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横須賀鎮守府の栄光
第312話 お見合いの席
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「斎藤さん、どうか桜子をもらってやってはくれませんか」
、、、はい?、え、今、なんて?
どうしてそんな話になった?、っていうか、今までそんな話なんて微塵も出ていなかったよな。
、、ああ、、、、それであの晴着姿だったのか、桜子さんは。
それにしたって、あんな美人の娘さん、いくらでも貰い手があるだろうに、なんだって知り合ったばかりの俺に?
「お話しは嬉しいのですが、私には婚約者がおりまして、、、」
もちろん嘘だが、さすがに玲子君に申し訳が立たないからな、このまま進めてしまえば。
しかし、北村少佐は笑ながら「それは承知の上です」と言いながら、本題に入った。
「試すような事をして、本当に申し訳ないと思っていますが、実は桜子は、私達の本当の娘ではありません」
はい?、展開が早すぎて、追い付かないぞ?、何が言いたいんだ。
北村少佐は、ここに至る経緯を話してくれた。
俺が最初に北村少佐と会った時に、玲子君の写真を持っていたことを、北村少佐は少し不信に感じていたらしい。
そもそも、桜子さんを保護した時、既に記憶が曖昧になっており、警察に相談はしたものの、戦後の混乱期に不憫に感じた北村夫妻は、彼女を自身の子供として一時的に住まわせていたのだとか。
ってことは、やっぱり桜子さんは、玲子君でいいんだよな。
凄いな、記憶がないからなのか、見事にこの時代の娘さんに仕上がっていたぞ。
これでは未来人の俺たちも、すれ違ったくらいじゃ見間違えるな。
そして、今日、彼女の記憶を確認するために、見合いの場をセッティングしたのだそうだ。
、、、ん?、見合い?。
「ちょっと、北村少佐、愛娘をそんなに簡単に手放さないでください、私も少し驚くではありませんか」
北村少佐は、それが可笑しかったようで、顔を赤くしながら暫く笑っていた。
少佐は少佐なりに、玲子君を娘の晴れ舞台として、俺に手渡したかったのではないだろうか。
この、子供に恵まれなかった夫婦の、束の間の親子関係に、それなりの門出を持って送りたかったのかもしれない。
しかし、事態は思わぬ方向へ進んだ。
「いやあ、、、斎藤君、申し訳ない、、、、、桜子に泣かれてしまったよ」
いや、、、順を追って話してもらえますか、北村さん!。
見合いの席で泣かれたら、俺、なんだか凄く嫌がられたみたいで、、、悲しいんですけど!、ちょっと、、悲しいんですけど!。
北村少佐が言うには、これが俺と桜子さんの見合いだと打ち明けたところ、突然泣き出して、この家を離れたくない、もう少し、お父さんとお母さんの娘でありたいとの一点張りだったのだそうだ。
もちろん、夫妻も、彼女が俺の姿を見れば記憶を取り戻し、一件落着という場面をイメージしていたらしいのだが、残念ながら桜子さん、、、玲子君の記憶は戻らず、それどころか、本人の承諾もなく見合いを進めたと、随分責められた様子だった。
こうなると、それまで家族ごっこのつもりだった北村夫妻にとって、それは本当の娘が出来たようになってしまい、手放すことが出来なくなってしまった。
そりゃ、そんな事言われたら、手放せんわな、、、。
バツの悪そうな北村少佐に、何度も気にしないで欲しいと言うものの、昔気質の海軍軍人は、どうにも俺に申し訳なく、気が許さなようで、今回の事は貸にしてくれと頭を下げた。
逆に、俺はしばらく玲子君を北村夫妻に預けることにした。
玲子君は、今現在、北村桜子である以上、俺たち二人の関係は一番最初からやり直さなければならない。
それでも、桜子さんこと玲子君は、必ず俺に気付くと、今は信じるしかなかった。
、、、はい?、え、今、なんて?
どうしてそんな話になった?、っていうか、今までそんな話なんて微塵も出ていなかったよな。
、、ああ、、、、それであの晴着姿だったのか、桜子さんは。
それにしたって、あんな美人の娘さん、いくらでも貰い手があるだろうに、なんだって知り合ったばかりの俺に?
「お話しは嬉しいのですが、私には婚約者がおりまして、、、」
もちろん嘘だが、さすがに玲子君に申し訳が立たないからな、このまま進めてしまえば。
しかし、北村少佐は笑ながら「それは承知の上です」と言いながら、本題に入った。
「試すような事をして、本当に申し訳ないと思っていますが、実は桜子は、私達の本当の娘ではありません」
はい?、展開が早すぎて、追い付かないぞ?、何が言いたいんだ。
北村少佐は、ここに至る経緯を話してくれた。
俺が最初に北村少佐と会った時に、玲子君の写真を持っていたことを、北村少佐は少し不信に感じていたらしい。
そもそも、桜子さんを保護した時、既に記憶が曖昧になっており、警察に相談はしたものの、戦後の混乱期に不憫に感じた北村夫妻は、彼女を自身の子供として一時的に住まわせていたのだとか。
ってことは、やっぱり桜子さんは、玲子君でいいんだよな。
凄いな、記憶がないからなのか、見事にこの時代の娘さんに仕上がっていたぞ。
これでは未来人の俺たちも、すれ違ったくらいじゃ見間違えるな。
そして、今日、彼女の記憶を確認するために、見合いの場をセッティングしたのだそうだ。
、、、ん?、見合い?。
「ちょっと、北村少佐、愛娘をそんなに簡単に手放さないでください、私も少し驚くではありませんか」
北村少佐は、それが可笑しかったようで、顔を赤くしながら暫く笑っていた。
少佐は少佐なりに、玲子君を娘の晴れ舞台として、俺に手渡したかったのではないだろうか。
この、子供に恵まれなかった夫婦の、束の間の親子関係に、それなりの門出を持って送りたかったのかもしれない。
しかし、事態は思わぬ方向へ進んだ。
「いやあ、、、斎藤君、申し訳ない、、、、、桜子に泣かれてしまったよ」
いや、、、順を追って話してもらえますか、北村さん!。
見合いの席で泣かれたら、俺、なんだか凄く嫌がられたみたいで、、、悲しいんですけど!、ちょっと、、悲しいんですけど!。
北村少佐が言うには、これが俺と桜子さんの見合いだと打ち明けたところ、突然泣き出して、この家を離れたくない、もう少し、お父さんとお母さんの娘でありたいとの一点張りだったのだそうだ。
もちろん、夫妻も、彼女が俺の姿を見れば記憶を取り戻し、一件落着という場面をイメージしていたらしいのだが、残念ながら桜子さん、、、玲子君の記憶は戻らず、それどころか、本人の承諾もなく見合いを進めたと、随分責められた様子だった。
こうなると、それまで家族ごっこのつもりだった北村夫妻にとって、それは本当の娘が出来たようになってしまい、手放すことが出来なくなってしまった。
そりゃ、そんな事言われたら、手放せんわな、、、。
バツの悪そうな北村少佐に、何度も気にしないで欲しいと言うものの、昔気質の海軍軍人は、どうにも俺に申し訳なく、気が許さなようで、今回の事は貸にしてくれと頭を下げた。
逆に、俺はしばらく玲子君を北村夫妻に預けることにした。
玲子君は、今現在、北村桜子である以上、俺たち二人の関係は一番最初からやり直さなければならない。
それでも、桜子さんこと玲子君は、必ず俺に気付くと、今は信じるしかなかった。
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