自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

独立国家の作り方

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横須賀鎮守府の栄光

第291話 横須賀地方復員局

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『GF、今日はどこを探されますか?」

 シズが心配そうに俺に聞いてきた。
 シズにとっても、友人でもある玲子君が行方不明になった件に、とても責任を感じているようだった。
 あのシズの持つ対人レーダーですら、玲子君の位置を補足出来ない、それは異常なことだと思われた。

 管理人も、この世の理を全て理解していても、何か、弱点があるのだろうか、時々困った表情をしていた。

 管理人いわく、ここまで捜索が難航すると言うことは、何か事情があって玲子君本人が故意に通信を遮断し、自己位置を特定されないよう作意しなければ、こんな事はあり得ないのだそうだ。

 そんな時、マーシャンが、この国の政府機関にい知り合いが居るから、相談してみようか、と言い出した。

「どんな人物なんだ?」

「はい、とても誠実な人物ですよ、元々は海軍のパイロットだったと聞いています」

 へえ、パイロットか。
 この時代、日本人が航空機を動かす事なんて無いだろうしな。
 一体、何をしている人物なんだ?。

「北村という男ですが、信頼出来る人物だと思いますよ」

 マーシャンの話では、北村という男は、終戦時には海軍横須賀鎮守府よこすかちんじゅふで勤務していたが、海軍省が消滅し、第2復員省《ふくいんしょう》へと変わると、そのまま横須賀地方復員局の職員よこすかちほうふくいんきょくとして、復員業務に従事しているらしい。
 復員事務なら、人事の事も、少しは解るかもしれないな。

 俺は、このグループ唯一の純粋な日本人であることから、今回の接触はこの時代の日本人として北村に接触することにした。

『なあシズ、俺も日本人ではあるが、この時代の日本の事はさっぱり解らない、フォロー頼むぞ」

『任せてください、、、と言いたいところですが、時々、ものすごく頭が痛くなるんですよね、、」

 あまり話題にはしないようにいしていたが、前回のようにシズが機能不全に陥ると、これから怖いことになるしな。
 管理人が言うには、この時代の兵器で、未来の精密機器に影響を及ぼすものが複数あるんだそうだ。
 特に、電磁波や電波などの機器は、開発されて間もないこともあり、出力が未来では考えられないようなものを出力してしまうらしく、シズのようなタイムマシーンの電子部品には辛いのだそうだ。

 そんなこと言われても、防ぎようもないんだよな。
 ましてやここは横須賀で、アメリカ軍も旧日本軍も、どちらも可能性はあるしな。

『で、今日は大丈夫なのか?、シズ」

『はい、なぜか今日は平気ですね、、、何だったんでしょう?」

 怖がっていても先に進まないしな、
 
『ところでシズ、復員局って、なんだか解るか?」

『はい、データベースですと、旧陸軍省が第一復員省、海軍省が第二復員省へ3ヶ月前に変わってます、横須賀地方復員局は、旧横須賀鎮守府の機能を復員と掃海の業務にそのまま移管させたもののようですね、自衛隊で言うところの、横須賀地方隊みたいな組織かと」

 海軍は、戦後そんなふうに変化していたんだな。
 じゃあ、これから会う北村って男も、生粋の海軍軍人だな、シズのデータベースには無いのか?」

『さすがに少佐クラスだと、、、あ、でも少しは入っていますね、、、あー、この人、結構有名なパイロットですね、、戦績も凄いです、エースパイロットですよ、この人!、横須賀海軍航空隊所属時代には、真珠湾攻撃にも参加しています、歴戦ですね」

 凄いな、そんな人物とこれから会うのか、、、。
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