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「Y号作戦」の発動
第352話 津軽海峡
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14潜の艦長、山本提督が一番恐れていたのは、津軽海峡を通過中に襲撃されることだった。
津軽海峡は、青森と北海道の間に位置する狭い海峡だ。
両地が日本軍の管理下にあれば、問題はないのだが、今は日本が占領統治されている状態だ。
そのため、海峡を突破する際に、今や敵か味方かも解らないアメリカ海軍の他、地上を管理するアメリカ陸軍すらこちらに攻撃を仕掛けてくる可能性があった。
津軽海峡でそれをされれば、潜水艦は為す術がない。
特に、窓のない潜水艦が海峡を突破するという行為は、非情に神経を使う
俺たちは、全員が息を潜めて津軽海峡を通過した。
物音一つ立てられない幣束された状況。
異世界から来た3人は随分窮屈そうにしている。
特に、ゼンガは、ただでさえ慣れない乗り物の上に、よりによって潜水艦に乗っているため、ストレスは凄まじいようだった。
、、、、そして、何故かこの津軽海峡は、、、静かだった。
「、、、艦長、敵は仕掛けてきませんね」
「ああ、マーベリック艦長のご乱心だったのなら、それで良いのだが」
「それでも、我々は、核弾頭を搭載した艦です、ご乱心では済みません」
それはもっともな意見だった。
それら驚異から護衛する任務であったはずであり、核弾頭を保持したまま、ソビエトに寝返った場合の保険であったはずなのだ。
それが、ソビエトの高速艇を撃破し、輸送船団を撃沈させ、不足事態はあったものの、おおむねアメリカ側との約束通りに本艦は行動していた。
駆逐艦によって、攻撃される謂われは一切ないはずなのだ。
そして山本は、恐らくはこの作戦に途中から参加し始めた、ディッカーソン大尉が連れている集団が、この異様な状況に影響していると感づいていた。
それでも、この津軽海峡を通過してしまえば太平洋、ともかく母港の横須賀まで帰ってしまえば、、、その後の事は、それからで十分だと思われた。
そして、静かな時間が流れ、、、、
14潜は、津軽海峡を無事に通過する事ができたのである。
「提督、さすがに妙ではありませんか?」
敵の絶好の機会を逃すという行為に、違和感を感じた北村少佐が、山本提督に意見する。
「ああ、、、私もそう思う。もし彼らが我々を沈める気があるのなら、津軽で仕掛けてこないのは明らかに妙だ」
「どうでしょう、一度浮上して、アメリカ海軍と通信してみませんか」
山本も、無線を開くかどうか、迷っていた。
何しろ、事情が不明なままでは危険すぎることも去ることながら、一度でも電波を発射してしまえば位置を特定されてしまう。
もし敵が、本当に14潜を見失っているだけであれば、それは自殺行為になりかねない。
しかし、このまま潜行し続ける訳にも行かず、どこかで浮上しなければならない。
「、、、よし、進路そのまま、15000潜行した後、浮上」
艦内は、浮上準備の号令が逓伝され、緊張の糸がやや緩んだ気がした。
それはプロの潜水艦乗りならば、この海峡突破が、如何に危険な賭であったかを如実に示していた。
「ユウスケ、また浮上するの?」
「ああ、窮屈で悪かったな、ムスキ」
ムスキも、すっかりしおらしくなってしまい、なんだか気の毒だ。
生まれ育った環境と、違う所に連れて来ると言うことは、つまりそう言う事なんだろうと、俺は思った。
有志で来てくれた3人だが、絶対無事に帰してあげないとな。
「艦首排水、微速前進」
いよいよ浮上が開始される。
14潜は、既に日が上がっていることを考慮し、慎重に浮上を試みた。
そして、14潜の乗組員は、想定外の状況に見舞われるのである。
津軽海峡は、青森と北海道の間に位置する狭い海峡だ。
両地が日本軍の管理下にあれば、問題はないのだが、今は日本が占領統治されている状態だ。
そのため、海峡を突破する際に、今や敵か味方かも解らないアメリカ海軍の他、地上を管理するアメリカ陸軍すらこちらに攻撃を仕掛けてくる可能性があった。
津軽海峡でそれをされれば、潜水艦は為す術がない。
特に、窓のない潜水艦が海峡を突破するという行為は、非情に神経を使う
俺たちは、全員が息を潜めて津軽海峡を通過した。
物音一つ立てられない幣束された状況。
異世界から来た3人は随分窮屈そうにしている。
特に、ゼンガは、ただでさえ慣れない乗り物の上に、よりによって潜水艦に乗っているため、ストレスは凄まじいようだった。
、、、、そして、何故かこの津軽海峡は、、、静かだった。
「、、、艦長、敵は仕掛けてきませんね」
「ああ、マーベリック艦長のご乱心だったのなら、それで良いのだが」
「それでも、我々は、核弾頭を搭載した艦です、ご乱心では済みません」
それはもっともな意見だった。
それら驚異から護衛する任務であったはずであり、核弾頭を保持したまま、ソビエトに寝返った場合の保険であったはずなのだ。
それが、ソビエトの高速艇を撃破し、輸送船団を撃沈させ、不足事態はあったものの、おおむねアメリカ側との約束通りに本艦は行動していた。
駆逐艦によって、攻撃される謂われは一切ないはずなのだ。
そして山本は、恐らくはこの作戦に途中から参加し始めた、ディッカーソン大尉が連れている集団が、この異様な状況に影響していると感づいていた。
それでも、この津軽海峡を通過してしまえば太平洋、ともかく母港の横須賀まで帰ってしまえば、、、その後の事は、それからで十分だと思われた。
そして、静かな時間が流れ、、、、
14潜は、津軽海峡を無事に通過する事ができたのである。
「提督、さすがに妙ではありませんか?」
敵の絶好の機会を逃すという行為に、違和感を感じた北村少佐が、山本提督に意見する。
「ああ、、、私もそう思う。もし彼らが我々を沈める気があるのなら、津軽で仕掛けてこないのは明らかに妙だ」
「どうでしょう、一度浮上して、アメリカ海軍と通信してみませんか」
山本も、無線を開くかどうか、迷っていた。
何しろ、事情が不明なままでは危険すぎることも去ることながら、一度でも電波を発射してしまえば位置を特定されてしまう。
もし敵が、本当に14潜を見失っているだけであれば、それは自殺行為になりかねない。
しかし、このまま潜行し続ける訳にも行かず、どこかで浮上しなければならない。
「、、、よし、進路そのまま、15000潜行した後、浮上」
艦内は、浮上準備の号令が逓伝され、緊張の糸がやや緩んだ気がした。
それはプロの潜水艦乗りならば、この海峡突破が、如何に危険な賭であったかを如実に示していた。
「ユウスケ、また浮上するの?」
「ああ、窮屈で悪かったな、ムスキ」
ムスキも、すっかりしおらしくなってしまい、なんだか気の毒だ。
生まれ育った環境と、違う所に連れて来ると言うことは、つまりそう言う事なんだろうと、俺は思った。
有志で来てくれた3人だが、絶対無事に帰してあげないとな。
「艦首排水、微速前進」
いよいよ浮上が開始される。
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