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そして時空転移
第280話 そして俺たちは
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ズダーーーーンッーーーッ
ドラゴンを狙った対戦車ライフルが、豪快に火を噴く。
俺たちが最初に出会ったあの森に、戦死したオルを除く全員が集まっていた。
、、、今やこの周辺国首脳となったパーティのメンバーが、こうして一つの森に集まる事自体が、異様な事だろう。
フキアエズ大会戦と呼ばれたあの戦いから、既に3週間が経過していた。
エレーナは、正式にオルコ帝国を復活させ、皇帝の座に就いた。
エガ王子こと、エニオガーノ・フキアエズ王子は、国王崩御を正式に国民へ公表するとともに、自身はフキアエズの国王となった。
マキュウェルは、エガと正式に婚約し、両国の合意に基づき、婚礼の日取りを模索中だ、何しろ、フキアエズは前国王の喪に伏している最中だからな。
ゼンガは、生き残った家族を解放すると、オルと村長を丁重に埋葬した。
ノアンカは、B中隊長に復帰したが、今回の功績が評価され、一気に大佐へ昇進すると、ロームボルド連隊の連隊長へ着任した。
マキヤ中佐は、正式に憲兵隊本部を任され、ドットス軍に復帰、同じく大佐として昇進すると、憲兵隊司令に任命された。
そして、ベナルは、エレーナから帝国軍に来ないか、との誘いを丁重に断ると、ドットス軍に復帰、20代にして、中将から大将へ昇進、事実上軍のトップに上り詰めた。
どうやらマッシュ国王は、ベナルを次期国王としたい考えがあるようだった。
よかったな、リラル、王妃になるのも時間の問題だな。
一番の出世はウクルキだった。
それは、以前約束されていた、未だ見ぬ王国の初代国王としての地位を示されていた。
やはり最初は躊躇していたようだったが、これまで自分に付いてきてくれた部下達に、相応の地位を与えたい、という想いもあって、結局この新しい国家の立ち上げに同意した。
そこは、かつて俺達がオルコ帝国軍と死闘を繰り広げた、あのハイハープ峡谷を挟んだ一帯だった。
マッシュ国王と皇帝エレーナは、協議の結果、お互いの領土を割譲しあい、新国家を両国の同盟として設立する事で合意した。
また、ウクルキの武功を祝して、マキュウェルの居城だったロクソム城ごと、ウクルキに譲渡した。
ウクルキは、戦場で約束した通り、ブラックナイツに参加した将兵全員を、自国の騎士としての地位を与え、彼らは新国家運営の中心的役割を果たすことになった。
そして、彼らはそのまま「ブラックナイツ」と呼ばれ、今や伝説となってしまった。
特に、フキアエズ会戦で重傷を負ったドロエ大尉は、若年ながら新国家軍の大将として、軍司令官の地位を与えられたが、本格的な復帰は、怪我の回復を待たねばならない。
しかし、あのマグネラ解放の時に、敵軍から偶然守った女性と、実はその後も交際が進んでいたらしく、今は彼女の甲斐甲斐しい看護を受けながら、ゆっくりとした時間を過ごしている。
新たな国家、ウクルキの国は「ハイハープ公国」と命名され、ウクルキは国王ではなく、公王を名乗る選択をし、まもなく建国される予定だ。
メルガも、父親のルガ・ハイヤー氏とともに、この森を訪れている。
最高に幸福な表情を浮かべながら。
あの、処刑を待つ、絶望な日々を考えたら、なんという逆転人生だろうか。
ルガ・ハイヤー氏も、ハイハープ公国の宰相となって、若い二人の助力に意欲を示していた。
ズダーーーーンッーーーッ
再び森に、銃声がこだまする。
「どうだいユウスケ殿、貴君から技術提供を受けた我が国の銃は。だいぶ威力を増しただろう」
この森にはエフライム公王も訪れており、、、、、ドットス王国のマッシュ国王までお忍びで訪問していた。
、、、、マッシュ国王も、、、すべてが手に入ったと言わんばかりに満足顔だな。
エフライムに供与した銃の技術は、元々の工業国の利点を活かして、驚異的な速度で量産を可能にしていた。
こりゃ、自動小銃も時間の問題だな。
銃声に合わせて、巨大なドラゴンが空から落ちてきた。
それを嬉しそうに追いかけるゼンガ。
ゼンガもオルの件から立ち直り、少しは元気を取り戻しているようだった。
この世界に「銃」の概念が定着した。
もはや俺達のアドバンテージなど、無い世界となってしまった。
エフライム公国は、最後の戦いに参戦することで、3国に途方もない貸しを作ることに成功した。
これから作られる「銃」の販売先は、間違いなくこの3国を優先される。
この世界のパワーバランスは、こうして崩壊した。
騎兵が正面から剣や槍で戦う時代は終わり、これからは銃を持った歩兵が戦場の主役となってゆく。
俺達の現世がそうだったように。
しかし、すさまじいな、オルコ皇帝、ドットス国王、フキアエズ国王、エフライム公王、ハイハープ公王、、、、全員勢ぞろいなんてな。
そして、彼らは俺と玲子君の方を向いて、急に真面目な顔で沈黙した。
「、、、行くのだな、、、、ユウスケ」
マキュウェルが、沈黙を破って俺にそれだけ告げると、俺は一度だけ頷いた。
そして、マキュウェルは俺に近づくと、何も言わずに俺を抱きしめた。
「、、、世話になった、お前は私の、、、命の恩人だ、、、絶対に忘れないからな」
涙混じりのその言葉に、俺の涙腺までも緩んでしまった。
玲子君も、リラルやムスキ、エレーナやメルガと包容を交わし、別れを惜しんだ。
「私も居るんだから、忘れないでほしいな!」
妖精の姿のシズと、、、、管理人妖精、、、、と、もう一人、、、、、もう一人?
「あれ?、何?、、、、えー、、、何で妖精がもう一人?」
シズがそう言うと、3人目の妖精は不思議そうに二人を見ていた、、、
「、、、わー!、本物?」
おいおい、シズ妖精と管理人妖精に釣られて、本物の妖精が現れたのか?、、、ってか、いたんだ、本物の妖精って!
そのやりとりを見ていた一同は、別れの悲しみも忘れて大笑いしていた。
地位も年齢も関係なく、みんなで笑い合える、、、偶然来た世界だったが、忘れられない旅路だったな。
俺達を見送る全員の中で、一人だけ大荷物で旅の準備をしている奴がいる、、、カシラビ?
「どうした、そんな旅支度なんてして」
すると、カシラビは、大まじめな顔でこう答えた
「ユウスケ、、、お前には俺が必要だろうと思ってな、、、一緒について行くぞ」
、、、、、はぁあああ?
ドラゴンを狙った対戦車ライフルが、豪快に火を噴く。
俺たちが最初に出会ったあの森に、戦死したオルを除く全員が集まっていた。
、、、今やこの周辺国首脳となったパーティのメンバーが、こうして一つの森に集まる事自体が、異様な事だろう。
フキアエズ大会戦と呼ばれたあの戦いから、既に3週間が経過していた。
エレーナは、正式にオルコ帝国を復活させ、皇帝の座に就いた。
エガ王子こと、エニオガーノ・フキアエズ王子は、国王崩御を正式に国民へ公表するとともに、自身はフキアエズの国王となった。
マキュウェルは、エガと正式に婚約し、両国の合意に基づき、婚礼の日取りを模索中だ、何しろ、フキアエズは前国王の喪に伏している最中だからな。
ゼンガは、生き残った家族を解放すると、オルと村長を丁重に埋葬した。
ノアンカは、B中隊長に復帰したが、今回の功績が評価され、一気に大佐へ昇進すると、ロームボルド連隊の連隊長へ着任した。
マキヤ中佐は、正式に憲兵隊本部を任され、ドットス軍に復帰、同じく大佐として昇進すると、憲兵隊司令に任命された。
そして、ベナルは、エレーナから帝国軍に来ないか、との誘いを丁重に断ると、ドットス軍に復帰、20代にして、中将から大将へ昇進、事実上軍のトップに上り詰めた。
どうやらマッシュ国王は、ベナルを次期国王としたい考えがあるようだった。
よかったな、リラル、王妃になるのも時間の問題だな。
一番の出世はウクルキだった。
それは、以前約束されていた、未だ見ぬ王国の初代国王としての地位を示されていた。
やはり最初は躊躇していたようだったが、これまで自分に付いてきてくれた部下達に、相応の地位を与えたい、という想いもあって、結局この新しい国家の立ち上げに同意した。
そこは、かつて俺達がオルコ帝国軍と死闘を繰り広げた、あのハイハープ峡谷を挟んだ一帯だった。
マッシュ国王と皇帝エレーナは、協議の結果、お互いの領土を割譲しあい、新国家を両国の同盟として設立する事で合意した。
また、ウクルキの武功を祝して、マキュウェルの居城だったロクソム城ごと、ウクルキに譲渡した。
ウクルキは、戦場で約束した通り、ブラックナイツに参加した将兵全員を、自国の騎士としての地位を与え、彼らは新国家運営の中心的役割を果たすことになった。
そして、彼らはそのまま「ブラックナイツ」と呼ばれ、今や伝説となってしまった。
特に、フキアエズ会戦で重傷を負ったドロエ大尉は、若年ながら新国家軍の大将として、軍司令官の地位を与えられたが、本格的な復帰は、怪我の回復を待たねばならない。
しかし、あのマグネラ解放の時に、敵軍から偶然守った女性と、実はその後も交際が進んでいたらしく、今は彼女の甲斐甲斐しい看護を受けながら、ゆっくりとした時間を過ごしている。
新たな国家、ウクルキの国は「ハイハープ公国」と命名され、ウクルキは国王ではなく、公王を名乗る選択をし、まもなく建国される予定だ。
メルガも、父親のルガ・ハイヤー氏とともに、この森を訪れている。
最高に幸福な表情を浮かべながら。
あの、処刑を待つ、絶望な日々を考えたら、なんという逆転人生だろうか。
ルガ・ハイヤー氏も、ハイハープ公国の宰相となって、若い二人の助力に意欲を示していた。
ズダーーーーンッーーーッ
再び森に、銃声がこだまする。
「どうだいユウスケ殿、貴君から技術提供を受けた我が国の銃は。だいぶ威力を増しただろう」
この森にはエフライム公王も訪れており、、、、、ドットス王国のマッシュ国王までお忍びで訪問していた。
、、、、マッシュ国王も、、、すべてが手に入ったと言わんばかりに満足顔だな。
エフライムに供与した銃の技術は、元々の工業国の利点を活かして、驚異的な速度で量産を可能にしていた。
こりゃ、自動小銃も時間の問題だな。
銃声に合わせて、巨大なドラゴンが空から落ちてきた。
それを嬉しそうに追いかけるゼンガ。
ゼンガもオルの件から立ち直り、少しは元気を取り戻しているようだった。
この世界に「銃」の概念が定着した。
もはや俺達のアドバンテージなど、無い世界となってしまった。
エフライム公国は、最後の戦いに参戦することで、3国に途方もない貸しを作ることに成功した。
これから作られる「銃」の販売先は、間違いなくこの3国を優先される。
この世界のパワーバランスは、こうして崩壊した。
騎兵が正面から剣や槍で戦う時代は終わり、これからは銃を持った歩兵が戦場の主役となってゆく。
俺達の現世がそうだったように。
しかし、すさまじいな、オルコ皇帝、ドットス国王、フキアエズ国王、エフライム公王、ハイハープ公王、、、、全員勢ぞろいなんてな。
そして、彼らは俺と玲子君の方を向いて、急に真面目な顔で沈黙した。
「、、、行くのだな、、、、ユウスケ」
マキュウェルが、沈黙を破って俺にそれだけ告げると、俺は一度だけ頷いた。
そして、マキュウェルは俺に近づくと、何も言わずに俺を抱きしめた。
「、、、世話になった、お前は私の、、、命の恩人だ、、、絶対に忘れないからな」
涙混じりのその言葉に、俺の涙腺までも緩んでしまった。
玲子君も、リラルやムスキ、エレーナやメルガと包容を交わし、別れを惜しんだ。
「私も居るんだから、忘れないでほしいな!」
妖精の姿のシズと、、、、管理人妖精、、、、と、もう一人、、、、、もう一人?
「あれ?、何?、、、、えー、、、何で妖精がもう一人?」
シズがそう言うと、3人目の妖精は不思議そうに二人を見ていた、、、
「、、、わー!、本物?」
おいおい、シズ妖精と管理人妖精に釣られて、本物の妖精が現れたのか?、、、ってか、いたんだ、本物の妖精って!
そのやりとりを見ていた一同は、別れの悲しみも忘れて大笑いしていた。
地位も年齢も関係なく、みんなで笑い合える、、、偶然来た世界だったが、忘れられない旅路だったな。
俺達を見送る全員の中で、一人だけ大荷物で旅の準備をしている奴がいる、、、カシラビ?
「どうした、そんな旅支度なんてして」
すると、カシラビは、大まじめな顔でこう答えた
「ユウスケ、、、お前には俺が必要だろうと思ってな、、、一緒について行くぞ」
、、、、、はぁあああ?
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