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「Y号作戦」の発動
第342話 桜花43型乙
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「航海長、先ほどの位置から、高速艇が進んだとして、現在地の特定は可能か?」
「はい、恐らくは、、、間もなくウラジオストックに到着します」
「まったく、、、やられたよ、大した奴らだ、こちらの動きを読んでいたのか?」
愕然とする山本は、艦内の側壁にもたれかかり、そのまま天を仰いだ。
しかし、軍人としてすべきことはまだある、それが意味することも。
「伝令、甲型搭乗員の2名を呼んできてくれ」
「山本提督、我々はここにいます」
精悍な顔立ちで山本を真っすぐ見つめる二人のパイロット。
北村は、ベニオンとのやり取りを聞いていた。
そして、この状況を打開させることが出来るのは、もはや自分たち2名しかいないことも、察していた。
「ようやくこの時が来ました、我々が出ます」
山本は、少し間を置いて、「やってくれるか?」と二人に聞いた。
二人は少し笑顔で「もちろんです」とだけ答えた。
しかし、山本の発案は、甲型1機による作戦であった。
「よろしいのですか提督、目標の位置は特定出来ています、ウラジオストック港ごと、消滅させてしまうべきです」
「いや、港はまずい、高速艇を甲型2番機で攻撃してしまえば、それは港の破壊を意味する。目標はあくあで高速艇だ」
「しかし、2番機の30mm機銃では、撃沈は無理です、どうされるのですか?」
山本は、二人の目を見たまま、副長に対して、ある物の搬出作業を命じた。
そして、それを聞いた早川は、全てを悟り、山本艦長に「ありがとうございます」とだけ伝えた。
それが全てであった。
北村は、悔しそうな顔を浮かべながら早川の方を見た。
「北村少佐、先に行っていますから、あとからゆっくり来てください」
それが、艦長が命じた作戦である以上、北村にはそれに反対することは出来なかった。
山本艦長が副長に命じた「物」とは、特攻機「桜花」43型乙が積載する予定であった800キロ爆弾の弾頭である。
桜花43型乙は、横須賀第2飛行場で運用される予定であった、特攻作戦専用に作られたジェット単発機である。
今回使用されている「甲型」と呼ばれるこの航空機も、桜花43型甲と全く同じ機種である。
その乙用の弾頭は、予備として14潜にも積載されていた。
早川の1番機から30mm機関砲が外され、800キロ弾頭へと換装が急がれた。
1番機は、こうして機銃による戦闘が出来ない純粋な「特攻機」へと変化し、当初の目的であった2番機の護衛という名誉は捨て去られた。
しかし、早川の表情には曇りもなく、ようやく作戦に貢献できるという、充実感に満ちていた。
「おい、マーシャン、話が違うぞ」
ソビエト輸送船団が、俺の意思によって魚雷攻撃を受けた後、ベニオンは俺たちの乗った小型艇を回収し、輸送船の救助活動を行っていた。
「アメリカは、この件に対して、一切手を汚さないつもりか?」
「もちろんです、北村達の行動をサポートするだけでも、アメリカは国際社会から孤立するレベルの事をしているんです」
「なら、どうして俺たちを小型艇で出した?」
「ハハハ、それは、もちろん保険ですよ」
また保険か。
こいつら大丈夫なのか?
マーシャンも、なんだか策略家のような発想だな。
「まあ、GFもこの話を聞けば、納得すると思いますよ」
なに?、話?。
マーシャンは俺たちに、先ほどの輸送船から回収出来た陸軍の核物質が、半分だけだったと言う事を明かした。
「では、残りの回収はどうするんだ」
「それは、日本海軍が考えることです」
そう言って、マーシャンは俺に薄っすらと笑顔を見せるのであった。
「はい、恐らくは、、、間もなくウラジオストックに到着します」
「まったく、、、やられたよ、大した奴らだ、こちらの動きを読んでいたのか?」
愕然とする山本は、艦内の側壁にもたれかかり、そのまま天を仰いだ。
しかし、軍人としてすべきことはまだある、それが意味することも。
「伝令、甲型搭乗員の2名を呼んできてくれ」
「山本提督、我々はここにいます」
精悍な顔立ちで山本を真っすぐ見つめる二人のパイロット。
北村は、ベニオンとのやり取りを聞いていた。
そして、この状況を打開させることが出来るのは、もはや自分たち2名しかいないことも、察していた。
「ようやくこの時が来ました、我々が出ます」
山本は、少し間を置いて、「やってくれるか?」と二人に聞いた。
二人は少し笑顔で「もちろんです」とだけ答えた。
しかし、山本の発案は、甲型1機による作戦であった。
「よろしいのですか提督、目標の位置は特定出来ています、ウラジオストック港ごと、消滅させてしまうべきです」
「いや、港はまずい、高速艇を甲型2番機で攻撃してしまえば、それは港の破壊を意味する。目標はあくあで高速艇だ」
「しかし、2番機の30mm機銃では、撃沈は無理です、どうされるのですか?」
山本は、二人の目を見たまま、副長に対して、ある物の搬出作業を命じた。
そして、それを聞いた早川は、全てを悟り、山本艦長に「ありがとうございます」とだけ伝えた。
それが全てであった。
北村は、悔しそうな顔を浮かべながら早川の方を見た。
「北村少佐、先に行っていますから、あとからゆっくり来てください」
それが、艦長が命じた作戦である以上、北村にはそれに反対することは出来なかった。
山本艦長が副長に命じた「物」とは、特攻機「桜花」43型乙が積載する予定であった800キロ爆弾の弾頭である。
桜花43型乙は、横須賀第2飛行場で運用される予定であった、特攻作戦専用に作られたジェット単発機である。
今回使用されている「甲型」と呼ばれるこの航空機も、桜花43型甲と全く同じ機種である。
その乙用の弾頭は、予備として14潜にも積載されていた。
早川の1番機から30mm機関砲が外され、800キロ弾頭へと換装が急がれた。
1番機は、こうして機銃による戦闘が出来ない純粋な「特攻機」へと変化し、当初の目的であった2番機の護衛という名誉は捨て去られた。
しかし、早川の表情には曇りもなく、ようやく作戦に貢献できるという、充実感に満ちていた。
「おい、マーシャン、話が違うぞ」
ソビエト輸送船団が、俺の意思によって魚雷攻撃を受けた後、ベニオンは俺たちの乗った小型艇を回収し、輸送船の救助活動を行っていた。
「アメリカは、この件に対して、一切手を汚さないつもりか?」
「もちろんです、北村達の行動をサポートするだけでも、アメリカは国際社会から孤立するレベルの事をしているんです」
「なら、どうして俺たちを小型艇で出した?」
「ハハハ、それは、もちろん保険ですよ」
また保険か。
こいつら大丈夫なのか?
マーシャンも、なんだか策略家のような発想だな。
「まあ、GFもこの話を聞けば、納得すると思いますよ」
なに?、話?。
マーシャンは俺たちに、先ほどの輸送船から回収出来た陸軍の核物質が、半分だけだったと言う事を明かした。
「では、残りの回収はどうするんだ」
「それは、日本海軍が考えることです」
そう言って、マーシャンは俺に薄っすらと笑顔を見せるのであった。
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