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そして時空転移
第288話 記憶の混濁
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俺は、辛そうなシズを一旦基地に返し、単独で玲子君の捜索を始めた。
シズが言うには、玲子君は身バレしないよう、海軍の軍服を脱ぎ、この時代の日本人の服装になって買い出しに出たらしい。
まったく、なんて無茶をするんだ。
玲子君としては、それが安全だと思ったのだろうが、この世界は戦争に負けたばかりの日本なんだぞ。
日本人だけが危険なんじゃない、進駐軍だって、何を仕出かすかわからない。
それに、地元の任侠組織や朝鮮系、台湾系、中国系のマフィア化した住民だって、かなり神経質になっている時期だ。
そんな時代の、闇市に未来人の女性が一人迷い込んだ、、、。
それは、とてつもなく危険な事だ。
それに、絶対の通信能力を誇る未来の通信端末が、不通となっている時点で、それはキル・ザ・ドールによる妨害工作か、玲子君自身の意識が無いか、どちらかしか有り得ない。
、、、そして、今可能性が高いのは、後者の方だ。
俺は、シズにさっき急いで作ってもらった、玲子君のこの時代風の合成写真を元に、とにかくこの付近でこの女性を知らないかを聞いて回っていた。
すると、それは意外に早く、情報をつかむことが出来た。
、、、やっぱり玲子君は、この時代の服装をしていても、かなり目立っていたようだった。
そりゃそうだ、あの美貌、そして、この時代には似つかわない少し欧米風の容姿。
これが戦時中なら、スパイ容疑がかけられていてもおかしくない。
そして、彼女はやはり、俺のアパートに来た時もそうだったが、何か浮世離れしたオーラが出ている。
そして、未来人独特の、あの清潔感、この終戦の混沌には、明らかに似合っていない。
そして、やはりそれらが仇になっていたようだった。
玲子君を目撃した人の情報によれば、彼女は酔った進駐軍の兵士にさらわれそうになり、乱暴を受け、意識を失ってしまった。
そこへ米兵に喧嘩を売るように、体格の良い復員軍人風の男と乱闘になり、警察が駆け付ける前に玲子君を抱えて消え去っていった、と言うのだ。
、、、、これは、一番厄介なことになった。
米軍内であれば、マーシャンの伝手で捜索も可能だったが、復員軍人なんて、どう足取りを追えばいいのか、、。
無事でいてくれ、玲子君。
「、、、、、ここは?」
美鈴玲子が目を覚ますと、そこは見知らぬ天井があった。
横須賀市街で空襲の被害にも合わずに残った古い家屋の中に見える。
「あら、まあ、目が覚めましたか、お気の毒に」
彼女の枕元には、中年の女性が一人、介抱してくれていた。
「あなた、お名前は?」
そう聞かれて、美鈴玲子は気付くのである、、、、
「私、、、私は、、、、」
どうしてか解らない、出てきそうで出てこない、記憶が混乱しているのは明白だった。
美鈴玲子は、何か大切な事を忘れている気がしてならなかった。
「それにしても、随分お綺麗なお嬢さんだこと、どこから来たの?」
その質問にも、答えが出そうで出てこない。
記憶があるのは、アメリカ兵に襲われ、気が動転した直後に助けに入ってくれた中年男性の顔だけ。
「あの、、、助けてくださったお方は、、?」
今の美鈴玲子には、それが限界だった。
なにしろ、明確に思い出せるのが、そこまでしかないのだから。
このとき美鈴玲子は、記憶喪失とまでは行かないものの、タイムトラベルの負担直後に受けたショックにより、記憶が混濁状態になっていた。
更に運が悪いことに、体内ディバイスは、外部と通信出来ないように遮断された常態でショックを受けてしまい、今現在、彼女は自分が通信を使える事すら忘れてしまっている常態だったのである。
シズが言うには、玲子君は身バレしないよう、海軍の軍服を脱ぎ、この時代の日本人の服装になって買い出しに出たらしい。
まったく、なんて無茶をするんだ。
玲子君としては、それが安全だと思ったのだろうが、この世界は戦争に負けたばかりの日本なんだぞ。
日本人だけが危険なんじゃない、進駐軍だって、何を仕出かすかわからない。
それに、地元の任侠組織や朝鮮系、台湾系、中国系のマフィア化した住民だって、かなり神経質になっている時期だ。
そんな時代の、闇市に未来人の女性が一人迷い込んだ、、、。
それは、とてつもなく危険な事だ。
それに、絶対の通信能力を誇る未来の通信端末が、不通となっている時点で、それはキル・ザ・ドールによる妨害工作か、玲子君自身の意識が無いか、どちらかしか有り得ない。
、、、そして、今可能性が高いのは、後者の方だ。
俺は、シズにさっき急いで作ってもらった、玲子君のこの時代風の合成写真を元に、とにかくこの付近でこの女性を知らないかを聞いて回っていた。
すると、それは意外に早く、情報をつかむことが出来た。
、、、やっぱり玲子君は、この時代の服装をしていても、かなり目立っていたようだった。
そりゃそうだ、あの美貌、そして、この時代には似つかわない少し欧米風の容姿。
これが戦時中なら、スパイ容疑がかけられていてもおかしくない。
そして、彼女はやはり、俺のアパートに来た時もそうだったが、何か浮世離れしたオーラが出ている。
そして、未来人独特の、あの清潔感、この終戦の混沌には、明らかに似合っていない。
そして、やはりそれらが仇になっていたようだった。
玲子君を目撃した人の情報によれば、彼女は酔った進駐軍の兵士にさらわれそうになり、乱暴を受け、意識を失ってしまった。
そこへ米兵に喧嘩を売るように、体格の良い復員軍人風の男と乱闘になり、警察が駆け付ける前に玲子君を抱えて消え去っていった、と言うのだ。
、、、、これは、一番厄介なことになった。
米軍内であれば、マーシャンの伝手で捜索も可能だったが、復員軍人なんて、どう足取りを追えばいいのか、、。
無事でいてくれ、玲子君。
「、、、、、ここは?」
美鈴玲子が目を覚ますと、そこは見知らぬ天井があった。
横須賀市街で空襲の被害にも合わずに残った古い家屋の中に見える。
「あら、まあ、目が覚めましたか、お気の毒に」
彼女の枕元には、中年の女性が一人、介抱してくれていた。
「あなた、お名前は?」
そう聞かれて、美鈴玲子は気付くのである、、、、
「私、、、私は、、、、」
どうしてか解らない、出てきそうで出てこない、記憶が混乱しているのは明白だった。
美鈴玲子は、何か大切な事を忘れている気がしてならなかった。
「それにしても、随分お綺麗なお嬢さんだこと、どこから来たの?」
その質問にも、答えが出そうで出てこない。
記憶があるのは、アメリカ兵に襲われ、気が動転した直後に助けに入ってくれた中年男性の顔だけ。
「あの、、、助けてくださったお方は、、?」
今の美鈴玲子には、それが限界だった。
なにしろ、明確に思い出せるのが、そこまでしかないのだから。
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