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悲しみを、深い愛を
第364話 悲しみを、深い愛を
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横須賀の軍港に到着して二日が過ぎた。
俺たちは、全員どうにもならない喪失感を抱えたままでいた。
シズを失った今、体内ディバイスを入れていても、通信母体が無い状況では、何も繋がっていないのと変わりがない。
そんな事実が、より一層、俺たちの喪失感を向上させていた。
ムスキは、早川中尉と北村少佐による体当たり攻撃と、シズの喪失による心の傷が、予想以上の深さで突き刺さり、あまり言葉を発しなくなってしまった。
言葉、、、不思議なもので、この言葉ってやつだけは、スタンドアローンでも機能する。
言語野に直接作用して、言わば学習を完了している状態なんだとか。
当の俺は、、、、あの新妻のシズを喪失したショックが、やはり予想以上にこたえていて、口数が少なくなっていた。
そもそも、タイムマシーンであるシズがいなくなった今、俺たちはどうやって元の世界に帰ればいいのか。
それでも、なんとか異世界から義勇参加してくれた3人だけでも、帰してあげなければ。
二日目の夜、俺は不思議な夢を見た。
シズの事を考えながら、やはり眠れない夜を過ごす中で、それは睡眠と覚醒の間で起こった事だった。
何か、白い霧の中にでもいるような、不思議な感触だった。
これは、、、なんとなく、シズの出現する時と似ていたが、いや、でもこれはシズではない、、、、でも、体内ディバイスを通じて来ている感覚なのだろうか?。
俺は、らしくもない感覚を感じていた。
それは「愛」だ。
狂おしいほどに、それでいて切なく、、、こんな深い愛を、俺は生まれて初めて感じていた。
誰だ?、シズか?、これはシズなのか?。
幽霊でも、何でもいい、シズであってほしい、そう思った。
その白い「何か」に触れると、俺のそんな想いに同調しつつ、彼女の悲しみを、深い愛を、手を通して伝わってくるのだ。
そして、俺は目覚めた。
頬には涙が流れた跡があった。
夢によくある現象、起きたらそれがよく思い出せない、あれだ。
何か、とても大事な、大切な人と会っていたように感じる、でも、それが誰だか解らない。
でも、何かキーワードのように覚えているのが「愛」「終わらせてあげて」「GM」の三つだけ。
GMは、、、なんだか過去にも聞いたな、誰なのか、ヒントも無いが、、、終わらせてあげて、って誰が、何を?。
俺は朝食に集まった全員の前で、その見た夢を、そのまま伝えてみた。
「たしかに、おかしな夢ですね、多分、それは、体内ディバイスに関係しているとは思うのですが、、、」
玲子君も、その夢には関心があるようだった。
なにしろ、玲子君と会う前の俺は、そんな夢なんて見ない男だったから。
そして、ムスキが何か言いたそうにしていた。
「、、、どうした?、ムスキ、、、大丈夫か?」
「ユウスケ、私ね、ちょっと気になっていることがあって、、、みんな、もしかして同じなんじゃないかと思って、だから聞くね、最近、何か、変なノイズ感じない?」
、、、実は、俺も少し近いノイズを感じていた。
ほんの一瞬なんだけど、溜め息のような、「ッツ」、みたいな、そんな感じのノイズ。
そうか、あれは俺だけじゃないんだ。
「他のみんなは、感じるか?、実は俺も、ちょっとそれに近いものを感じていたんだ、、、シズがいなくなって、頭に直接話しかけられることが無くなったから、気が付いたのかもしれない」
「雄介様、それは有り得ません、私達のディバイスは、シズを通じていなければ、意志疎通出来ませんので」
「しかし、原爆が起爆した時、俺たちもノイズは拾うだろ、それと同じで、通信が出来なくても、ノイズって何か拾う事って、あるんじゃないか?」
玲子君は、しばらく考え込んだ。
俺は、もしかしたらシズの残像でも残っているのではと期待したが、玲子君の回答は、その類いでは無かった。
「あまり考えたくは無いのですが、、、可能性があるとすれば、、、」
あるとすれば?
俺たちは、全員どうにもならない喪失感を抱えたままでいた。
シズを失った今、体内ディバイスを入れていても、通信母体が無い状況では、何も繋がっていないのと変わりがない。
そんな事実が、より一層、俺たちの喪失感を向上させていた。
ムスキは、早川中尉と北村少佐による体当たり攻撃と、シズの喪失による心の傷が、予想以上の深さで突き刺さり、あまり言葉を発しなくなってしまった。
言葉、、、不思議なもので、この言葉ってやつだけは、スタンドアローンでも機能する。
言語野に直接作用して、言わば学習を完了している状態なんだとか。
当の俺は、、、、あの新妻のシズを喪失したショックが、やはり予想以上にこたえていて、口数が少なくなっていた。
そもそも、タイムマシーンであるシズがいなくなった今、俺たちはどうやって元の世界に帰ればいいのか。
それでも、なんとか異世界から義勇参加してくれた3人だけでも、帰してあげなければ。
二日目の夜、俺は不思議な夢を見た。
シズの事を考えながら、やはり眠れない夜を過ごす中で、それは睡眠と覚醒の間で起こった事だった。
何か、白い霧の中にでもいるような、不思議な感触だった。
これは、、、なんとなく、シズの出現する時と似ていたが、いや、でもこれはシズではない、、、、でも、体内ディバイスを通じて来ている感覚なのだろうか?。
俺は、らしくもない感覚を感じていた。
それは「愛」だ。
狂おしいほどに、それでいて切なく、、、こんな深い愛を、俺は生まれて初めて感じていた。
誰だ?、シズか?、これはシズなのか?。
幽霊でも、何でもいい、シズであってほしい、そう思った。
その白い「何か」に触れると、俺のそんな想いに同調しつつ、彼女の悲しみを、深い愛を、手を通して伝わってくるのだ。
そして、俺は目覚めた。
頬には涙が流れた跡があった。
夢によくある現象、起きたらそれがよく思い出せない、あれだ。
何か、とても大事な、大切な人と会っていたように感じる、でも、それが誰だか解らない。
でも、何かキーワードのように覚えているのが「愛」「終わらせてあげて」「GM」の三つだけ。
GMは、、、なんだか過去にも聞いたな、誰なのか、ヒントも無いが、、、終わらせてあげて、って誰が、何を?。
俺は朝食に集まった全員の前で、その見た夢を、そのまま伝えてみた。
「たしかに、おかしな夢ですね、多分、それは、体内ディバイスに関係しているとは思うのですが、、、」
玲子君も、その夢には関心があるようだった。
なにしろ、玲子君と会う前の俺は、そんな夢なんて見ない男だったから。
そして、ムスキが何か言いたそうにしていた。
「、、、どうした?、ムスキ、、、大丈夫か?」
「ユウスケ、私ね、ちょっと気になっていることがあって、、、みんな、もしかして同じなんじゃないかと思って、だから聞くね、最近、何か、変なノイズ感じない?」
、、、実は、俺も少し近いノイズを感じていた。
ほんの一瞬なんだけど、溜め息のような、「ッツ」、みたいな、そんな感じのノイズ。
そうか、あれは俺だけじゃないんだ。
「他のみんなは、感じるか?、実は俺も、ちょっとそれに近いものを感じていたんだ、、、シズがいなくなって、頭に直接話しかけられることが無くなったから、気が付いたのかもしれない」
「雄介様、それは有り得ません、私達のディバイスは、シズを通じていなければ、意志疎通出来ませんので」
「しかし、原爆が起爆した時、俺たちもノイズは拾うだろ、それと同じで、通信が出来なくても、ノイズって何か拾う事って、あるんじゃないか?」
玲子君は、しばらく考え込んだ。
俺は、もしかしたらシズの残像でも残っているのではと期待したが、玲子君の回答は、その類いでは無かった。
「あまり考えたくは無いのですが、、、可能性があるとすれば、、、」
あるとすれば?
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