら、容易に理解できた。
これは手強い者達を引き連れて訪問したものだと思う反面、さすがは幸様、行く先々でその手腕を発揮なされていると、再び惚れ惚れとしてしまうのである。
しかし、もう一人の如月という男子は、あまり見覚えがないものの、如月という名前にはどうも引っかかるものがあった。
「、、なあ、三枝、ちょっと居心地悪いんだが」
城島がその場の雰囲気を感じ、期待していた女子校とはかなり違うということと、なんでついてきてしまったのだろうと複雑に後悔するのである。
「・・・三枝、、そうですわ、三枝先生のご身内の方ですわよね、それならば先生をお呼びしなくてはですわね。だれか、三枝先生をお呼びになってくださいな」
龍二は慌てて否定する
「いや、いやいや、先生もきっとお忙しいでしょうから、気になさらず」
この時の龍二の反応に、幸はピンと来たのである。
そして思い出した、三枝先生は本来、自分たちの卒業と同時に、結婚退職する予定であったが、あのドグミス日本隊の指揮官、三枝啓一の戦死により、現在も勤め続けていることを。
そんな時、幸は閃いたのである。
涼子をこっそり手招きし、そしてある準備をさせるのである。
「東海林、ちょっとお願いがあるんだが、確か演劇部の倉庫に、黒髪ストレートのウィックがあったよな、それと私に合う制服一式、大至急揃えてくれ」
突然のご指名に、うっとりしながら東海林涼子は
「もちろん完璧にご準備致しますわ。少々お待ちくださいませ」
と言いながら、素早く演劇部の部室へ立ち去るのである。
東海林涼子の居なくなったその一団は、指揮官を失い少々困惑していたが、幸の明るい一言で、その場はすぐに打ち解けた。
「やあ、久しぶりだなあ、みんな元気そうで。部活は順調かい?」
すぐに幸を囲み、ファンの集いが始まる。
しばらくの間、男性陣は置き去りにされていたが、幸が3人に水を向けたのをきっかけに、質問責めが始まった。
特に、如月優への質問は集中していた。
「高校はどちらご出身なんですか?ご自宅は?、好きな食べ物は?ご卒業後は陸軍ですか?海軍ですか?」
お嬢様学校とはいえ、年頃の女子達である。
それでも小中高の一貫教育で、男性に免疫の無い彼女たちにとって、中性的で色白、少年のような如月が話しやすく、近づきやすいのであった。
もちろん本音は、三枝や城島のことを知りたいし、友達になりたいと感じる女子も多かったが、本物の殿方は、まだ少し怖い、という妙なブレーキがかかってしまうのである。
まあ、如月優も、一応本物の「殿方」ではあるのだが、そこは群衆心理である。
そんな中、東海林涼子が部室から帰り
「幸様、ご準備が整いました、さ、こちらへ」
と幸を案内する。
「すまない、3人はちょっと待っていてくれ、すぐに用を済ませるから。あ、君たち、彼らをもてなしてくれたまえ、退屈させないようにね」
防大の制帽越しに、そんな幸の男性らしい姿に悲鳴を上げながら、どこか恥ずかしそうに、少し間があいてしまうのである。
「あのう、よろしければ、あちらにお茶などを楽しめるスペースがありますので、そちらへどうぞ・・・」
一人が勇気を出して申し出ると、この指揮者の居なくなった不思議な集団は、捕虜のごとく無抵抗に、ぞろぞろと移動を開始するのである。
その頃、演劇部の部室では、幸と涼子と、ファンクラブで一番背の大きな会員との3人で、慌てて着替えが行われていた。
幸は大学校内では小さい部類だが、女子校内においてはかなりの長身に入り、合う制服は限られていた。
「ああ、私はてっきり幸様が男性になられて涼子の元へお戻りになったのかと、喜んでおりましたのに」
下着姿の幸が呆れ顔でこう話した。
「おまえ、さすがにそれは無いだろ。相変わらずだなあ。国防大学校の制服は男女同じなんだよ。海軍なんて高校卒業してすぐの水兵はセーラーなんだぞ」
男子のセーラーに興味はないものの、幸の脱ぎたての詰襟制服には興味津々である。
しかし、何てサービス精神の旺盛な大学校なんだろうと、国防大学校に対する尊敬の念が押さえられないでいた。
そして、鎌倉聖花学院の制服に身を包むと、つい数ヶ月前まで同じ学院にいた幸が戻ってきたようで、涼子の涙腺は少しだけ緩むのである。
「さて仕上げと行くか、、フフ、あの3人に目に者見せてやる!」
そう言うと黒髪、ロングのストレートのウィックを装着し、姿見の鏡の前に颯爽と立つのである。
「まあ、素敵、ストレートヘアも良くお似合いですわ」
それは本当に良く似合っていた。
装着した幸本人も、正直予想以上の出来であった。
制服を貸したファンクラブの彼女も、自分の制服を着用した幸の姿に、思わず倒れる寸前に茹で上がっていた。
「ようし、これならいける!おい東海林、とりあえず三枝を呼んできてくれないか、あの一番背の高い、なんか無愛想な奴だ」
そう言うと涼子は直ぐに龍二達の元へ向かった。
改めて鏡を見直し、写った自分が誰かに似ているような気がしていた、が、幸の性格上、あまりこの種のことを気にしない性格であったため、まあいいかと深く考えなかった。
後になってみれば、少しは考えておくべきであったと後悔する事になるのだが。
涼子による、上品を絵に描いたような応対、もちろん東海林涼子の、あくまで自分たちは庶民とは異なる別世界の住人であることを表現している。
それは憧れの徳川幸と親しげに、同じ男装で訪問した、他の3名に対する宣戦布告ともとれるものであった。
「ああ、紹介する、同期生の三枝、如月、城島だ」
三枝、、、城島、、この時、涼子が宣戦布告した相手が、まさかあの三枝家真陰流宗家の三枝龍二であり、隣にいる日焼けした男性が城島ということは、あの新国立競技場での死闘を繰り広げた、北勢高校と佳一高校のサッカー部キャプテン同士であることを指す。
浮き世離れしている涼子ですら、容易に理解できた。
これは手強い者達を引き連れて訪問したものだと思う反面、さすがは幸様、行く先々でその手腕を発揮なされていると、再び惚れ惚れとしてしまうのである。
しかし、もう一人の如月という男子は、あまり見覚えがないものの、如月という名前にはどうも引っかかるものがあった。
「、、なあ、三枝、ちょっと居心地悪いんだが」
城島がその場の雰囲気を感じ、期待していた女子校とはかなり違うということと、なんでついてきてしまったのだろうと複雑に後悔するのである。
「・・・三枝、、そうですわ、三枝先生のご身内の方ですわよね、それならば先生をお呼びしなくてはですわね。だれか、三枝先生をお呼びになってくださいな」
龍二は慌てて否定する
「いや、いやいや、先生もきっとお忙しいでしょうから、気になさらず」
この時の龍二の反応に、幸はピンと来たのである。
そして思い出した、三枝先生は本来、自分たちの卒業と同時に、結婚退職する予定であったが、あのドグミス日本隊の指揮官、三枝啓一の戦死により、現在も勤め続けていることを。
そんな時、幸は閃いたのである。
涼子をこっそり手招きし、そしてある準備をさせるのである。
「東海林、ちょっとお願いがあるんだが、確か演劇部の倉庫に、黒髪ストレートのウィックがあったよな、それと私に合う制服一式、大至急揃えてくれ」
突然のご指名に、うっとりしながら東海林涼子は
「もちろん完璧にご準備致しますわ。少々お待ちくださいませ」
と言いながら、素早く演劇部の部室へ立ち去るのである。
東海林涼子の居なくなったその一団は、指揮官を失い少々困惑していたが、幸の明るい一言で、その場はすぐに打ち解けた。
「やあ、久しぶりだなあ、みんな元気そうで。部活は順調かい?」
すぐに幸を囲み、ファンの集いが始まる。
しばらくの間、男性陣は置き去りにされていたが、幸が3人に水を向けたのをきっかけに、質問責めが始まった。
特に、如月優への質問は集中していた。
「高校はどちらご出身なんですか?ご自宅は?、好きな食べ物は?ご卒業後は陸軍ですか?海軍ですか?」
お嬢様学校とはいえ、年頃の女子達である。
それでも小中高の一貫教育で、男性に免疫の無い彼女たちにとって、中性的で色白、少年のような如月が話しやすく、近づきやすいのであった。
もちろん本音は、三枝や城島のことを知りたいし、友達になりたいと感じる女子も多かったが、本物の殿方は、まだ少し怖い、という妙なブレーキがかかってしまうのである。
まあ、如月優も、一応本物の「殿方」ではあるのだが、そこは群衆心理である。
そんな中、東海林涼子が部室から帰り
「幸様、ご準備が整いました、さ、こちらへ」
と幸を案内する。
「すまない、3人はちょっと待っていてくれ、すぐに用を済ませるから。あ、君たち、彼らをもてなしてくれたまえ、退屈させないようにね」
防大の制帽越しに、そんな幸の男性らしい姿に悲鳴を上げながら、どこか恥ずかしそうに、少し間があいてしまうのである。
「あのう、よろしければ、あちらにお茶などを楽しめるスペースがありますので、そちらへどうぞ・・・」
一人が勇気を出して申し出ると、この指揮者の居なくなった不思議な集団は、捕虜のごとく無抵抗に、ぞろぞろと移動を開始するのである。
その頃、演劇部の部室では、幸と涼子と、ファンクラブで一番背の大きな会員との3人で、慌てて着替えが行われていた。
幸は大学校内では小さい部類だが、女子校内においてはかなりの長身に入り、合う制服は限られていた。
「ああ、私はてっきり幸様が男性になられて涼子の元へお戻りになったのかと、喜んでおりましたのに」
下着姿の幸が呆れ顔でこう話した。
「おまえ、さすがにそれは無いだろ。相変わらずだなあ。国防大学校の制服は男女同じなんだよ。海軍なんて高校卒業してすぐの水兵はセーラーなんだぞ」
男子のセーラーに興味はないものの、幸の脱ぎたての詰襟制服には興味津々である。
しかし、何てサービス精神の旺盛な大学校なんだろうと、国防大学校に対する尊敬の念が押さえられないでいた。
そして、鎌倉聖花学院の制服に身を包むと、つい数ヶ月前まで同じ学院にいた幸が戻ってきたようで、涼子の涙腺は少しだけ緩むのである。
「さて仕上げと行くか、、フフ、あの3人に目に者見せてやる!」
そう言うと黒髪、ロングのストレートのウィックを装着し、姿見の鏡の前に颯爽と立つのである。
「まあ、素敵、ストレートヘアも良くお似合いですわ」
それは本当に良く似合っていた。
装着した幸本人も、正直予想以上の出来であった。
制服を貸したファンクラブの彼女も、自分の制服を着用した幸の姿に、思わず倒れる寸前に茹で上がっていた。
「ようし、これならいける!おい東海林、とりあえず三枝を呼んできてくれないか、あの一番背の高い、なんか無愛想な奴だ」
そう言うと涼子は直ぐに龍二達の元へ向かった。
改めて鏡を見直し、写った自分が誰かに似ているような気がしていた、が、幸の性格上、あまりこの種のことを気にしない性格であったため、まあいいかと深く考えなかった。
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