自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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本海軍の原子爆弾

第316話 この時代に何が起こっていたか

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 猪上海軍大将。

 俺でも知っている海軍の知将だな。
 そんな有名人が、戦時中にアメリカ軍との戦後交渉を容認するなんて事、あり得るだろうか。

 この話しには無理がある、

 俺はそう思っていた。

 しかし、猪上大将が、どうしてY号に寛容だったのかは、北村少佐のその後の話しで、かなり解明された、されたのだ。

「そもそも、終戦に向けた話しを推進させていたのは、他ならぬ猪上閣下です、当時の陸軍も海軍も、派閥と確執が複雑で、利権にしがみつく悪しき慣習が蔓延っていました」

「まさか、それがきっかけで、終戦工作を?」

「それだけではありません。陸海軍上層部は、本土決戦に備えて、若年のパイロットを必死の体当たり作戦に従事させる決定をしてしまいました、、、、これに腹を立てた軍人が、かなり多くいたのです」

 それは無理もないだろう。
 いつの時代にそれを聞いても、トラウマ級の話しなんだよな、特攻って。
 しかし、それは少し異なる方向の話しへと移行する。

「斉藤さんは、「桜花」という機体をご存じですか?」

「、、、ええ、特攻するために作られた専用の飛行機と」

「飛行機なんて物ではありません、あれは爆弾です、爆弾に推進装置を付け、誘導装置が間に合わないから、装置の代わりに人間を乗せたという代物なんです」

 ああ、桜花ってそういうコンセプトなんだ。

「あれですよね、後方に個体ロケットエンジンを積んだタイプの」

「あれは劣化版です、本物はもう少し高度な技術が使われていますが、極秘中の極秘であるため、斉藤さんは見たことが無いと思いますが」

 そんな凄い物があったのか?

「それは今、まだどこかにあるのでしょうか?」

「、、、、ディッカーソン大尉は、ご存じのはずです」

 やっぱりマーシャンは、俺に何かを隠しているな?。
 しかし、なんだってこんな兵器の存在を俺から隠すのだ?
 しかも、現物がまだ廃棄されずに残っているって、本当なんだろうか?
 
「北村少佐、少しお願いがあるんですが、、、」



 俺は、北村少佐を見送ったあと、マーシャンを呼んだ。
 腹には、北村少佐から借用した、南部自動拳銃を認めて。
 未来人同士が殺し合っても、世界は崩壊しないよな、、、。

 俺の考えが正しければ、マーシャンは、かなり際どい事を俺に隠している、少し強引でも、その話しは聞かないといけないだろう。

 それ故に、拳銃で脅してでも、今日は「Y号作戦」の、本当の歴史を聞き出さなければならない。

「マーシャン、、、ちょっと座ってもらえるか」

 俺は、横須賀地方復員局内の小会議室にマーシャンを呼びつけ、抵抗出来ないよう窓を背に座らせた。

「、、、OH、、GF、ずいぶんお怒りのようですね」

「解っているなら話は早い、マーシャン、知っている事を全部話せよ」

 マーシャンは、いつものようなとぼけた表情をしていたが、俺が腹部に武器を隠し持っていることを察すると、表情は一変した。

 、、、なんだよ、そんな真面目な表情もできるんじゃないか。
 
「GFは、何かに感づいたのですか?」

「ああ、しかし、全てを知り得た訳ではない、肝心なY号作戦の全容が、どうしても見えてこない、、、知っているんだろ、この後、横須賀で何が起こったのかを、本当の歴史ってやつを」

 すると、なぜかマーシャンは再びとぼけた笑いを浮かべ、いつもの調子に戻った。

 、、、何だ?

「そうですね、GFは、この時代に何が起こっていたかを、まだご存じ無かったのですね、てっきり美鈴から聞いていると思っていましたよ」

 笑いながらそう話すマーシャンに、若干の違和感を覚えながら、俺はとりあえずマーシャンの話す内容を聞く事にした。

 事の始まりは、さっき北村少佐が話していた時期と一致する、昭和19年の暮れだった。
 当時のアメリカ海軍と日本海軍には、陸軍の知らない特殊な通信ルートがあったのだと言う。
 マーシャンは既にその時代にタイムトラベルして、今回の一連の内容に、直接関与していたらしい。

 当時の日本海軍から、アメリカ海軍宛に「陸軍と海軍は、原子爆弾の開発を進める過程で、その攻撃に際し、誘導兵器に人間を用いた作戦を発案している事、そして、海軍の一部に、それに反対する勢力が存在すること。
 海軍も陸軍も、既に組織が複雑化しすぎ、人命を道具のように扱い、保身の為にしか行動出来ない軍人が多く居ること、、、、 
 
 そして、それらを一掃し、新生日本軍を設立するために、アメリカ軍の協力を得たい、という内容であった。
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