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横須賀鎮守府の栄光
第311話 桜子?、誰だ、それは?
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「やあ、斎藤さん、ようこそ。さ、お上がりください」
俺は再び北村少佐の自宅に招かれた。
先日約束していた、玲子君に関する情報を得るためだ。
少なくとも、玲子君の居場所くらいは話してくれるのだろうと期待していた、そして、マーシャンが口を閉ざした東西冷戦の謎を解く詳細を、この北村少佐から聞き出すためでもあった。
しかし、そこには俺の期待以上のものがあった、というか、、、居た。
「桜子、ほら、入りなさい」
桜子?、誰だ、それは?
居間から襖を隔てて、女性の声がした「失礼します」と物静かな声がすると、襖は静かに開いた。
、、、、そこには美しい着物姿の玲子君と、北村少佐の奥様が居たのだ。
「、、、えっ?、、、これは?、、北村さん?、これは一体」
「失礼、彼女は私の娘で北村桜子と申します。少々体を悪くしましてね、、、もう大分良いのですが」
どうも、さっぱり呑み込めない、、、玲子君だよな、どう見ても。
「初めまして、、、桜子と申します、斎藤様」
三つ指を付いて、淑やかに一礼すると、奥様は玲子君、、、桜子さんを居間へ通した。
何なのだ、この雰囲気は?
彼女は玲子君そっくりだが、こうして接していると、雰囲気が玲子君ではない。
明らかに戦後間もないこの時代の娘さんだ。
この不可解な居間でのやり取りは、そのまま昼食という形で進んでしまう。
仲の良い三人家族、躾の行き届いた、いかにも軍人の娘と言った感じの清楚な印象を受ける桜子さん。
正月に実家に帰ったような、親戚が集まったような、不思議な感触。
戦後の物のない時代に、これだけ準備するのは大変だったろうに、北村家ではご馳走を準備してくれた上に、酒まで準備されていた。
熱燗が温まると、奥さんが忙しく台所と居間を往復する、何故か奥さんよりも綺麗な着物を着た桜子さんより手数が多い奥さん。
「どうぞ」と、熱燗を御猪口に注いでくれる桜子さんは、ほとんど何も喋らないが、火鉢の熱に当てられたのか、少し頬が紅潮していた。
、、、日本の冬の昼食会。
ただ、本当にそれだけの、静かで細やかな会だったが、俺にとっては心が落ち着く催しとなった。
北村少佐と俺は、少し酒がまわった頃、ようやく他愛の無い会話を始めた。
出身は何処だとか、結婚は未だしないのか、とか、なんだか本当に他愛のない会話。
俺はそんな会話の間も、玲子君そっくりな桜子さんの事をチラチラと横目で気にしていると、それは北村少佐も見透かしたようで、少し笑っていた。
「さて、桜子はお母さんの手伝いでもしていてくれ、これから男同士の大事な話があるのでな」
結局、ほとんど何も話さないまま、桜子さんは部屋を後にした。
残された男二人、火鉢に掛けられた薬缶だけがしゅんしゅんと静かに音を立てる他、静かな居間。
遠くから国鉄の音が聞こえる。
「斎藤さん、今日は貴方にお話しすることが二つあります」
おいおい、二つもあるのか?、、、で、何?!
↓ 北村 桜子(美鈴 玲子)
俺は再び北村少佐の自宅に招かれた。
先日約束していた、玲子君に関する情報を得るためだ。
少なくとも、玲子君の居場所くらいは話してくれるのだろうと期待していた、そして、マーシャンが口を閉ざした東西冷戦の謎を解く詳細を、この北村少佐から聞き出すためでもあった。
しかし、そこには俺の期待以上のものがあった、というか、、、居た。
「桜子、ほら、入りなさい」
桜子?、誰だ、それは?
居間から襖を隔てて、女性の声がした「失礼します」と物静かな声がすると、襖は静かに開いた。
、、、、そこには美しい着物姿の玲子君と、北村少佐の奥様が居たのだ。
「、、、えっ?、、、これは?、、北村さん?、これは一体」
「失礼、彼女は私の娘で北村桜子と申します。少々体を悪くしましてね、、、もう大分良いのですが」
どうも、さっぱり呑み込めない、、、玲子君だよな、どう見ても。
「初めまして、、、桜子と申します、斎藤様」
三つ指を付いて、淑やかに一礼すると、奥様は玲子君、、、桜子さんを居間へ通した。
何なのだ、この雰囲気は?
彼女は玲子君そっくりだが、こうして接していると、雰囲気が玲子君ではない。
明らかに戦後間もないこの時代の娘さんだ。
この不可解な居間でのやり取りは、そのまま昼食という形で進んでしまう。
仲の良い三人家族、躾の行き届いた、いかにも軍人の娘と言った感じの清楚な印象を受ける桜子さん。
正月に実家に帰ったような、親戚が集まったような、不思議な感触。
戦後の物のない時代に、これだけ準備するのは大変だったろうに、北村家ではご馳走を準備してくれた上に、酒まで準備されていた。
熱燗が温まると、奥さんが忙しく台所と居間を往復する、何故か奥さんよりも綺麗な着物を着た桜子さんより手数が多い奥さん。
「どうぞ」と、熱燗を御猪口に注いでくれる桜子さんは、ほとんど何も喋らないが、火鉢の熱に当てられたのか、少し頬が紅潮していた。
、、、日本の冬の昼食会。
ただ、本当にそれだけの、静かで細やかな会だったが、俺にとっては心が落ち着く催しとなった。
北村少佐と俺は、少し酒がまわった頃、ようやく他愛の無い会話を始めた。
出身は何処だとか、結婚は未だしないのか、とか、なんだか本当に他愛のない会話。
俺はそんな会話の間も、玲子君そっくりな桜子さんの事をチラチラと横目で気にしていると、それは北村少佐も見透かしたようで、少し笑っていた。
「さて、桜子はお母さんの手伝いでもしていてくれ、これから男同士の大事な話があるのでな」
結局、ほとんど何も話さないまま、桜子さんは部屋を後にした。
残された男二人、火鉢に掛けられた薬缶だけがしゅんしゅんと静かに音を立てる他、静かな居間。
遠くから国鉄の音が聞こえる。
「斎藤さん、今日は貴方にお話しすることが二つあります」
おいおい、二つもあるのか?、、、で、何?!
↓ 北村 桜子(美鈴 玲子)
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