自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

文字の大きさ
上 下
371 / 390
悲しみを、深い愛を

第369話 これがMIMなのか?

しおりを挟む
「これが、、、MIMミムなのか?」

 そこには、何か肉の塊のようなものが、椅子の上に置かれていた。
 一見すると、人間の背中のようにも見える、、、だが、ジャガイモのように、、、塊なのだ。

 、、、、動いている!。

 真っ暗闇なのに、肉の塊が動いているのが解る。

「何をどうしたら、こんな風になるんだ?」

「拷問です、痛覚のリミッターを解除させる装置、これによって、AIの痛覚、つまり痛みは、人間の何百倍にも調整可能です、、、痛覚が限界を越えると、痛みの範囲を縮めようとします。手足などの切り捨てられる末端を、徐々に切り捨てようと、四肢は捥げはじめるのです。そして、彼女らAIは、死ぬ事も許されないので、これくらいしか苦痛を紛らわす方法がありません、、、、私でも、これはきっと耐えられないでしょうな、人間は、本当に残酷な事を思いつくものです」

 GMという存在が、終わらせてあげて欲しいと俺に流し込んできたイメージは、多分これだ。
 、、、可愛そうに、早い段階から、手足を切断し、苦痛から逃れようともがき、人格を崩壊させたのだろう。
 そんな俺の頭に、一瞬だけ、MIMの元気だった頃のイメージが流れ込んで来た、、、どうして?。
 MIMの姿は、死んだシズと同じくらいの年齢で、シズとはまた少し違った大人しい印象を受けたが、やはり可愛らしい少女の姿であった。

 待っててくれな、辛いと思うが、マーシャンをやったら、君を殺してあげるから、、、、きっと、他に救う手立てなんてない、どんなリハビリも療養も、もはや君を癒す事は出来ないだろう。
 こんな悲しい結論しか、俺は出せない。
 こんなくだらない、AIへの差別しか出来ないキル・ザ・ドールの連中を、俺は生かしておくことは、多分出来ない。

 シズの仇、MIMの仇、必ず討たせてもらう、必ず。

 そして、MIMの部屋から俺と管理人が戻ると、俺は再びマーシャンのいるタイムマシンに向かって歩き出した。
 そして、管理人には既に、俺からある事を依頼していた。
 最初は管理人もそれを拒んだが、キル・ザ・ドールの蛮行を許した管理機能としての責任は取らなければならないだろう、と付け加えると、彼は俺の要求を呑むしかなかった。

「GF、それでは、実行します」

「ああ、よろしく頼む」

 玲子君が、俺の方を不安そうな目で追う。
 そして、彼女も何か気付いたようだった。

「雄介様、お止めください、貴方様はこの世界には無くてはならない存在です、、、、私にとっても、、、」

 悲しい表情を浮かべる玲子君も、足を撃たれていて、今は俺の方へ来ることが出来ない。

「カシラビ、玲子君を頼む、ゼンガ、ムスキ、世話になった、元気でな」

「なに?、なんなの?、ねえユウスケ、それじゃあお別れの言葉みたいじゃない、どうしてそんなこと言うの?」

 すると、カシラビが、何かを理解したように、ムスキを諭してくれた。
 「、、、、ユウスケが、きっと何とかしてくれる」と。

 そして、次の瞬間、玲子君、ゼンガ、カシラビ、ムスキの4人は、管理人によって、エラーサイトに飛ばされたのだった。



「え?、、、、ここは?、、ドットスの王都?」

 ムスキが、キョトンとした表情で、周囲を見回す、すると、そこは懐かしい生まれ故郷、ドットスの王都であった。

「、、、何で俺たちがここに?、いや、ユウスケはどうなった?、管理人は?、一体何がなんやらさっぱりだぜ」

 カシラビがそわそわと落ち着かない、何しろここまで運んできた管理人の姿もない。
 そして、カシラビは、ある方向を見て、悟ったのだ、小さくうなだれて、涙を流す美鈴玲子を見て。

「雄介様、、、貴方はどうしてこのような、、、私の任務は、雄介様をお守りすることなのに、、」

 美鈴玲子には、このドットスの王都に自分がいる意味を、一番良く理解していた。
 それが、斎藤雄介の覚悟であることも含めて。




「よう、マーシャン、、、どうした慌てて」

 旧海軍航空隊の広い格納庫には、MIMの本体であるタイムマシーンが置かれていた。
 マーシャンのタイムマシーンも、先の戦いで少し傷ついているようで、修理の必要があるようだった。
 しかし、シズのような、自己修復プログラムは働いておらず、ここは人力に頼るしかないようだ。

「AIを大事にしないから、そんなことになるんだ」

「OH、ミスターGF、余裕のようですね、聞いているとは思いますが、あなたも私を撃つことは出来ない、その拳銃を下げた方がいいですねえ」

「安心しろ、他のメンバーはもう退避させた、この世界にはいない、だから、この世界が消え去っても、何も問題ない、俺が消えても、玲子君たちGFのメンバーは、必ずお前たちキル・ザ・ドールを必ず追い詰める」

「フフフ、、、貴方は何も理解されていない、結局人類は、貴方が居なければ滅ぶでしょう、この世界とともに。複数ある「可能性」という宇宙も、結局GFという存在無くしては次のステージに上がる事が出来ない。だから貴方は、私と心中なんて出来ないんですよ。この勝負、私の勝です」

 マーシャンが勝ち誇った顔で俺にそう言い放った後、俺はマーシャンの腹部に3発の銃弾を撃ち込んだ。
 静寂が支配する格納庫に銃声が鳴り響くと同時に、マーシャン・ディッカーソンは弱弱しく崩れ落ちる。

「、、、、そんな、、、、世界の崩壊と引き換えに、、、賭けに出たなんて、、、貴方は本気ですか?」

 冷や汗と血と、なんだかよく解らない体液で、マーシャンの全身が濡れて行くのが解った。


 マーシャーンは間もなく絶命するだろう。


 そして、その瞬間に結論が出るんだ、この世界の崩壊を賭けた、俺の勝負の行方がな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちゃぼ茶のショートショート 「フラッシュモブ」

ちゃぼ茶
ミステリー
あなたの人生はあなたのもの、私の人生は私のもの……とは限らない人生も面白い

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

『量子の檻 -永遠の観測者-』

葉羽
ミステリー
【あらすじ】 天才高校生の神藤葉羽は、ある日、量子物理学者・霧島誠一教授の不可解な死亡事件に巻き込まれる。完全密室で発見された教授の遺体。そして、研究所に残された謎めいた研究ノート。 幼なじみの望月彩由美とともに真相を追う葉羽だが、事態は予想外の展開を見せ始める。二人の体に浮かび上がる不思議な模様。そして、現実世界に重なる別次元の存在。 やがて明らかになる衝撃的な真実―霧島教授の研究は、人類の存在を脅かす異次元生命体から世界を守るための「量子の檻」プロジェクトだった。 教授の死は自作自演。それは、次世代の守護者を選出するための壮大な実験だったのだ。 葉羽と彩由美は、互いへの想いと強い絆によって、人類と異次元存在の境界を守る「永遠の観測者」として選ばれる。二人の純粋な感情が、最強の量子バリアとなったのだ。 現代物理学の限界に挑戦する本格ミステリーでありながら、壮大なSFファンタジー、そしてピュアな青春ラブストーリーの要素も併せ持つ。「観測」と「愛」をテーマに、科学と感情の境界を探る新しい形の本格推理小説。

未来から来た美女の俺

廣瀬純一
SF
未来から来た美女が未来の自分だった男の話

少年館

華岡光
ミステリー
とあるヨーロッパのある国の田舎街には上中流階級の男性の欲望を満たすための秘密の場所があった。彼等からは"蜜の園"と呼ばれるその場所はおぞましい社性交界の場でもあった。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

処理中です...