自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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本海軍の原子爆弾

第313話 二号組の原爆

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 桜子さんが泣いてしまうハプニングがあったため、話すことが二つあったはずなのだが、結局玲子君の件を話しただけで、俺は北村家を後にした。

 もちろん、後日北村少佐は俺の所に、先日のお詫びを兼ねて早々に訪ねてきたのである。

「北村さん、あまり気にしないでください、私は大丈夫ですから」

 とりあえず、満面の笑みで迎えたが、北村少佐の表情は依然深刻なままだった。
 俺は、北村少佐の気持ちを和らげようと、「後日、娘さんを頂きに上がります」と冗談を言ったが、効果はあまり無かった。

 そうして、重苦しい雰囲気が部屋に充満し、俺は耐え切れず、先日に話したいことの二つ目を俺の方から聞き出した。
 
「そうですね、先日お呼びしたのも、実はそちらのお話しでした」

 そう言うと、ようやく会話が順調に始まった。
 
「今現在、陸軍が進めている計画は、拠点化から、要塞化に転じ、巨大なものになりつつあります、海軍としても、F組により、2号組の国内勢力を壊滅させることが急務と感じています」

 ん?、、、ん??、、、
 いきなり何の話だ?
 おい、マーシャンの奴、何か隠しているんじゃないのか?

「申し訳ありません、ディッカーソン大尉から、まだそこまで詳細の話を聞いていないもので、、、、少しご説明願えませんか?」

 北村少佐は、少し驚いた表情ではあったが、丁寧に順を追って話してくれた、、、くれたのだが、、、。

 その内容は、俺の知識や常識を遙かに越えるものだった。
 
 まず、さっき出てきた「二号組」と「F組」について、解説がなされた。
 二号組とは、陸軍が戦時中、理化学研究所に依頼した原爆研究、通称二号研究の隠語のようだった。
 対して、海軍は陸軍とは別に原爆開発を独自に進めており、これが京都大学の研究チームにより進められていたF研究なんだそうだ。
 そのF研究もまた「F組」という隠語で呼ばれているらしい。

 俺は、何で間に合わなかった原爆研究の話が、日本の最軍備の話に出てくるのかが、さっぱり解らなかった。

 しかし、その事実を知った時、その意味に、俺は恐怖したのである。

「なんですって?、、、二号組の原爆が、、、、使用可能な状況にある?」

 俺は言葉を失った。

 俺が知っている、日本の歴史では、確かに戦時中に原爆開発がされていたことは知っていた、物理を学ぶ大学生なら、みんな知っていることだ。
 しかし、それは戦時中の日本の国力では到底完成などしないレベルで、対してアメリカ軍は、それを完成させるだけの国力があった、と俺達は教わってきた。

 しかし「二号研究」が完成していたならば、なぜ日本陸軍は米軍に対して使用しなかったのか?
 それだけではない、この時点で、ドイツもソ連もイギリスも完成出来なかった兵器を、日本とアメリカのみが完成させていたなんてこと、あり得ることなのか?

「斉藤君は、やはり日本の核開発について、あまり多くを知らないのですね、ディッカーソン大尉は、その日本が開発した二種類の原爆について、管理統制する任務を、米国政府から帯びていると聞いています」

 なにー?、

 そんな大事な話、どうしていままで聞こえて来なかった?
 そして、俺は妙な符号が頭の中で一致したのだ。
 この荒唐無稽な話の先に、何か真実につながるキーワード、、、、

 「東西冷戦」という単語を。
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