自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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悲しみを、深い愛を

第368話 出生の秘密

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 神奈川県は追浜《おっぱま》に、旧横須賀海軍航空隊、その第1飛行場がそこにはあった。
 かつては海軍を代表する強力な航空隊が存在していたが、今では見る影もない。
 スクラップ待ちの日本海軍の航空機が、未だ滑走路の至る所に放置されていた。
 かつては、真珠湾を壊滅させた歴戦の航空隊。
 その飛行場には、今は米軍の最新鋭機が駐機している。
 そして、マーシャンの保有しているP-51が5機も。

 俺たちは分散して、キル・ザ・ドールの戦闘力を一気に壊滅させる作戦を立てていた。
 そして、玲子君はカシラビとともに、マーシャン・ディッカーソンが居るであろう、航空機格納庫に向かった。

 ムスキは、その怒りに任せて、あのエラーサイトで使っていた杖を天空にかざすと、一気に地面へ突き立てた。
 杖の先端についている宝石が、まるで電球のように明るく光る、、、しかし、その明るさは尋常ではなかった。
 俺が見たムスキの杖は、懐中電灯程度の明るさだったが、今回は以上な発光現象だ。
 怒れるムスキの杖は、コンクリートで固められた滑走路に稲光のような閃光を走らせた。
 キル・ザ・ドールの戦闘機は、その閃光が到達するや、燃料タンクと共に大爆発を起こした。
 その炎をバックに、重機関銃を持ったゼンガが基地内の航空機を次々と破壊してゆく。
 突然のことに、基地警備に当たっていた米兵も、日本人ガーディアンも、大慌てで飛び出してくる。

 そんな時だった、飛び出してきた兵士に混ざって、玲子君とカシラビの姿があった。

「どうした、玲子君、大丈夫か?」

 俺が叫んだその時、拳銃を構えるマーシャンの姿が見えた。

 遠くてもそれは、マーシャンが発砲したのが解る。

「玲子君!」

 何故だ?、どうして玲子君の方が追い込まれているんだ?
 俺は、北村少佐の形見でもある、南部自動拳銃を抜いて、マーシャンに向けた、、、殺さなければいいんだよな。

「いけません雄介様、マーシャンを撃ってはいけません」

 その声が聞こえたと同時に、俺はマーシャンの近くに2発発射した。
 だが、玲子君が撃ってはいけない、という意味が、どうにも理解出来ない。
 俺が21世紀の人間だから、殺せないという理屈は解るのだが、玲子君の慌て方が尋常ではなかった。
 玲子君は、マーシャンに撃たれて格納庫前のハンガーに倒れ込んでいる、カシラビも玲子君を庇いつつ、反撃が出来ていない。
 俺は、玲子君の制止も聞かず、さらに数発の弾丸を至近弾で撃ち込んだ。

「だめです雄介様、発砲はお控えください」

「おい、管理人、玲子君、少し変じゃないか?、どうして反撃しないんだ?」

「、、、、、これは、、なるほど、キル・ザ・ドールの切り札という訳ですか」

「なんだよ管理人、君でもマーシャンを殺せないのか?」

「私は管理人、直接事象に介入する事は出来ません」

 俺は玲子君の方向へ向かって必死で走っていた。
 その後ろから、再び管理人が俺を飛ばした。
 一気に玲子君までの距離が短縮し、俺は玲子君の目の前に居た。
 そして、管理人の存在に気付いたマーシャンは、格納庫方向へ向け走り出した。
 マーシャンの背中に向け、拳銃を向ける俺を、玲子君は痛みに耐えながら、拳銃を持った腕にしがみついた。
 
「ダメです雄介様、マーシャンは、私も、あなたも、そして異世界の3人も殺害する事が出来ません」

「何で?、一体何がそこまでマーシャンの殺害を拒むんだ」

 すると、管理人が後ろから冷静に、こう述べた。

「マーシャン・ディッカーソンの出生年代が、、、、特定出来ないのです」

 は?、何言っている?、マーシャンは玲子君と同じ時代から来たGF職員だろ、、、、、まさか!
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