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そして時空転移

第279話 大爆発

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 それは、大爆発と呼べるものだった。
 俺は、キル・ザ・ドールの連中が、まさか核兵器を持ち込んではいないか、些か気になってはいたが、この世界において、通常の爆発物でも、十分な威力が発揮できる。
 街を一つ崩壊させなくとも、爆薬だけで衝撃的な破壊力に見えるだろう。

 その爆薬が、この王都ウガヤ・クラントで使用されたのだ。

 、、、しかし、その使用方法は無茶苦茶もいいところだった。

 ウガヤ・クラントの守備部隊が籠城していた城に、いよいよエレーナ軍とフキアエズ軍の先頭が進出したその瞬間、城の内部に仕掛けられていた爆発物が大爆発を起こしたのだ。

 当然、オルコ共和国軍には逃げ場はなく、籠城による長期戦も視野に入っていた頃であったため、この自爆騒動は衝撃をもって受け止められた。

 エレーナ軍の先頭部隊にも損害はでたものの、深刻だったのは籠城戦に移行していたオルコ共和国軍だった。
 当然、軍首脳部が一番奥にいて、崩落した城内には、多くの共和国軍将兵が生き埋めとなっていた。

 、、、、キル・ザ・ドールがこのような自爆を計る事は考えられない。
 
 今回の自爆騒動は、、、彼ら異世界人が、もはやオルコ共和国軍を不要となった事による、抹殺と考えた方が良いだろう。

 、、、つまり、自分たちの痕跡を消すためだけに、味方の部隊を消滅させようとしたのだ。

 恐らく、キル・ザ・ドールのメンバーは、既にこの世界から立ち去っている。
 異世界人である敵の軍師長エムディも、生き埋めなんかにはなっていない。

『シズ、、、、現世の第3次世界大戦は、元の時間軸に戻ったか?」

『そうですね、今回の自爆によって、だいぶ戻ったようです」

『だいぶ?」

『、、、、はい、現世の世界大戦は、GF達が経験した時代から、後の世界に戻りましたが、どうやら完全ではないようです」

 ん?、、、それでは、エラーノ・リターンは失敗したってことか?
 ここまで苦労して、これだけの犠牲を払って、、、、失敗だなんて。

「雄介様、私たちのエラーノ・リターンは、決して失敗なんてしていません、キル・ザ・ドールが、この世界を脱し、既に次の手を打って来ている、という事なんです」

 、、、、もう、次の手を、、、。
 だから、不要になった共和国軍を、抹殺しようとしたのか?。
 奴らは人の命に対して、何故こうも無頓着になれるんだ。
 
 俺は、奴らの考え方に、腹が立って仕方が無かった。
 
 しかし、結果として皇帝を殺害し、帝国を滅亡させ、国家を乗っ取ろうとした勢力は、エレーナが処刑せずとも、こうしてほぼ全滅してしまった。
 それだけに、崩落した城からの救助活動には、全軍を挙げて取りかかった。

 エレーナは、この謀反を起こした首謀者を、事故死で終わらせる気など無かったのだ。
 自らの手で処刑を言い渡し、これからの国家の有り様を示そうとしていた。

 、、、まったく、末恐ろしいお嬢ちゃんだよ、本当に。

📶『ユウスケ殿、ウクルキだ、、、、終わったのか?」

📶『、、、、ああ、敵の自爆による、あっけない幕引きだ。そっちもよく持ちこたえたな、みんな無事か?」

📶『、、、全員無事と言うわけには行くまい、こちらもかなりやられた。怪我の酷い兵士も多い、戦闘は終わったが、戦争が終わった訳ではないからな」

 ウクルキの言うことはもっともだ。
 案外、戦後処理の方が厄介だ。

 とりあえず、救助作業と平行して、この城の主が、凱旋する。
 国を挙げての祝賀になるだろう。

📶『ムスキ、聞こえるか?、今、どの辺だ?」

「嫌ですよ、もう、あなたの後ろです」

 うわっ、びっくりした。
 随分、丁度なタイミングだな。

「良かった、ムスキ、無事だったんだな!」

「ええ、フキアエズ軍の猛攻は凄かったですよ、エガ王子も無事です、、、。」

 ん?、どうした?、何か言いたげだな。

「、、、ええ、エガ王子は無事だったのですが、最後の戦いで、、、国王が戦死なされました」

 、、、、あの優しそうな国王がか?。
 なんだって国王陛下ご自身が戦死なんて。

「陛下は、ご自身でウガヤ・クラントの解放を目指しておられました、国民に対する、けじめとして、、、」

 、、、、
 フキアエズは、良い君主を失ったんだな。

「、、、、、エガ王子、、、」

 ムスキの後ろから、エガ王子がゆっくり歩いて来た。
 いつものように、笑みを浮かべてはいるが、国王の崩御と引き替えに得た勝利、失ったものも大きい。

「やあ、ユウスケ、元気そうで何よりだ、、、みんな無事か?」

「ああ、俺の連隊も健在だし、ドットス軍も、マキュウェル軍も、戦闘の大きさに比べて損害は少ないと思う。エフライム公王陛下には、感謝のしようがないくらいだ」

「ユウスケ、もう、いいだろう、、、私の生存を公表しても」

「、、、ああ、もちろんだ、、行ってやってくれよ、マキュウェルが死にそうな顔で、お前を偲んでいたんだ」

 それを聞いたエガは、虚勢を張っていた笑みが消え去り、目頭を熱くしながら最愛の人を想った。

「エガ王子、、、、王子?!」

 まったく、君たちは本当に縁が深いんだな、、、絶妙なタイミングだよ、、、、、

マキュウェル!

 マキュウェルは、信じられないという驚きの顔と、再会の嬉しさで、やはり涙でグシャグシャになっていた。

「王子!、生きておられたのですね、ああ、王子、王子、なんという神のご加護、よくぞご無事で、、、」

 マキュウェルが、どうしようもない感情をエガにぶつけると同時に、エガはマキュウェルに駆け寄り強く包容した。
 ムスキと玲子君は、その姿を遠目で見ながら、ずっと泣いていた。

 こうして国王と王妃となる二人は、人目もはばからずに長く包容を続けて再会を喜び合った。
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