自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

そして時空転移

第287話 失 踪

『ＧＦ、大変です、美鈴が！」

　俺たちは、横須賀の偵察に出るために、市内の地図を見ながら行動予定を立てていた。
　その間、玲子君は当面の食料調達のために、横須賀市街へ出ていた。
　そもそも、マーシャンが準備していた食料は、全て米国産のものばかりで、どうしてか解らないが、アメリカ軍は現地日本での食料調達をしていないようだった。
　それを気にした玲子君が、多少の和食でも作れるようにと、俺のために気を回してくれていたのだった。
　
　、、、しかし、それが仇になってしまった。
　
　よりにもよって、１９４６年の横須賀で、玲子君は通信にも出ない。

『玲子君、俺だ、雄介だ、聞こえないか？」

『多分、聞こえていませんねＧＦ、、、、どうしましょう」

　こっちでの協力者は、マーシャンしかいない、こんな何も解らない過去の世界で、通信が途絶した玲子君を捜索するのは至難の業だ。

「みんな聞いてくれ、玲子君が行方不明になっている、既に敵に捕らわれた可能性もある、俺が探しに行ってくるから、みんなは基地内で待機していてくれ」

「ユウスケ、さすがに一人では危ないだろ、俺も付いて行くぞ」

　カシラビの申し出は有り難いが、１９４６年どころか、この世界の事自体を理解出来ていないカシラビ達を護衛で連れて行くのは危険すぎる。

「管理人、お願いがある、彼らと行動を共にしてくれないか？」

「ＧＦ、さすがにお一人では危険かと。私が同行します」

「いや、、、、さすがにシズの姿で護衛はできまい、ここに残って異世界人の彼らに、少しこの世界の話やキル・ザ・ドールの話をしておいてほしい、すぐに戦力が必要になるやもしれないからな」

　実際に、まだまだ彼らに対する教育は、明らかに不足していた。
　この終戦直後の混沌とした世界に連れ出すのは無謀が過ぎる。
　俺は、エラーサイトである異世界での経験から、単独行動であっても、シズを上空待機させていれば、かなり安全であると感じていた。

『シズ、一緒に付いてきてくれるか？」

『もちろんです！ＧＦ」

「ちょっとおまちくださいＧＦ、危険です、ＳＩＺだけでは」

「大丈夫だよ管理人、シズを信用してくれ」

　俺はこの時、管理人の言う「危険」に対して、認識が甘いことに、まったく気付いていなかった。
　それは、たとえ過去の世界だったとしても、それはエラーサイトのように科学が発達していない異世界とは比べものにならないほどに、未来人達には危険な要素が多いということを。

　それは、横須賀基地こと、旧海軍横須賀鎮守府を出てすぐのことだった。

『、、、あ、、、痛い、、、、あ、、」

　シズが、急に変な声を出し始めたのだ。

『どうした、シズ、何か異変か？」

『ごめんなさい、、、大丈夫です、、」

　明らかに、大丈夫ではないんだよな。

『シズ、無理するなよ、基地の外だから、言語変換はしなくて大丈夫だし、、、空中待機はきついか？」

『、、、、、はい、、、すいません、なんだか、ちょっと」

　シズがこんなに弱弱しいのも珍しい。
　普段なら、多少辛くても、俺に気付かれないよう気丈に振る舞うのに、よほど苦しいんだな。

　まあ、シズは安全な所で待機させて、俺は玲子君を早く探し出さないといけないな。